連続ドラマ

2021年05月22日

第1話でロケットスタートを切った『半径5メートル』がどんどんつまらなくなっていくのでとてもげんなりしています。

第2話の「出張ホスト百人斬り」、第3話の「私はこれを捨てられません」がどんな内容だったかもうほとんど憶えていません。昨日見た第4話「なりすましにご用心」はさすがに憶えているので感じたことを率直に書きます。


物語のあらまし
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トランスジェンダーでいまは女として生きている二折の編集者・北村有起哉は7年前に「もう自分をごまかすことはできない」と妻にそれを告白し「女として生きていく」と宣言して離婚した。すでに生まれていた娘はその事実を知らず、母親も教えてくれない。お父さんはいまどこでどうしているのか。自分を嫌っているのか。会いたいなんて少しも思ってないのか。と悩んでいる。

北村有起哉はもちろん会いたいけれど女になった自分を見せるわけにいかず、娘のSNSをフォローして半年、相談相手になっている。そんなことを露とも知らない娘が会いたいと言ってきたので、北村有起哉は主人公の芳根京子に自分になりすまして会ってきてほしいと頼む。

見ず知らずの人間になりすましている自分にさらになりすまして会わせる、というのが今回の肝なんでしょうが、何か変です。

何だかんだの末に北村有起哉は娘と再会する。男として。しかし結局、いまは女として生きているとカミングアウトする。娘をそれを受け容れる。って、おいおい、あまりに話がうまく行きすぎてやしませんかね? あんなに聞き分けのいい人間は世の中にいません。大きな問題から逃げていると感じました。

いや、本題はそこではない。


永作博美のラディカルな問いかけ
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そもそも今回の物語は、「子どもたちをSNSから救え」というテーマで記事を書く、というものですよね。いい人になりすまして犯罪に巻き込む悪い大人から子どもたちを守らねば、という思いから生まれた企画。芳根京子はネットで作られた関係なんて嘘だと主張。それに対し、ベテランライター永作博美は、

「ネット上の友だちってほんとに本当の友だちじゃないの?」

と、またラディカルな問いかけをします。芳根京子は答えられない。

第1話「おでんおじさん」でも、「どこから作ればおでんを自分で作ったことになるんだろう。コンニャクイモを3年かけて作るところから?」とラディカルな問いかけをしていました。それが礎となって芳根京子はジェンダーの歴史について根源的に考える記事を書くことができた。

でも今回は永作博美の根源的な問いかけが空回りしてしまっています。リアルな友だちとバーチャルな友だちはどこがどう違うのか、という問いを誰も真剣に考えていません。

話の途中で永作博美が「#いえで」「#とめてほしい」というハッシュタグだけを投稿するとすぐに返信が殺到する。若い子を手籠めにしようとする悪い男が何人も手ぐすね引いて待っているわけです。

と思ったら、これも女子高生になりすました永作博美に代わって芳根京子がなりすましのなりすましとして女子高生の恰好をして行くと、現れた男は行き場のない子どもを守ってやろうと善意で返信してきた人だった。そういう活動をしているらしい。

しかし、それならその男の言い分をオンで描くべきじゃないですかね? 最後に申し訳程度に永作博美と芳根京子が聞いた話として語るというのは違うと思う。だって、あれでは視聴者からしたら「又聞き」にしかなっていないから。

北村有起哉の娘にとっての救世主マツボックリさんは北村有起哉その人だし、永作博美が実験的に悪い男を誘い出そうとなりすましたところ、現れたのは本当に子どもを心配する善人だった。

というわけで、主人公・芳根京子は「ネット上の知り合いであっても『本当の関係』はありうる」という結論に至るんですが、これでは少しも「リアルな友だちとバーチャルな友だちは違うのか」というラディカルな問いの答えになっていません。


北村有起哉は娘に会わないほうがよかった
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私は、北村有起哉は娘に会うべきではなかったと思います。もちろん、マツボックリさんが北村有起哉であることは視聴者は知っていますが、娘は最後まで知らないほうがよかったのでは? 最後までどこのだれかわからない人のアドバイスに従って問題を解決しハッピーになる。一方、芳根京子は女子高生になりすまして悪い男に手籠めにされそうになる。

こうすれば、バーチャルな友だちがリアルな友だち以上の存在になりうる場合もあるし、バーチャルな関係はやっぱり危険だということも多々ある、ということになって「ネット上の知り合いであっても『本当の関係』はありうる」という安直な結論にはならなかったと思います。

芳根京子が悪い男に犯されそうになったところを毎熊克哉が助けたりすれば二人の関係が劇的に変化しただろうし、今回あの二人に何の進展も変化もなかったのはどうなんでしょう。

来週は「黒いサンタクロース」と題して、二週続けて永作博美の過去が明かされるようですが、楽しみなような不安なような。見るけど。


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2021年05月05日

4月も終わり、もう5月。春の新ドラマ・アニメも少なくとも第1話を終えました。

私が見始めたのは何と9本もありました。抑えるつもりだったのに結構見てる。いまでも見続けているのは3本だけですが。

見た順に感想をつらつらと。


『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』
これは3年前に話題になったエッセイというか、私小説的ビルドゥングス・ロマンといったほうがいいのか、ともかく花田菜々子という人の実体験をもとに綴られたタイトル通りの物語。

本は面白かったけど映像化作品はつまらなかった。全部見てないけど、あの瀧本美織がカメラ目線で思っていることを言うのが決定的につまらないというか、ああいうのはやはり禁じ手だと思う。よほどのことがないかぎりモノローグやナレーションは映像作品には似つかわしくない。もっとハードボイルドに徹してほしい。


『川のほとりで』
これもWOWOW製作作品。綾田俊樹とベンガルという東京乾電池の二人がコンビを組んでホームレスを演じる。というから面白そうだと見たんですけど、1話でギブアップ。何の創意工夫もなく。


『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』
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今クールで唯一見ているアニメ。愛すべき先輩・村越繁さんがシリーズ構成を務めている『ゾンビランドサガ・リベンジ』も見なきゃいけないかなとは思ったけれど、あれはやはり私の肌には合わないのでやめた。

この『ひげを剃る。~』は何といっても拾った女子高生・沙優を自宅に泊めてやる主人公・吉田が沙優に一切手を出さないのが新しい。こんな男いるか? とは思うが、そもそも沙優の存在が男にとってファンタジーなんだし、吉田のような女性にとってのファンタジーも出したほうが男も女も楽しめる。

北海道から東京まで男に体を提供して泊まり歩き「男はみんなそういうもの」というネガティブ思考に憑りつかれた沙優を、つまりは暗黒面に堕ち逆境に陥っている沙優をヒーロー吉田は本当に救えるのか。私の大好きな神話的世界観がどのような形で幕を閉じるのか、興味津々。


『きれいのくに』
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これは毎回驚きの連続ですね。第1話の主役だった吉田羊が蓮佛美沙子に変わり、え? と思ったら次はもっと若い女優に変わり、何だ何だと思ったら彼らはフィクション世界の登場人物。でも演じていた吉田羊は実在するらしい。

そして誰に何をインタビューしていたのかよくわからなかった稲垣吾郎は学校の教師で、というか、この作品の世界では男はみな稲垣吾郎の顔で女はみな加藤ローサの顔に整形するのが普通。整形しない人を特別に「プレーン」と呼ぶらしい。面白い着想。

どうも、稲垣吾郎が担任を務める高校のクラスの三角関係がメインらしく、彼ら高校生が主役みたいだけど、はたして本当にそうか。

脚本の加藤拓也さんは名前すら知らなかったけど、「全8話すべて見終わったとき初めて理解できるものをやろうと思った」と語っていて、とても野心的な試み。どのように着地するのか楽しみでしょうがない。


『生きるとか死ぬとか父親とか』
吉田羊と國村準のアンサンブルは素晴らしいと思って見始めたけど、お話があまりにつまらなくないですか? 田中みな実もラジオ収録現場にしか登場しないし。田中みな実主演のドラマが見たい。


『大豆田とわ子と三人の元夫』
これは『出会い系サイトで実際に70人と会って~』と同じくナレーション過多で1話の半分ももたなかった。坂元裕二さんは一応恩師だから見続けたかったけど、あのナレーションのオンパレードには体が拒否反応を示してしまって。

この連休中に、お気に入りのアメリカ映画『フリークス/怪物團』『ローリング・サンダー』『ゼイリブ』『氷の微笑』などを見直したのだけれど、やはりどれもハードボイルドに徹したいい映画だと思った。映画とテレビドラマは違う。テレビドラマは「映像付きのラジオドラマ」とはよく言われるけど、それでもやっぱり私はハードボイルドに徹したドラマを見たい。『きれいのくに』はとてもややこしい世界を描いているけど、ナレーションなんかないでしょ。説明的なセリフはあるけど、それは致し方ない。


『今ここにある危機とぼくの好感度について』
大学の不祥事を発端にしたトラブルのあれやこれやをコミカルに描くという意気込みは大いに買いたいところですが、松坂桃李の芝居が違うのではないか。あの芝居では彼は最初から問題を適当に処理しようとしていたように見える。そうじゃなくて、どこまでも大真面目なほうが笑えるのでは? コメディの鉄則。そこそこ真面目だけど時折垣間見えるふざけた笑みがすべてをぶち壊している。松坂桃李が悪いのではなく、脚本家が書いた芝居、監督が現場でつけた芝居が間違っていると思う。

鈴木杏の芝居はとてもいい(ライティングとアングルもいい)。まだ10歳だった『青い鳥』から24年。隔世の感があり、私の知るかぎりこれが彼女の最高作とは思うものの、いま忙しいので見るのやめました。渡辺いっけいの絶妙な芝居を見るだけでも、と後ろ髪引かれる思いがするけど思い切って。


『ドラゴン桜』
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これは今クールで最も罪の重い作品。私にとって。

第1話は痛快な勧善懲悪で大いに溜飲が下がった。週末の最後にこのようなストレス解消ドラマは大変よろしいと思っていたら、第2話が許せなかった。

平手友梨奈が膝の半月板損傷を隠して練習していたなんてありえない。私もかつてバドミントンをやっていたし、両膝の半月板を損傷している。半月板損傷というのはあのように時折痛みが走る怪我ではない。恒常的に痛いのだ。そこは百歩譲るとしても、損傷したままバドミントンのような激しいスポーツができるわけない。ジャンピング・スマッシュなどもってのほか。バドミントンを舐めている。世界で一番ハードなスポーツは何か。二説あって、1位がバドミントンで2位がバスケ。もうひとつは1位がバスケで2位がバドミントン。つまりはその二つがダントツでハードだということ。

面白いか面白くないかと言われたら面白い。でももう見ない。これは創作における「倫理」の問題である。


『半径5メートル』
hankei5me-toru1 (1)

まだ1話しか終わってないのでこれからどうなるか楽しみと不安が入り混じるけれど、これが目下今クールの最高傑作。

詳しいことは数日前に書いた感想を読んでください。⇒『半径5メートル』感想①アメリカ映画とヨーロッパ精神の融合


というわけで、9本見始めていまも見ているのは『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』『きれいのくに』『半径5メートル』の3本のみ。3分の1という率は悪すぎないか。見始めた本数が多いのか。

未見だけどやたら評判のいい『コントが始まる』がhuluで無料視聴できると知る。見よう。










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