エロマンガ家の山本直樹さんが去年刊行した『エロってなんだろう?』を読みました。しかし、あの山本直樹がちくまプリマ―新書を書いていたとはねぇ。意外。


m28595401567_1

私はプロにはなれなかったけど、下ネタ満載のシナリオコンクールで受賞したし、もともと山本さんのマンガの大ファン(最近読めてないけど)なので興味津々で通読しました。

で、うまく言えませんが、喉元に刺さった小骨がいつまでも気になるような内容でした。

山本さんの言うように、「権力が家族の中に入ってきて子どもにとってこれは有害、こっちは無害とやる」のは乱暴だと思います。

それに、山本さん自身が、若い頃は「レイプされまくりすぎて感じてしまう女」を描いてしまったことを悔いていて、いまは絶対そんな描写はしないと誓っていることにも我が意を得たりという気持ちです。

かつて、エログロ路線の映画ばかり撮っていた石井輝男監督が、師匠の成瀬巳喜男監督が亡くなったとき、ちゃんと通夜にも葬式にも行って死を悼むのだといったら、誰かが「それじゃあ、まるでまともじゃないですか」と詰問した。石井監督はサングラスの奥の瞳をギラッとさせて、「まともじゃなきゃあ変態は描けませんよ」と答えたとか。あれですね。

しかし、逆にそこなんですね。私がこの本に不満をもつのは。

山本直樹さんは「自分はまともである」と言い募れば言い募るほど、前半の言葉が返ってくるんですよ。

「みんながもっと自分は間違っているのではないかと疑ってくれれば」

確かにその通りなのだけど、山本さんが「自分は性に対して偏見なんかもってないまともな人間です」みたいなことを言うほど、「それを疑ってるんでしょうか?」と訊きたい誘惑にかられるんですよね。

そりゃそれはそのまま私自身にも返ってくるわけですが。

正しいことが書かれた本書は多くの人に読まれてほしいけれど、正しいがゆえに危険も孕んでいるところが要注意じゃないかと感じました。




このエントリーをはてなブックマークに追加