『Mercy/マーシー AI裁判』(2026、アメリカ)
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今年公開された映画が早くも配信で見れるんですね。というわけで見てみました。AI(人工知能)が裁判長を務める『Mercy/マーシー AI裁判』。

見ながら楽しい反面、疑問も多くもちました。


物語のあらまし
目が覚めたらAIが裁判長を務める「マーシー裁判所」の被告人席に座らされていた主人公。容疑は妻殺しで、AIが支配する世界中のデータベースから証拠をかき集めて、90分以内に無罪を勝ち取らねばならなくなる。ちなみにマーシー裁判所では、「有罪確率92%」を下回ると無罪とか。かなりグレーの領域が広いんですね。

で、主人公は妻なんか殺してない! と連呼しても当然AIのレベッカ・ファーガソンは聞き入れてくれず、「時間が減るだけですよ」と冷たい。

でも、主人公が「どこそこの監視カメラの映像がほしい」とか「誰それはいまどこにいる?」というと、そこはさすがAI。すぐにほしい情報を提示してくれる。

何だかんだの末に真犯人が逮捕され、主人公の有罪確率が0%になって物語は幕を閉じる。


未来の法律
私はかつて、『射殺法時代』というタイトルのシナリオを書いたことがあります。

射殺法=被疑者はみな射殺してよい(警察官にかぎる)
射殺新法=不審者はみな射殺してよい(同上)

この二つの法律が軸になった近未来社会を描いたんですが、どういう経緯でこのようなありえない法律が作られたか、その道筋を全部考えました。

しかし、この『Mercy/マーシー AI裁判』には、そのような新しい法律がどういう過程を経て作られたのかとかそういうのがまったく感じられませんよね。

例えば弁護士。検察官もマーシー裁判にはいないんですが、驚くべきことに弁護士がいない。しかも検察官が有罪を立証するのではなく、被告人が無罪を立証しないといけなくなっている。

このような法律ができあがるにはかなりの紆余曲折があったはずなんですが、『Mercy/マーシー AI裁判』にはそのような跡が見られません。

有罪確率92%を下回れば無罪という、その「92」という数字の根拠は何なのか。

映画で描かれる裁判がたまたま無罪を勝ち得ただけで、他の裁判なんて有罪=死刑ばかりなんじゃないでしょうか。

そりゃま、そういうディストピアを描いてるんだといわれたらそれまでですけど。


レベッカ・ファーガソン
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私はどうせなら、『2001年宇宙の旅』のHAL2000みたいにAIを表象したらよかったのに、と思いました。そのほうが不気味でしょ?

でも、この映画の製作者たちはレベッカ・ファーガソンにAIを演じさせることにした。美人女優を使ったほうが客が入るという考え? うーん、どうなんだろ。

たまに微笑むような場面もありました。あれは一応「そういうふうにプログラムされているから」という言い訳があるんでしょうが、やはり徹頭徹尾無表情で通してほしかったな、と思います。

やっぱりHAL2000は不気味なりけり。


AI裁判
小川 進
緑風出版
2020-10-23





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