ゴジの愛称で親しまれた長谷川和彦監督が亡くなった。

多くの人が悼んでいるけど、誰も言ってないだろうことを言います。


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私はかつて脚本家を志望していて、ゴジさん公認のサイト「ゴジサイト」(いま見たらあの掲示板がなくなっていた)で「ゴジさんに映画化してほしいプロット・シナリオ募集」にせっせと書いては応募していました。

ゴジさんは厳しいけど同時にやさしくて、「書く力と情報に対する感受性はすでに充分もっているのだから、あとは書く意識を少しシフトさせるだけで違う領域に入っていける人だと感じました」だなんて言われてどれだけうれしかったことか。

「君のシナリオには人間の可笑しさと哀しさがない」とも言われました。それでそのときまではあまり書いたことのなかったコメディに挑戦したところ、「神林氏がだめな奴をコミカルに描こう、新機軸を打ち出そうという気持ちが十二分に伝わってくる」とねぎらってくれたり。

それまではゴジサイト上でのやり取りだったけど、それ以後は「電話セッション」となり、何とあの長谷川和彦と電話とは言いながらも直接話ができるというので、また喜んで出しました。

「でも何でこの話に刑事が出てくるの? 法律がどうとかいう話じゃないじゃん」その通りです。
「君の言ってることは理屈だよ。映画に理屈はいらない」その通りです。
「君は主人公を裁いてるんだよ。『悪魔のいけにえ』を思い出したまえ。トビー・フーパーはレザーフェイスを裁いたりしていないだろ」その通りです。
「俺は最初の頃の君のシナリオより最近のほうが好きだよ」うれしい!

電話セッションの内容を私の文責でまとめ、ゴジサイトにアップするというもので、書いて送ったら、「よく書けてるよ。どうもありがとう!」うれしい!

あの人が「人たらし」だと言われていたのもわかるなぁ、という感じでした。

でも、あのときすでにゴジさんは56歳。「今日も『連合赤軍』の脚本をやってる」とゴジサイトの掲示板に書いていました。

それを同じく『太陽を盗んだ男』の大ファンである友人に伝えたら、「あぁ、やっぱもう新作は無理なのかな」と言ってました。だって、ずっとリライトばかりしてるもんだから。

『連合赤軍』はその当時、3時間の2部作でやると宣言していて、そんな大作になるのか! と期待もしましたが、やっぱり不安もあったんですよね。あの時点でもう23年も映画を撮ってなかったので。

完成したら絶対見る! という気持ちと、もう無理なんじゃないかという気持ちがないまぜになっていました。で、結局、後者が正解となってしまった。

『太陽を盗んだ男』がめちゃくちゃ面白かったと伝えたら子どもみたいに喜んでましたけど、やっぱり最初の2作で大成功を収めたために「下手なものは作れない」と守りに入っちゃったんじゃないでしょうか。

守りといえば聞こえがいいけど、黒沢清監督の言葉を借りれば「ゴジさん、逃げてるんじゃないの?」(『太陽を盗んだ男』DVD特典映像より)

そうです。逃げてたんだと思う。

ツイッターでは、「2作しか見れなかったというなかれ。その2作があまりにいいのだから感謝しかない」みたいな呟きがあふれていますが、私は断然「もっと作ってほしかった」派です。

ゴジさんは3作目でコケることを恐れて逃げていたんだと思う。

私は感謝なんかしない。もっと作ってほしかったと呪い続けますよ。

だって、私のシナリオはともかくとして、ゴジさんが絶賛したシナリオやプロットは何作かあったじゃないですか。

もっと撮ってほしかった。それが偽らざる正直な気持ちです。


長谷川和彦 革命的映画術
A PEOPLE株式会社
ライスプレス
2022-07-19





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