『東京ラブストーリー』や『花束みたいな恋をした』『大豆田とわ子の三人の元夫』などの坂本裕二さんから直接聞いた話をします。ある学校で私は坂本さんの薫陶を受けました。

その日のお題は「キャラクター設定」でした。

全員に課題が課されていて、「企画中の映画の主要キャラクターの設定表を書いてくること」というものでした。

「性格はやさしい」とか、「部下と不倫中」とか、「三度の飯よりゲームが好き」とか、いろんな設定表を読み上げていく坂本さん。


sakamotoyuuji

その目が鈍く光りました。

「ここに書かれているのは『性格は神経質』です。人物設定はどのようにやってもいいです。その人物が活き活きして物語が面白くなるのであれば好きにやっていいです。でも、性格が神経質。これだけはいけません」

「なぜか。人間はみな神経質だからです。床に落ちたものを食べられない神経質もあれば、床に落ちたものは食べられるけど、友人や同僚の些細な言葉が気になってしょうがないという神経質というのもあります」

「人間はみな神経質なんですが、どの方向にどれだけ神経質かは人それぞれです。キャラクター設定は、だから、どの方向にどれぐらい神経質化を考える営みなんです。だから性格・神経質はだめとなります」

なるほど! 喝采が起こりそうなくらい、生徒全員がのめりこんでいました。

さすがヤングシナリオ大賞を受け、いまだに第一線で活躍される方は考えることが違うんだな、と唸った真夏の昼下がりでした。


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