後半戦です。見た順に感想を書きます。


『明日はもっと、いい日になる』
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たとえ親が子を虐待しているとしても、被害者の子が加害者の親を愛している場合がある――

一筋縄ではいかない児童相談所を舞台に、人間をシロとクロに二分していた刑事・福原遥が出向してくる。正義感をうまく扱えない福原は着任早々いろいろと騒動を起こし、そのたびに同僚職員から叱責される。一番響いたのは生田絵梨花の「児相が向き合うのは事件でなく家族なの」というセリフ。林遣都の「我々の仕事は親の罪を暴くことじゃない」も、ほとんど同じ意味だけどよかった。

まったく知らない世界を描いてくれるこのドラマは、「情報」としての面白さに満ち満ちていて好きですね。

ただ、ひとつだけ難点を挙げれば、『明日はもっと、いい日になる』というタイトルはいただけません。なぜなら、すべての映画やテレビドラマなどフィクション作品は「明日はもっといい日になる」ことを目指しているからです。

『悪魔のいけにえ』だってそうだと思う。あれはレザーフェイスにとっての「明日はもっといい日になる」というラストシーンだったと解釈することは充分可能。殺されそうになって一人だけ生き残った女の子にとってもね。

前半戦で取り上げた『浅草ラスボスおばあちゃん』のタイトルが「明日はもっと、いい日になる』でもいいし、『こんばんは、朝山家です。』が『明日はもっと、いい日になる』でもいい。

タイトルは作品の顔。もっともっと考えてほしいものです。


『レプリカ 元妻の復讐』
トリンドル玲奈(特殊メイクで別人みたいなブス)が結構美人な元クラスメイトに復讐するために、最高級の美容整形手術を受けて復讐を画策する物語。

トリンドル玲奈がいかに悲惨な学生生活を送っていたかを描写するために、他のクラスメイトが最低最悪な人間として描かれていて、これは私がここでよく言う「善と善の対立」になっておらず、「善と悪の対立」になってしまっています。これはとても安易なのです。その罠によくはまっていた私が言うのだから確か。

最高級整形手術を受けたのならトリンドル玲奈よりもっと美人になれるはず、と言ってしまってはルッキズムか。1話でリタイア。


『誘拐の日』
斎藤工と内田有紀共演ということで見てみました。

これが何ともはや……。

前クール、北川景子主演の『あなたを奪ったその日から』について、「今回の北川景子とはいい出会い方ができなかった」と書きましたが、それと同じことが起きました。

今回の斎藤工とはいい出会い方ができなかった。残念ですが。


『ちはやふる ‐めぐり‐』
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広瀬すずの映画三部作は未見だけど、當真あみが出てるので見てみました。大嫌いな上白石萌音が出てるけど、まぁそれはそれとして。(なんとこっちにも内田有紀が出てる)

高校生のうちから投資で資産を増やすことにしか頭になく、若い貴重な日々を犠牲にしている主人公が、幽霊部員だった競技かるた部で青春を謳歌することになる物語。

適宜、回想シーンとして挿入される映画版のシーンを見ていると、広瀬すずと當真あみの格の違いが歴然としていて困ってしまった。

広瀬すずはトム・クルーズなどと同じく、過剰なまでに「スター」なのであって、當真あみはまだそこまでの域に達してない。ただかわいらしい女の子というだけ。

「面構え」と「目ヂカラ」が段違いだと思うのだが、それはもう生来のもの。10代ですでにスターだった広瀬と當真では、やはり格が違いすぎる。

映画版を見てないので比較のしようがないからいいだろうと思ってたけど、まさか回想シーンで広瀬すずがあんなに出てくるとは思ってなかったので(上白石萌音が映画版の出演者だったことも知らなかったし)これは残念な意外性。見てるだけでつらくなってくるので、ここでリタイアします。

と思ったんですが、當真あみに免じて2話を見てみました。見て公開しました。広瀬すずはほとんど出てこないので主役のスター性を比較することはせずにすみましたが、何だかこう、主役の當真あみが1話の前半とまったく違ってる人になっちゃってませんかね? 部活なんてタイパが悪い、バイトして投資して将来に備えるのだ、と言っていた當真ちゃんが、もう正式に入部するのは目の前というか、いったい何をきっかけに変わったのかよくわからないのも難点。

嵐莉菜のほうが美少女ぶりを発揮していて、これはもしかして主役交代もあったりして。まさかね。


『愛の、がっこう』
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木村文乃が出てるので見てみました。井上由美子さんの新作でもあるしね。

真面目一徹にしか生きられない木村文乃は生きづらさにまみれ、ある日男に振られたのをきっかけにストーカーと化してしまい、会社から自主退職を強要された。そして自殺未遂と一年間の引きこもり生活を経て、現在女子高の国語教師をしている。そこでも同僚や生徒からバカにされ、生きづらさはますます募る日々。

そんなときに自分が担任の生徒が親の金100万あまりを使ってホストに貢いでいたことが発覚し、当のホスト(ラウール)に会いにいくが、もちろん相手にされない。生徒の親は「二度と娘と会わない」と念書を書いてほしいというので、書いてもらうまで帰らないとばかり、木村文乃は持ち前の押しの強さでラウールに念書を書かせることに成功する。

ラウールは義務教育もろくに受けておらず、「これからの時代、ホストにも学歴が必要になる」が持論の店のナンバーワンと口論になったりしていたが、木村文乃から一字一字レクチャーを受け、最後の自分の本名(鷹森大雅)を生まれて初めて書いたとき、学ぶことの悦びに身をよじる。木村文乃も教えることの悦びに身をよじる。名シーンでしたね。

が、当然このまま終わるはずがない。木村文乃は教える悦びを再認識させてくれたラウールを信じますと言い切るが、ラウールは彼女のことを金蔓としか思っていない。さて、この二人が今後どうなるか。

これはあまりに面白いので、現時点で完走確定でしょう。視聴率はあまりに悪いみたいですけど。ティーバーの登録数とかはどうなんだろう?

それにつけても木村文乃の芝居のうまさよ。田中みな実とラウールに挟まれた場面の小芝居などは天才だと思った。


『19番目のカルテ』
『べらぼう』で一皮も二皮もむけた小芝風花が出てるので見てみました。

検査結果には何も異常はないのに痛みや苦しみを訴えてくる患者。現在の専門分野が細分化された医療現場ではないがしろにされてしまう患者に寄り添う、というコンセプトはいいと思うのだけど、赤ひげ先生のような「何でも治せる医者」を主役の松本潤が目指すんですが、津田寛治が言うように、「それでは病院の経営がままならない」。

いま必要なのは、何でも治せる医者、つまり医は仁術という名医を描くドラマ=理想論ではなく、医は算術、病院経営と患者の救出をどう両立させるかという、この国の宿痾になってしまった医療現場崩壊目前でどれだけ踏ん張れるかという現実論ではないでしょうか。それぐらい医療現場は逼迫していると先日の「クローズアップ現代」でもやってましたし。

誰にも見つけれられなかった病名を見つける名医という設定はもう古いと思います。去年のクドカン作『新宿野戦病院』みたいなのが求められる時代かと。


『僕達はまだこの星の校則を知らない』
磯村勇人と堀田真由共演ということで見てみました。

男子校と女子校が合併して共学の高校になった学校を舞台に、学校の法的な問題を解決する「スクール・ロイヤー」という役職の磯村勇人を軸にして、ジェンダー平等などの問題に立ち向かう? いや、眠そうな目で対処すると言ったほうが適切か。

国語教師で宮沢賢治が大好きな堀田真由と、賢治という名の磯村勇人の間には何か起こりそうな気配が濃厚ですが、肝心の制服などの学校が抱える問題が浅いというか、スカートを履いて全校生徒の前であいさつした生徒会長の不登校の本当の理由とか、本当につまらなかった。ここでリタイアです。


『しあわせな結婚』
阿部サダヲが好きなので見てみました。

50歳まで独身主義を貫いてきた弁護士の阿部サダヲが、ひょんなことから知り合った同世代の女性(松たか子)と出会い、速攻で結婚する。それぐらい松たか子の特異なキャラクターに惹かれたんだろうなと思ってたんですが、1話の最終盤で明らかになったのは、15年前に一人の男性が亡くなった事件で、警察は松たか子を被疑者として捜査中という事実。

キャラクターの面白さとかそういうので話を転がすのかと思ったら、「事件」で転がすんですね。そういうのじゃないと匂わせていただけに本当に残念です。

刑事ものみたいに最初から「事件で転がしますよ~」というのなら見る気もしますが、キャラクターの面白さで見せますよ~と謳ってたのに実は違ったというのは、何かちょっと騙された気分。

というわけで、いま生き残っているのは、

『ダンダダン』
『浅草ラスボスおばあちゃん』
『愛の、がっこう。」

の3本のみ。これに年初から見ている『べらぼう』と合わせて4本。この4本だけでも完走できますように。

2025夏の新ドラマ・アニメあれやこれや前半戦(浅草ラスボスおばあちゃん、こんばんは朝山家ですのことなど)



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