『ゾディアック』を再見しました。が、やはり10数年前に劇場で見たときと感想は変わりませんでした。(以下ネタバレあり)
『ゾディアック』(2006、アメリカ)

原作:ロバート・グレイスミス
脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト
監督:デビッド・フィンチャー
撮影;ハリス・サヴィデス
出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・ジュニア、クロエ・セヴィニー、ダーモット・マローニー
結局わからなかった

ゾディアック事件といえばすごく有名で、アメリカで60年代に起こった連続殺人鬼のニックネームが「ゾディアック」といいます(犯人が自分でつけた名前)。
クリントイーストウッドがアメリカで映画スターとして認知されるきっかけとなった『ダーティハリー』はゾディアック事件をモデルにしています。あの映画では犯人は自分のことを「さそり座の男」と言ってましたっけ。
で、映画の中でも最後にテロップが出ますが、いまだに捜査中ではありますが、真犯人と思われる人物がすでに死亡しており、事実上の迷宮入りと言っていい、と。
そういう事件を映画にするときに、脚本家がまず考えなければいけないのは、「時間をどう組織するか」ということだと思うんですね。
この映画の物語を粗く抽出すると、
事件発生⇒捜査する⇒結局わからなかった
となります。が、結局わからなかった、つまり、迷宮入りの事件であることは、映画館に詰めかけた観客はみんな知ってることですよね。
それを「結局わからなかった」を結論にしていいの? と思うわけです。「こんなことがありました」という内容にしかなっていない。「再現ドラマ」の域を一歩も出ていないのです。
妙案が浮かばないのがアレですけど、「結局わからなかった」から始めて、「事件発生」まで巻き戻っていく時間構成にするのもひとつの手じゃなかったでしょうか。
『ゾディアック』と似た映画にポン・ジュノ監督『殺人の追憶』があります。
『殺人の追憶』

ソン・ガンホの終幕の顔が印象的なこの映画でも、事態は一緒です。未解決事件を扱っているのですが、物語の骨子は、
事件発生⇒捜査する⇒結局わからなかった
『ゾディアック』とまったく同じです。確かに、「過去にこういう事件があった」という勉強にはなるでしょう。でも、それではやはり「再現ドラマ」の域を出ない。事件に詳しい人が見たら「全部知ってることだった」となってしまう。作者たちが未解決事件から引き出した「哲学」が語られないから、ただ「情報」としての面白さしかありません。
時間を操作して現実の時間の流れを、どうフィクショナルに組織するかがポイントだと思われます。
では、なぜ私は面白いと思えなかった『ゾディアック』を見直したのか。それはやはりこの男の存在です。
ロバート・ダウニー・ジュニア

去年『オッペンハイマー』でアカデミー助演男優賞を受賞しましたが、私は『ゾディアック』でこそ受賞すべきだと思ってました。そして『シャーロック・ホームズ』シリーズか『アイアンマン3』で主演男優賞ね。でも、それはないものねだりですかね。
撮影がハリス・サヴィデスで、アングル、サイズ、ライティングが素晴らしい。編集も含めて、映像演出に関しては100点満点じゃないでしょうか。役者のアンサンブルも文句のつけようがないし、すごくもったいない映画だと思いました。
『ゾディアック』(2006、アメリカ)

原作:ロバート・グレイスミス
脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト
監督:デビッド・フィンチャー
撮影;ハリス・サヴィデス
出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・ジュニア、クロエ・セヴィニー、ダーモット・マローニー
結局わからなかった

ゾディアック事件といえばすごく有名で、アメリカで60年代に起こった連続殺人鬼のニックネームが「ゾディアック」といいます(犯人が自分でつけた名前)。
クリントイーストウッドがアメリカで映画スターとして認知されるきっかけとなった『ダーティハリー』はゾディアック事件をモデルにしています。あの映画では犯人は自分のことを「さそり座の男」と言ってましたっけ。
で、映画の中でも最後にテロップが出ますが、いまだに捜査中ではありますが、真犯人と思われる人物がすでに死亡しており、事実上の迷宮入りと言っていい、と。
そういう事件を映画にするときに、脚本家がまず考えなければいけないのは、「時間をどう組織するか」ということだと思うんですね。
この映画の物語を粗く抽出すると、
事件発生⇒捜査する⇒結局わからなかった
となります。が、結局わからなかった、つまり、迷宮入りの事件であることは、映画館に詰めかけた観客はみんな知ってることですよね。
それを「結局わからなかった」を結論にしていいの? と思うわけです。「こんなことがありました」という内容にしかなっていない。「再現ドラマ」の域を一歩も出ていないのです。
妙案が浮かばないのがアレですけど、「結局わからなかった」から始めて、「事件発生」まで巻き戻っていく時間構成にするのもひとつの手じゃなかったでしょうか。
『ゾディアック』と似た映画にポン・ジュノ監督『殺人の追憶』があります。
『殺人の追憶』

ソン・ガンホの終幕の顔が印象的なこの映画でも、事態は一緒です。未解決事件を扱っているのですが、物語の骨子は、
事件発生⇒捜査する⇒結局わからなかった
『ゾディアック』とまったく同じです。確かに、「過去にこういう事件があった」という勉強にはなるでしょう。でも、それではやはり「再現ドラマ」の域を出ない。事件に詳しい人が見たら「全部知ってることだった」となってしまう。作者たちが未解決事件から引き出した「哲学」が語られないから、ただ「情報」としての面白さしかありません。
時間を操作して現実の時間の流れを、どうフィクショナルに組織するかがポイントだと思われます。
では、なぜ私は面白いと思えなかった『ゾディアック』を見直したのか。それはやはりこの男の存在です。
ロバート・ダウニー・ジュニア

去年『オッペンハイマー』でアカデミー助演男優賞を受賞しましたが、私は『ゾディアック』でこそ受賞すべきだと思ってました。そして『シャーロック・ホームズ』シリーズか『アイアンマン3』で主演男優賞ね。でも、それはないものねだりですかね。
撮影がハリス・サヴィデスで、アングル、サイズ、ライティングが素晴らしい。編集も含めて、映像演出に関しては100点満点じゃないでしょうか。役者のアンサンブルも文句のつけようがないし、すごくもったいない映画だと思いました。

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