またぞろスティーブン・キングが何か言ってますね。


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ロサンゼルスで山火事が起こり、甚大な被害が出ているからアカデミー賞授賞式は中止せよ、と。

うーん、、、前も何だったか忘れたけど映画界に難癖つけてましたよね。どうもこの男の言うことは的外れだと思ったのは私だけではありますまい。

別に、ハリウッドのスタイリストやメイキャップアーティストが仕事を失うから、という記事を読んだからこんなことを言うのではありません。彼らの収入が減る、つまり、経済が回らなくなるというのはもちろん大きなことでしょうが、それは主たる理由ではありません。

私はこういうときこそ娯楽の出番だと思う。東日本大震災のとき、「僕たちには人を笑わせることしかできないので」といった若手芸人たちに対し、ビートたけしが「衣食住足りて初めて娯楽を求めるんだよ。家もないのにどうやって笑えばいいんだ。戯言だ」と言い放ったのは正論でしょうが、一方で、あの沈みゆくタイタニック号で最期まで音楽を演奏し続けた楽隊がいたことも忘れてはいけません。

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って、偉そうなことを言ってますが、いま調べてみると、あの楽隊が演奏していたのは讃美歌らしく、つまりは宗教曲なわけですね。もうすぐ死ぬ人たちに神を讃える歌を演奏し続けた。なるほど、あそこでダンスナンバーなんて演奏したって殴られるだけですもんね。


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『RRR』のあの曲なんて絶対だめだ。

無宗教の日本人(私は既成の○○教なんて少しも信じていないけど、神の存在は信じています)にはなかなかわかりにくいけど、娯楽曲はだめだけど宗教曲ならいいという棲み分けができてるんですかね?

あ、そうか!

今年の授賞式は強行するらしいですが、歌曲賞のお披露目は中止だそうです。どんな曲か知らないけど、誰がノミネートされてるのかも知らないけど、おそらくはどれも娯楽曲のカテゴリなのは明白で、それで中止にした。もしどれも宗教曲なら、もしかしたら、とは思うけど、まぁ娯楽映画の祭典(最近はそうでもないが)でそれはないでしょうね。

例のタイタニックの楽隊は、宗教曲を演奏しただけで、救助などはしなかった。みんな逃げるのに必死で、くだんの讃美歌が演奏されていたというのも「おそらく」ということらしい。そりゃそうでしょう。生きるか死ぬかのときに演奏されていた曲目など記憶にあるはずがない。

先日、感想を書いたMBSの映像’25『神戸生まれ、震災を知らない』では、30年前のあのとき、カメラを回すマスコミに対し「カメラ撮ってる暇があったら手伝えや!」と言った住民が映っていました。

もしかしたら、あの楽隊も、いまは美談まみれになっているけれど、「おまえたち、演奏ばっかりしてないで何かしろ!」と言われていた可能性もある。

結局、娯楽を提供することしかできない者、事実を記録することしかできない者はどうせどのみち何か言われるんだから、スティーブン・キングの言うことなんかに耳を傾けず、是非は「歴史という名の法廷」でジャッジしてもらうことにして、自分の仕事をしたほうがいい。たぶん何もないと思う。それで経済が回るならそれもまたよし。

ただし派手な歌曲賞のお披露目はなし。粛々と式典を進める。それでいいんじゃないでしょうか。


アカデミー賞を獲る脚本術
リンダ シーガー
フィルムアート社
2003-07-05



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