再放送で『正直不動産』の1stシーズンと2ndシーズンを見終えました。面白かったですねぇ。不動産の勉強にもなるし。
嘘ばかりで営業成績さえ上げればいいと考えていた主人公・永瀬財池が、嘘がつけなくなって「正直不動産」として生きることを決意するまでの物語ですが、私が一番気になったのはミネルヴァ不動産の社長・鵤(いかるが・高橋克典)と、彼の部下で永瀬を嘘つき不動産に育てた過去のある神木(ディーン・フジオカ)の人物造形です。

永瀬が所属する登坂不動産の登坂社長(草刈正雄)に恨みをもつ鵤社長は、子どもの頃、父親からひどい虐待を受けていて、大人になったら父親を殺そうと決意していた。なのに、登坂のせいで殺せなくなり、逆に登坂を潰してやろうと息巻いている。
トラウマが原因であのような「モンスター」になったというのは、私はあまり好きではありません。トラウマ、というのが好きになれないんです。ところが、この鵤の造形で大事なのは、彼自身は不遇の生まれに恨みをもってもいなければ、誰のせいにもしてないというところです。

倉科カナ演じる花澤は、かつて建設工事現場の現場監督をしていたけれど、「女だから」という理由で不遇をかこっている。と思い込んでいる。
たまたま彼女を見かけた鵤は、「これからもそうやって、時代のせい、社会のせい、性別のせいと言って逃げていくのか」と言い放ちます。彼自身はひどい父親に育てられても「俺が殺す」と自分で悪い奴を成敗するつもりだったし、登坂のせいで直接殺せなくなったいまも、登坂を攻撃はしても恨み言や泣き言は絶対言わない。
私もひどい父親に育てられてきましたが、「父親のせい」にばかりしてきました。だから、鵤の生き方には啓発されるところがあります。手段を選ばない悪い奴だけど、憧れます。
ですが、同じミネルヴァ不動産の悪役でも、この人はどうでしょうか?

ディーン・フジオカ演じる神木という男。もともと登坂不動産の人間でしたが、たった一度ナンバーワンになれなかったからという理由で辞めた男。業界にいられないほどの悪事を働いてホームレスまで堕ちていたところを鵤に拾われます。
彼は「ナンバーワン症候群」というか、営業成績ナンバーワンでなければだめだ、何が何でもナンバーワンでいつづけることを頑なに信奉している。
その理由が何かとわかった途端、拍子抜けしました。
彼には妻子がいたんですが、そのころはノルマぎりぎりの営業成績しか残せないポンコツ社員だった。それが妻子が交通事故で死に、トップを取ったら彼ら亡霊が見え、2位以下だと見えなくなる。それがナンバーワン症候群の理由だった。
これで泣く人もいるのかしらん、と思ったけど、しかし、泣かせてはだめでしょう。
鵤はトラウマを乗り越えようとしているけれど、神木は「こんな俺ってかわいそうだろ?」と同情を買っているだけ。
だからトラウマを根っこに設定するのって難しいんですよね。
ハンニバル・レクターもそうでしょ? 『羊たちの沈黙』や『ハンニバル』ではモンスター然としていていいけど、『ハンニバル・ライジング』で子ども時代を描くともうだめ。悲惨な子ども時代で~~とトラウマを設定すると「かわいそうな奴」にしかならない。モンスターにトラウマなんて一番似合わない。
主人公でもトラウマ設定はできるだけ避けたほうが賢明でしょうが、悪役はもっとだめです。鵤のように悪辣の極みを演じてでも「誰も俺に同情することは許さん」的な人間として描かなきゃ。
嘘ばかりで営業成績さえ上げればいいと考えていた主人公・永瀬財池が、嘘がつけなくなって「正直不動産」として生きることを決意するまでの物語ですが、私が一番気になったのはミネルヴァ不動産の社長・鵤(いかるが・高橋克典)と、彼の部下で永瀬を嘘つき不動産に育てた過去のある神木(ディーン・フジオカ)の人物造形です。

永瀬が所属する登坂不動産の登坂社長(草刈正雄)に恨みをもつ鵤社長は、子どもの頃、父親からひどい虐待を受けていて、大人になったら父親を殺そうと決意していた。なのに、登坂のせいで殺せなくなり、逆に登坂を潰してやろうと息巻いている。
トラウマが原因であのような「モンスター」になったというのは、私はあまり好きではありません。トラウマ、というのが好きになれないんです。ところが、この鵤の造形で大事なのは、彼自身は不遇の生まれに恨みをもってもいなければ、誰のせいにもしてないというところです。

倉科カナ演じる花澤は、かつて建設工事現場の現場監督をしていたけれど、「女だから」という理由で不遇をかこっている。と思い込んでいる。
たまたま彼女を見かけた鵤は、「これからもそうやって、時代のせい、社会のせい、性別のせいと言って逃げていくのか」と言い放ちます。彼自身はひどい父親に育てられても「俺が殺す」と自分で悪い奴を成敗するつもりだったし、登坂のせいで直接殺せなくなったいまも、登坂を攻撃はしても恨み言や泣き言は絶対言わない。
私もひどい父親に育てられてきましたが、「父親のせい」にばかりしてきました。だから、鵤の生き方には啓発されるところがあります。手段を選ばない悪い奴だけど、憧れます。
ですが、同じミネルヴァ不動産の悪役でも、この人はどうでしょうか?

ディーン・フジオカ演じる神木という男。もともと登坂不動産の人間でしたが、たった一度ナンバーワンになれなかったからという理由で辞めた男。業界にいられないほどの悪事を働いてホームレスまで堕ちていたところを鵤に拾われます。
彼は「ナンバーワン症候群」というか、営業成績ナンバーワンでなければだめだ、何が何でもナンバーワンでいつづけることを頑なに信奉している。
その理由が何かとわかった途端、拍子抜けしました。
彼には妻子がいたんですが、そのころはノルマぎりぎりの営業成績しか残せないポンコツ社員だった。それが妻子が交通事故で死に、トップを取ったら彼ら亡霊が見え、2位以下だと見えなくなる。それがナンバーワン症候群の理由だった。
これで泣く人もいるのかしらん、と思ったけど、しかし、泣かせてはだめでしょう。
鵤はトラウマを乗り越えようとしているけれど、神木は「こんな俺ってかわいそうだろ?」と同情を買っているだけ。
だからトラウマを根っこに設定するのって難しいんですよね。
ハンニバル・レクターもそうでしょ? 『羊たちの沈黙』や『ハンニバル』ではモンスター然としていていいけど、『ハンニバル・ライジング』で子ども時代を描くともうだめ。悲惨な子ども時代で~~とトラウマを設定すると「かわいそうな奴」にしかならない。モンスターにトラウマなんて一番似合わない。
主人公でもトラウマ設定はできるだけ避けたほうが賢明でしょうが、悪役はもっとだめです。鵤のように悪辣の極みを演じてでも「誰も俺に同情することは許さん」的な人間として描かなきゃ。

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