年末に「テレビドラマ10選」みたいな記事を読んだら、『アンメット』というのが1位になってて、矢も楯もたまらず見てみました。(以下ネタバレあり)
『アンメット ある脳外科医の日記』(2024、カンテレ)
原作:子鹿ゆずる&大槻閑人
脚本:篠﨑絵里子
出演:杉咲花、若葉竜也、井浦新、吉瀬美智子、千葉雄大、岡山天音、生田絵梨花、安井順平、野呂佳代、酒向芳
現代の神話
前半は素晴らしかったんですよね。特に初回。
私は常日頃から、「病気」や「癖」は「キャラクター=性格・人格」じゃないと言って、病気でキャラクターを作るやり方を批判しています。この『アンメット』でも記憶障害という病気が主人公を侵している。最初は「これはちょっと」と思ったんですが、次第に、「記憶障害を言い訳にして医師として働かず、看護助手の位置に甘えている」のが主人公の逆境だと思ったんですよね。
記憶障害のために昨日のことを憶えていられない人間が真摯に患者と向き合えるわけがないという看護師長の吉瀬美智子は言い、逆に、赴任したばかりの同じ脳外科医の若葉竜也は「医師として生きなさい。あなたならできる」と背中を押す。
神話と同じように、主人公が恐れの壁で止まっているときに、手助けしてくれる「メンター」がいて、同時に「あんたには無理だ」と追い返そうとする「門番」がいる。
これは現代の新しい神話だ! と欣喜雀躍したんです。その後も中盤まですごく面白かったから。
ラブストーリー?
このドラマでは、杉咲花の記憶障害がなぜ惹き起こされたのかでかなり引っ張ります。でも、ただの事故だった。病院の会長は、「あのことを思い出されたら終わりだよ」と杉咲花の主治医である井浦新に言うのですが、その「あのこと」というのが通りいっぺんのたわいもないことであることが明らかになったあたりから、どんどんつまらなくなっていきます。
神話はどこへ行ったの?
悪役然として登場した井浦新は、ただひたすら杉咲花の全快を祈るただの医者だったことが明らかになる最終回など噴飯物です。
会長が一番悪い奴ですが、井浦新が告発して簡単に逮捕され、非常に都合よく物語から排除されてしまう。
何だか自分のシナリオを読んでるみたいでした。
この『アンメット』って、結局ラブストーリーだったんですかね? いや、ラブストーリーでも「神話」になっているものはあります。でも、『アンメット』は「神話として始まりながらラブストーリーに堕してしまった物語」です、私にとっては。
ラスト・ミニッツ・レスキュー?
最終回、杉咲花の記憶障害の原因の腫瘍を切除する手術を若葉竜也と井浦新の二人で行うのですが、神話として屹立したり、記憶の謎で引っ張ったり、何だかんだ言えるけどいい感じだったこのドラマが、最終的に「ラスト・ミニッツ・レスキュー」で終わろうとしたときは激怒しましたね。
でも、「ラスト・ミニッツ・レスキュー」だとも言えないですよ。
「ラスト・ミニッツ・レスキュー」を創案したグリフィスのそれは、助ける者と助けられる者とをカットバックしてたんですよね。
でも、この『アンメット』では、助ける者と助けられる者が同じ手術室にいるからカットバックのしようがない。画としては非常に凡庸な演出に終始せざるをえません。テレビドラマだから見れたけど、映画だったら正視できなかったでしょう。
手術が終わると、三瓶先生を演じた若葉竜也とその他の医療スタッフを交互にカットバックしてましたっけ。あれをもし蓮實重彦が見たら、「下品極まりない」なんて言うんでしょうね。あまりにも厚化粧な演出でした。
というわけで、新年4日で全11話を見ましたが、徒労感だけが残りました。
『アンメット ある脳外科医の日記』(2024、カンテレ)
原作:子鹿ゆずる&大槻閑人
脚本:篠﨑絵里子
出演:杉咲花、若葉竜也、井浦新、吉瀬美智子、千葉雄大、岡山天音、生田絵梨花、安井順平、野呂佳代、酒向芳
現代の神話
前半は素晴らしかったんですよね。特に初回。
私は常日頃から、「病気」や「癖」は「キャラクター=性格・人格」じゃないと言って、病気でキャラクターを作るやり方を批判しています。この『アンメット』でも記憶障害という病気が主人公を侵している。最初は「これはちょっと」と思ったんですが、次第に、「記憶障害を言い訳にして医師として働かず、看護助手の位置に甘えている」のが主人公の逆境だと思ったんですよね。
記憶障害のために昨日のことを憶えていられない人間が真摯に患者と向き合えるわけがないという看護師長の吉瀬美智子は言い、逆に、赴任したばかりの同じ脳外科医の若葉竜也は「医師として生きなさい。あなたならできる」と背中を押す。
神話と同じように、主人公が恐れの壁で止まっているときに、手助けしてくれる「メンター」がいて、同時に「あんたには無理だ」と追い返そうとする「門番」がいる。
これは現代の新しい神話だ! と欣喜雀躍したんです。その後も中盤まですごく面白かったから。
ラブストーリー?
このドラマでは、杉咲花の記憶障害がなぜ惹き起こされたのかでかなり引っ張ります。でも、ただの事故だった。病院の会長は、「あのことを思い出されたら終わりだよ」と杉咲花の主治医である井浦新に言うのですが、その「あのこと」というのが通りいっぺんのたわいもないことであることが明らかになったあたりから、どんどんつまらなくなっていきます。
神話はどこへ行ったの?
悪役然として登場した井浦新は、ただひたすら杉咲花の全快を祈るただの医者だったことが明らかになる最終回など噴飯物です。
会長が一番悪い奴ですが、井浦新が告発して簡単に逮捕され、非常に都合よく物語から排除されてしまう。
何だか自分のシナリオを読んでるみたいでした。
この『アンメット』って、結局ラブストーリーだったんですかね? いや、ラブストーリーでも「神話」になっているものはあります。でも、『アンメット』は「神話として始まりながらラブストーリーに堕してしまった物語」です、私にとっては。
ラスト・ミニッツ・レスキュー?
最終回、杉咲花の記憶障害の原因の腫瘍を切除する手術を若葉竜也と井浦新の二人で行うのですが、神話として屹立したり、記憶の謎で引っ張ったり、何だかんだ言えるけどいい感じだったこのドラマが、最終的に「ラスト・ミニッツ・レスキュー」で終わろうとしたときは激怒しましたね。
でも、「ラスト・ミニッツ・レスキュー」だとも言えないですよ。
「ラスト・ミニッツ・レスキュー」を創案したグリフィスのそれは、助ける者と助けられる者とをカットバックしてたんですよね。
でも、この『アンメット』では、助ける者と助けられる者が同じ手術室にいるからカットバックのしようがない。画としては非常に凡庸な演出に終始せざるをえません。テレビドラマだから見れたけど、映画だったら正視できなかったでしょう。
手術が終わると、三瓶先生を演じた若葉竜也とその他の医療スタッフを交互にカットバックしてましたっけ。あれをもし蓮實重彦が見たら、「下品極まりない」なんて言うんでしょうね。あまりにも厚化粧な演出でした。
というわけで、新年4日で全11話を見ましたが、徒労感だけが残りました。
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