アキ・カウリスマキ監督が引退を撤回して撮った極上の傑作。との触れ込みの映画です。ちょうど一年前に見たものを再見してみました。いやぁ、二回目のほうがキましたね。(以下ネタバレあり)
『枯れ葉』(2023、フィンランド・ドイツ)
脚本・監督:アキ・カウリスマキ
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン
ウクライナ戦争と二人称の死
アキ・カウリスマキが引退を撤回したのは、ロシアのウクライナ侵略に激怒したためと伝えられています。
劇中、何度も主人公のラジオからウクライナで何人死んだ、何人避難したと報道がなされますが、日本でもありましたね。震災で何人死んだ、何人避難した、コロナで何人死んだ、何人感染した、と。
解剖学者の養老孟子先生は、「死」には「二人称」しかありえないと言います。
「一人称の死、つまり自分の死は自分自身が死んでいなくなるのだからないのと同じです。三人称の死は自分とは関係ない人の死です」
だから、大事なのは「死」を「二人称」で語ることだと。「あなたの死」を私は激しく悲しむ、といえることです。
ウクライナのたくさんの死も、日本や他の地域での死も、すべて三人称の死として報道されます。自分とは無関係の死なんですね。他人事です。
アキ・カウリスマキはそこに激怒してるんだと思う。
この『枯れ葉』では、「あなたでなければだめなんだ」という描写が多いですよね。
男が女から電話番号をもらうがすぐなくしてしまう。再会したら女は「電話してくれなかった」と恨み言を言う。「番号をなくしたんだ」「他の女を見つけたのかと思った」。
でも違うんですよね。確かに男は他の女を探すこともできた。でも「あなたでなければだめ」だった。だから一緒に映画を見た劇場の前でずっと張り込むように待っている。するとそこへ女が来て再会できる。
女は保護犬をもらって飼うんですが、この犬も最初は「この子でいい」程度だったかもしれないけど、飼ううちにいとおしくなってきて、「あなたでなければだめなんだ」という境地に至る。そしてその犬の名前が「チャップリン」ときてはもう泣かずにはおれない。
画像のように見つめあうこと。相手が見つめ返してこなくても、しつこく見つめること。「あなたでなければだめなんだ」と念じること。
そうしないとすべてが自分とは無関係になってしまう。
なんだかんだ言っても、ロシアとウクライナの戦争は私にとっては他人事でしかなかった。物価が少しでも下がってほしいから早く終わってほしいとは思いこそすれ、彼の地での戦死者を「二人称の死」として受け止めることはなかった。
改めようと思う。ウクライナを見つめようと思う。
『枯れ葉』(2023、フィンランド・ドイツ)
脚本・監督:アキ・カウリスマキ
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン
ウクライナ戦争と二人称の死
アキ・カウリスマキが引退を撤回したのは、ロシアのウクライナ侵略に激怒したためと伝えられています。
劇中、何度も主人公のラジオからウクライナで何人死んだ、何人避難したと報道がなされますが、日本でもありましたね。震災で何人死んだ、何人避難した、コロナで何人死んだ、何人感染した、と。
解剖学者の養老孟子先生は、「死」には「二人称」しかありえないと言います。
「一人称の死、つまり自分の死は自分自身が死んでいなくなるのだからないのと同じです。三人称の死は自分とは関係ない人の死です」
だから、大事なのは「死」を「二人称」で語ることだと。「あなたの死」を私は激しく悲しむ、といえることです。
ウクライナのたくさんの死も、日本や他の地域での死も、すべて三人称の死として報道されます。自分とは無関係の死なんですね。他人事です。
アキ・カウリスマキはそこに激怒してるんだと思う。
この『枯れ葉』では、「あなたでなければだめなんだ」という描写が多いですよね。
男が女から電話番号をもらうがすぐなくしてしまう。再会したら女は「電話してくれなかった」と恨み言を言う。「番号をなくしたんだ」「他の女を見つけたのかと思った」。
でも違うんですよね。確かに男は他の女を探すこともできた。でも「あなたでなければだめ」だった。だから一緒に映画を見た劇場の前でずっと張り込むように待っている。するとそこへ女が来て再会できる。
女は保護犬をもらって飼うんですが、この犬も最初は「この子でいい」程度だったかもしれないけど、飼ううちにいとおしくなってきて、「あなたでなければだめなんだ」という境地に至る。そしてその犬の名前が「チャップリン」ときてはもう泣かずにはおれない。
画像のように見つめあうこと。相手が見つめ返してこなくても、しつこく見つめること。「あなたでなければだめなんだ」と念じること。
そうしないとすべてが自分とは無関係になってしまう。
なんだかんだ言っても、ロシアとウクライナの戦争は私にとっては他人事でしかなかった。物価が少しでも下がってほしいから早く終わってほしいとは思いこそすれ、彼の地での戦死者を「二人称の死」として受け止めることはなかった。
改めようと思う。ウクライナを見つめようと思う。
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