2024年も早くも年の瀬ですね。というわけで、書籍のベストテンを。毎年書いていることですが、映画と違って、書籍は「今年出たもの」ではなく「今年初めて読んだもの」が対象です。だから「旧作」と「新作」がごたまぜです。
では行きましょう。今年私を魅了したのは次の10冊なり!(実は12冊)
12冊中、6冊が小説ですか。しかもトップ4を小説が独占。私はもともとそれほど小説を読まず、7位みたいな評論本を一番よく読むんですが、今年はそういうのに良書が少なかったのかな。
![47877-1311-5c0b6c8da7925c4e0d94f1ac5a56e745-1200x666](https://livedoor.blogimg.jp/henri_cartier/imgs/5/d/5d83dde3-s.jpg)
宮島未奈さんの『成瀬』シリーズは本当に面白い。前作の『成瀬は天下を取りにいく』より、今年の『成瀬は信じた道をいく』のほうが好き。成瀬あかりという唯一無二のキャラクターを創造した功績は計り知れないほど大きいのではないでしょうか。
筒井康隆さんの『敵』『夢の木坂分岐点』も今年の収穫でした。
前者は年明け早々、映画化作品が封切られると知って、10年以上積読状態だった文庫本を取り出してきて貪り読みました。あれは「文学」ですよね。どうやって映画にしてるのかしら。
『夢の木坂分岐点』はファンタジーなのかもしれないけど、いずれにしても、筒井さんは、小説、いや、文学にしかできないことに挑戦してきたんだなぁと恐れ入る気持ち。来月3日のいまや恒例となった『100分de名著』スペシャルは、『100分de筒井康隆』らしい。作家名での特集は初めてでしょう。よっぽど文学に愛された人なんだなと思う。長生きしてください。
綿矢りさの『パッキパキ北京』は何度声を出して笑ったか知れない。一人称小説はこう書けという見本ですね。谷崎潤一郎の『神童』と同じ構造になっていてニヤリとしてしまいました。(読了時の感想は⇒こちら)
昨年亡くなった山田太一さんが編纂した『生きる哀しみ』がエッセイでは一番よかったですね。短い文章の中に生きる覚悟と哀しみが滲み出た良書。文庫で読めるからよけいにうれしい。(読了時の感想は⇒こちら)
今年一番話題になった新書である7位『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、タイトルからは想像もつかない、明治からの読書の歴史が明快に解説されていて、心地よい陶酔感に包まれました。にしても、一番底に置いているのは、映画『花束みたいな恋をした』で、映画ファンとしてはうれしいかぎり。
8位は、ずっと積読している人間にとっちゃ救済の本ですね。14人のメシアが独自の積読論を語ってくれます。何より「積読とは図書館なり」という一節が一番響きましたね。一人ひとりの積読棚が画像満載で見られて楽しい。(読了時の感想は⇒こちら)
9位はたまたま古本屋で見つけたんですが、そんな出会いがなければ出版されてることすら死ぬまで知らなかったかもしれない奇遇本。春日武彦の熱心な読者を自認しているつもりですが、これはまったく知らなかった。というか、春日武彦の純文学の読み方ってめっちゃ独特。あんなふうに読めるのってひとつの才能だと思う。
NHKドラマの『燕は戻ってこない』は途中で見るのをやめました。あれを見続けるくらいなら10位の桐野夏生の原作小説をもう一度読んだほうがいいと判断したからです。『OUT』『グロテスク』の頃の切れ味はないけど、平易な文体で女の怨念を積み重ねていく描写の数々は、ほとんど恐怖小説。喧嘩屋キリノここにあり!
11位の三島エンタメ小説は意外だった。三島をノリノリで読めちゃうなんてこんなことが生きてるうちにあろうとは少しも予想できなかった。ちくま文庫から出ている三島は全体的にエンタメ度高めみたいなので、他にも読んでみるつもりです。
12位は今年唯一のマンガ。今年はほとんどマンガを読まなかった。いかんなぁ。この国では下手な小説を読むくらいならマンガのほうが面白いとわかっているのにこの体たらく。アニメは見てるんですけどね。
ワーストには、ベストワンと同じ宮島未奈さんの『婚活マエストロ』を挙げます。これは非常に残念な小説でした。(読了時の感想は⇒こちら)
一人称で書くか三人称で書くかは非常に重要かつ難しい問題ですね。というわけで、よいお年を!
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2023書籍ベストテン!
では行きましょう。今年私を魅了したのは次の10冊なり!(実は12冊)
①成瀬は信じた道をいく(宮島未奈)
②敵(筒井康隆)
③夢の木坂分岐点(筒井康隆)
④パッキパキ北京(綿矢りさ)
⑤風のない日々/少女(野口冨士男)
⑥生きるかなしみ(山田太一・編)
⑦なぜ働いていると本が読めなくなるのか(三宅香帆)
⑧積ん読の本(石井千湖)
⑨無意味なものと不気味なもの(春日武彦)
⑩燕は戻ってこない(桐野夏生)
⑪命売ります(三島由紀夫)
⑫くらべて、けみして 校閲部の九重さん(こいしゆうか)
12冊中、6冊が小説ですか。しかもトップ4を小説が独占。私はもともとそれほど小説を読まず、7位みたいな評論本を一番よく読むんですが、今年はそういうのに良書が少なかったのかな。
![47877-1311-5c0b6c8da7925c4e0d94f1ac5a56e745-1200x666](https://livedoor.blogimg.jp/henri_cartier/imgs/5/d/5d83dde3-s.jpg)
宮島未奈さんの『成瀬』シリーズは本当に面白い。前作の『成瀬は天下を取りにいく』より、今年の『成瀬は信じた道をいく』のほうが好き。成瀬あかりという唯一無二のキャラクターを創造した功績は計り知れないほど大きいのではないでしょうか。
筒井康隆さんの『敵』『夢の木坂分岐点』も今年の収穫でした。
前者は年明け早々、映画化作品が封切られると知って、10年以上積読状態だった文庫本を取り出してきて貪り読みました。あれは「文学」ですよね。どうやって映画にしてるのかしら。
『夢の木坂分岐点』はファンタジーなのかもしれないけど、いずれにしても、筒井さんは、小説、いや、文学にしかできないことに挑戦してきたんだなぁと恐れ入る気持ち。来月3日のいまや恒例となった『100分de名著』スペシャルは、『100分de筒井康隆』らしい。作家名での特集は初めてでしょう。よっぽど文学に愛された人なんだなと思う。長生きしてください。
綿矢りさの『パッキパキ北京』は何度声を出して笑ったか知れない。一人称小説はこう書けという見本ですね。谷崎潤一郎の『神童』と同じ構造になっていてニヤリとしてしまいました。(読了時の感想は⇒こちら)
昨年亡くなった山田太一さんが編纂した『生きる哀しみ』がエッセイでは一番よかったですね。短い文章の中に生きる覚悟と哀しみが滲み出た良書。文庫で読めるからよけいにうれしい。(読了時の感想は⇒こちら)
今年一番話題になった新書である7位『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、タイトルからは想像もつかない、明治からの読書の歴史が明快に解説されていて、心地よい陶酔感に包まれました。にしても、一番底に置いているのは、映画『花束みたいな恋をした』で、映画ファンとしてはうれしいかぎり。
8位は、ずっと積読している人間にとっちゃ救済の本ですね。14人のメシアが独自の積読論を語ってくれます。何より「積読とは図書館なり」という一節が一番響きましたね。一人ひとりの積読棚が画像満載で見られて楽しい。(読了時の感想は⇒こちら)
9位はたまたま古本屋で見つけたんですが、そんな出会いがなければ出版されてることすら死ぬまで知らなかったかもしれない奇遇本。春日武彦の熱心な読者を自認しているつもりですが、これはまったく知らなかった。というか、春日武彦の純文学の読み方ってめっちゃ独特。あんなふうに読めるのってひとつの才能だと思う。
NHKドラマの『燕は戻ってこない』は途中で見るのをやめました。あれを見続けるくらいなら10位の桐野夏生の原作小説をもう一度読んだほうがいいと判断したからです。『OUT』『グロテスク』の頃の切れ味はないけど、平易な文体で女の怨念を積み重ねていく描写の数々は、ほとんど恐怖小説。喧嘩屋キリノここにあり!
11位の三島エンタメ小説は意外だった。三島をノリノリで読めちゃうなんてこんなことが生きてるうちにあろうとは少しも予想できなかった。ちくま文庫から出ている三島は全体的にエンタメ度高めみたいなので、他にも読んでみるつもりです。
12位は今年唯一のマンガ。今年はほとんどマンガを読まなかった。いかんなぁ。この国では下手な小説を読むくらいならマンガのほうが面白いとわかっているのにこの体たらく。アニメは見てるんですけどね。
ワーストには、ベストワンと同じ宮島未奈さんの『婚活マエストロ』を挙げます。これは非常に残念な小説でした。(読了時の感想は⇒こちら)
一人称で書くか三人称で書くかは非常に重要かつ難しい問題ですね。というわけで、よいお年を!
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2023書籍ベストテン!
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