見てきました。外国の実写映画で久々に興行収入トップになった『シビル・ウォー アメリカ最後の日』。もう2週間ほど前に見たので、細部をあまり憶えておらず、軽い感想となります。(以下ネタバレあり)


『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024、アメリカ・イギリス)
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脚本・監督:アレックス・ガーランド
出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン


分断が進んだアメリカ合衆国で、連邦政府から19もの州が離脱し、さらに、なぜか民主党支持者の多いカリフォルニア州と共和党支持者の多いテキサス州が手を組んで「西部同盟」を結成。正規連邦軍との戦争が勃発。西部同盟の狙いは首都ワシントンを落として、ホワイトハウスにいる大統領殺害。というのが大まかな背景。

そんな内戦状態のアメリカで、名を成した報道写真家と、報道写真家の卵(と、あと二人の男)がワシントンへ向かうロードムービー。


分断より戦争?
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この役者さんよかったですよね。

一行を呼び止めた兵士。「俺たちは君と同じアメリカ人だ」というと、

「なるほど。どの種類のアメリカ人だ?」

という信じられない答えが返ってくる。

もはやアメリカ人にとって「アメリカ人」という単語は「同胞」の意味ではなく、単に「人間」という程度の意味になっている。正規連邦軍に味方する者か、それとも西部同盟軍に味方する者かというこの問いは、答えようによっては即座に殺されるかもしれないからとても恐ろしい。それが証拠にすぐ横にいた男は、このいい顔をした兵士にものの見事に秒殺されてましたよね。「分断」が進むとこうなるのかととても怖かったし、実際に現在撮られているアメリカのドキュメンタリー番組を見ても、これぐらい殺気立ってるから、現実を反映したすぐれたセリフ・場面と言えましょう。

ですが……


分断よりビルドゥングス・ロマン?
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名を成した報道写真家を演じるのがキルステン・ダンストで、卵ちゃんはケイリー・スピーニーという初めて見る女優さんですが、何だかこの映画全体が、分断のテーマを掘り下げるより、報道写真家の卵が大先輩の助言で独り立ちしていくという、いわばビルドゥングス・ロマンみたいな作りになっているのが気になりました。

そんなことより、分断がなぜ起こったのか、19の州は全部でどこか、とか、不可解な西部同盟はなぜ起こったか、とか、そういうところをもっと突っ込んで説明してくれないと困ります。


分断より戦場の恐怖?
cname_20240808215452ケイリー・スピーニー

中盤あたりで、一行が出会う二人の兵士がいますよね。一方へライフルを構えて微動だにしない二人。

遠くの建物から狙われているらしく、殺られる前に殺らねばとばかり、二人で同じところを狙っている。いつ銃弾が飛んでくるかわからないし、さらに怖いのは、誰に狙われているかわからないところ。

確かに戦場だとわからないですよね。敵かと思って撃ったら味方だった。で、味方同士で撃ち合いを演じてしまうとか、充分ありそう。

でも、それはあくまでも「戦場ならではの恐怖」であって、「分断」とは何の関係もありません。別に内戦でなくとも、どんな戦争でもありうることだと思う。

だから、この『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、掘り下げるべきテーマを間違えていると思う。枝葉末節にこだわりすぎなんです。「戦争」ではなく「政治」を描かないといけないんじゃないでしょうか。


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この場面みたいなのを10個ぐらいは作ってほしかった。というのが正直な感想です。いい企画だけに、何とももったいない!


分断国家アメリカ-多様性の果てに (中公新書ラクレ 823)
読売新聞アメリカ総局
中央公論新社
2024-10-08


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