昨日の『クローズアップ現代』で、驚くべき題材が取り上げられていました。サブタイトルは、「‟リピーター医師”の衝撃 病院で一体何が?」。


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「リピーター医師」とは、医療事故を何度も繰り返す医師のことで、番組で取り上げられたリピーター医師は、何と8か月の短期間に8件もの医療事故を起こし、そのうち2件では術後に患者が死亡。かろうじて生き残った人でも、上半身と下半身をつなぐ脊椎のめちゃ大切な神経を切るミスを起こし、その患者さんは手術さえしなければ腰痛と闘うだけだったのに、あまりの痛みと不自由な暮らしに悲鳴を上げていました。

なぜ8件もミスを犯す前に防げなかったかというと、何と病院側はミスの事実を知っていたというんですね。「あ、切っちゃった。こりゃ大変だ」と思ったという。耳を疑いましたが、その原因は「医師不足」にあると番組は指摘していました。

とにかく医者の数が少ない、少ないから何とか頭数だけでもそろえようということで、ミスばかりの医師でも置いておこうとなったようです。

何と本末転倒な。

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昔、何度か行った医学会議の運営スタッフのバイトで、私は会場の照明係をすることが多く、学会論文の発表を聞いていました。

そこで、当時かなり話題になったニュースが取り上げられていました。手術が失敗した事例で、患者遺族が医療事故として執刀医を告発したと。でも、学会に集った医者たちに言わせると「正当な医療行為」だったらしく、複数の人がこの話題を取り上げていましたが、どの人も主張内容は同じでした。

「あれでもし有罪になったら馬鹿らしくて医者なんてやってられません」

その願いが通じたのか、まことに喜ばしいことに、被告の医師は無罪になりました。

無罪でも、正当な医療行為をしても牢獄送りになる可能性があるとなると、現場の医師たちはかなり委縮し、言葉通り馬鹿らしくなったことでしょう。

クレーマーが多いから医師になる人が少なくなる。特にミスをしたら大ごとになる外科医などはどこも不足しているそうです。

こういうことが別のところでも起こっているなぁ、とハッとなったのでした。


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映画館のマナーを守れという声がすごく大きくなってますよね。

いや、基本的にマナーを守ることには映画ファンの私も大いに賛成です。

「上映中にしゃべらない」
「スマホをいじらない」
「前の座席を蹴らない」
「飲食はいいが、音やにおいなど周囲のお客さんの迷惑にならない範囲内で食べる」

という、まぁ言ってみれば、上映前のマナー講座みたいなやつで言ってるのと同じことです。これぐらいを守ればいいんじゃないかな。

ツイッターをやっていた頃は、フォロワーさんにすんごくマナーにうるさい人がいて、

「上映中はもちろん、予告編のときでもガサガサ音を立てるな。本編中でもやるんじゃないかとハラハラしてストレスがたまるから」
「上映時間に遅れるのはだめ。前を通られたりすると嫌だから。上映時間ギリギリでもだめ。みんなもっと余裕をもとう」
「エンドロールを最後まで見ない奴は人間じゃない」

とまぁこんな感じ。最後のは別の人ですが、それはともかく、自分が音を立てたり上映時間に遅れたりする可能性があるのに他人ばかり責めていてうんざりしました。

気持ちはわかるけど、あんまりうるさく言うのは逆効果だと思うんですよ。

年に何度も映画館に足を運ぶ私のような映画ファンでも昨今のマナーのうるささに辟易して、ちょいとばかり足が遠のいていますし、何よりも年に2,3回しか行かない人とか、それこそ数年に1度の人とかは、あまりに敷居が高くなってしまってまったく行かなくなってる気がします。

いや、もっと大事な観客を失っている!

映画館の観客の減少の理由は、何よりも配信サービスの充実と、それと足並みをそろえたコロナ禍の拡大ですよね。だから、私みたいにかつては年に100本くらい見に行っていた根っからの映画ファンを丸ごと一人失ってるんじゃないか。そんなにうるさく言うなら全部配信で見るよ、と。上述の観客より、1人で50本とか100本だから大きいですよ。

観客の掘り起こしをしていかなきゃいけない危機に、マナーの大切さをあまりに声高に言ったら逆効果だと思うのです。

正当な医療行為を違法だと告発する→医師不足
たいしたことじゃないことをあまりに声高に告発する→観客の減少


この二つと同じようなことが日本社会のあちこちで起こっているような気がします。クレーマー社会ゆえに。

エンドロールを最後まで見なきゃ人間じゃない? ふざけるな!


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美木 麻穂
パイ インターナショナル
2024-11-22



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