ワイドナショーを見てたら、「AI面接」なるものが取り上げられていました。

世も末だな、と。淳なんて、「新しいものはどんどん取り入れたらいいんじゃないか」と言ってて、新しいかどうかだけで物事を判断しているのを聞いて唖然となりました。やはり、ゲスト出演のワイドナ評論家や犬塚弁護士みたいに、AIのような四則演算しかできないものに人間の評価なんてできないと言ってほしかったですね。(AIは電卓と同じですよ。計算速度が以上に速いだけ)

で、AI面接はともかくとして、最近は面接の場で「尊敬する人物」や「愛読書」を聞いてはいけないことになっている、と聞いて一番唖然となりました。

何でも、尊敬する人物や愛読書が何かというのは、その人の思想信条に関することなので、そういう情報で採否を決めるのは就職差別になるんですって。

おかしいと思いませんか?

面接官を務めることもある佐々木恭子アナは、「アナウンサーは技能職なので、やっぱり、この仕事ができるかどうかそれだけ一点に絞って見てますね」

というのだけど、「仕事をこなせるかどうかだけ」ってどうやって見るんですかね? いろんな情報のごった煮が一人の「人間」なのに。それこそAIみたいな四則演算しかできない存在にしか見分けがつかないでしょう。

番組では、欧米では名前や写真も履歴書には載せたらだめとなっていると。確かに名前だけでユダヤ系かイタリア系かがわかったり、写真で有色人種かどうかがわかったりというのがあるからしょうがない面もあるとはいえ、私はその人の情報は全部載せたほうがいいと思う。

だって、書類審査をいくら通ったって最後は人間が見るんだから、人種とか丸わかりじゃないですか。名前はだめ? いやいや、名前というのはその人の個人情報の根幹ですよ。

名前もない、写真もない、趣味も、考え方もわからない。ただ、わかるのは「スキル」だけ。そんなの「コンピュータ」じゃないですか。コンピュータとは、つまり、AI。AI面接が流行るわけがこれでわかりました。コンピュータにコンピュータを審査させているだけ。



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もう20年前くらいでしょうか。あるレストランの厨房スタッフの面接を受けたら、

「あなにここの仕事ができますか?」

と聞かれたんです。いやいや、おまえがそれを判定するためにわざわざ俺はここにきてるんじゃないか! と怒鳴ってやろうかと、口から出かかったのを必死で抑えました。

そんなの直接聞いちゃダメ。じゃあどうやって、その会社の仕事をできるかどうか聞けばいいかというと、うちの親父が言ってましたが、「愛読書とか休日に何して過ごすとか、そういう外堀から埋めていくように核心に迫るのが大事」と。正論だと思いましたよ。

まだ3年前のことですが、ある会社を受けたら、一問一答式のアンケートがあって、そのなかにこんな設問がありました。

「私が嫌いなのは○○である」

私は「相田みつを」と答えました。面接官は興味深そうに回答用紙を見て、

「相田みつをが嫌いっていうところにどうしても目が行ってしまうんですが、どうしてですか? 私は好きなんですけども」

「私は何十本ものシナリオを書きましたが、言葉の力など信じていません。信じていればそれこそ相田みつをのように色紙にテーマを書いて道行く人に渡せばいいじゃないですか。信じてないからこそわざわざ2時間の映画にするんです。だから相田みつをのような人とは相容れないんです」

「あー! そういう理由で相田みつをが嫌いだという人に初めて会いました」

と、最初はどんよりして場の空気が一変したのをいまでも鮮明に憶えています。結局、何かの理由で(交通費だったか。遠かったのでね)こちらから断ったんですが、もう即決で採用されそうな勢いでした。

その面接官は相田みつをが好きといっていたのだから、それが理由で不採用はありえない。趣味や思想信条が違ってもわかりあえることはある。

結局、いまのアメリカみたいに、親トランプ派と反トランプ派に分断されているのは、「誰/何かが好き」同士で集まる、「嫌い」同士で集まるからじゃないの? 

私は撮影現場で3か月ご一緒した津川雅彦さんをとても尊敬していたけど、津川さんは私とは相いれない極右思想の持ち主だった。それでも津川さんへの尊敬の念はいまでも変わらない。政治なんてしょせんその程度のもの。愛読書も好きな映画も相田みつをもしょせんその程度のものですよ。

思想信条が違ってもわかりあえることはたくさんあるし、敵に塩を送ることだってできるのが「人間」というもの。

自分と反対意見をいう奴はすべて「敵」という考え方を改めていかなければ。すべてをゼロかイチで判断するデジタル化の波は恐ろしい勢いで社会を覆いつくしていますが、できるだけそれには抗っていきたいものです。


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