アカデミー賞の国際長編映画賞の立候補作品に選ばれたということで期待値マックスだった、黒沢清監督最新作『Cloud クラウド』を見てきたんですが、何とも複雑な気持ちになりました。(以下ネタバレあり)
『Cloud クラウド』(2024、日本)
脚本・監督:黒沢清
出演:菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、荒川良々、窪田正孝、岡山天音、赤堀政秋、吉岡睦雄、松重豊
いったい何を言いたいの?
物語のあらましは、JKフィギュアや本物か偽物かわからないブランドもののバッグを転売して利ザヤを稼ぐ転売屋が、あちこちで恨みを買って「奴を殺そう」と集まった狂気の変人たちを相手に、不思議な仲間一人だけを味方に銃撃戦を勝ち抜く、というもの。
別に転売屋を断罪すべきだなんて無粋なことは言いません。それではただのお説教だしね。でも、彼よりもっと悪人の者どもを血祭りにあげたというだけで、「で?」というのが正直なところなんですよね。
黒沢監督も師事したことのある長谷川和彦監督が言っていました。
「シナリオってのは物語のことじゃないんだ。物語と哲学なんだよ」
この『Cloud クラウド』のどこに「哲学」がありましょうや? 菅田将暉はほとんど何も考えてないし、売り上げだけ上がればいいみたいだけど、最後、窪田正孝まで全員殺したときにスマホを操作して「ずっと気になってたんだよ」と売れてるかどうかを見るシーンは笑ってしまいました。
もう彼は売り上げが上がるかどうかだけにしか興味がない、転売屋というよりは金の亡者になってしまった。
骨の髄まで転売屋と化した男の「転売哲学」を少しは語ってほしかった。
別に黒沢さんはモラル・ミーニングな物語にはまったく興味がないと思うからこれ以上言ってもしょうがないけど、ただ、この映画、わからないことが多すぎませんか?
わからないこと
一番わからないことは荒川良々ですね。彼は一介のサラリーマンのはずなのに、猟銃をもってるのはそのほうが面白くなるからいいとしても、なぜ菅田将暉を殺しに来るんでしょうか? 彼は転売の被害に遭ってないんでしょ? 菅田将暉に辞められただけでしょ? 居留守で殺す? そういえば妻子を殺して指名手配中というニュースがありました。あれは何? キチガイということ? ぜんぜんわからない。
奥平大兼の佐野くんという菅田のアシスタントもよくわからない。クビにされてもそれでも菅田を助けに行くのは、おそらく、彼はゲイなのでしょう。古川琴音の誘惑にもまったくなびかなかったのでね。でも、それならそれで匂わせるだけでなく、もっとはっきり描けばいいのに。
動機はそれでいいとしても、「組織」から拳銃を都合してもらったり死体の掃除までしてもらったり、いったい彼は何者なの? 菅田が初めの一発を撃たなかったら彼は死んでいたし、そんなに名手ではないみたい。
最後の古川琴音もわからない。最初から菅田のクレジットカードが狙いだったというのはいいし、菅田は結構本気だったというのもわかる。でも、あんな群馬の山奥まで一緒に引っ越すだろうか?
銃撃戦
黒沢さんはかねてより、「アメリカ映画に一番影響を受けた」と言っています。その言葉通り、アメリカの銃撃戦を自らの血肉として、堂に入った銃撃戦を披露してくれます。
他にも素晴らしいショットを素晴らしい呼吸で編集した「これぞ活劇」といったシーンがたくさんありました。
だから残念なんですよね。もっと物語の背景や根っこの部分からもっと真剣になってほしかった。
だって、これじゃあ、ただの「銃撃戦をやりたかった自主映画」とどこが違うかわかりませんもの。
『Cloud クラウド』(2024、日本)
脚本・監督:黒沢清
出演:菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、荒川良々、窪田正孝、岡山天音、赤堀政秋、吉岡睦雄、松重豊
いったい何を言いたいの?
物語のあらましは、JKフィギュアや本物か偽物かわからないブランドもののバッグを転売して利ザヤを稼ぐ転売屋が、あちこちで恨みを買って「奴を殺そう」と集まった狂気の変人たちを相手に、不思議な仲間一人だけを味方に銃撃戦を勝ち抜く、というもの。
別に転売屋を断罪すべきだなんて無粋なことは言いません。それではただのお説教だしね。でも、彼よりもっと悪人の者どもを血祭りにあげたというだけで、「で?」というのが正直なところなんですよね。
黒沢監督も師事したことのある長谷川和彦監督が言っていました。
「シナリオってのは物語のことじゃないんだ。物語と哲学なんだよ」
この『Cloud クラウド』のどこに「哲学」がありましょうや? 菅田将暉はほとんど何も考えてないし、売り上げだけ上がればいいみたいだけど、最後、窪田正孝まで全員殺したときにスマホを操作して「ずっと気になってたんだよ」と売れてるかどうかを見るシーンは笑ってしまいました。
もう彼は売り上げが上がるかどうかだけにしか興味がない、転売屋というよりは金の亡者になってしまった。
骨の髄まで転売屋と化した男の「転売哲学」を少しは語ってほしかった。
別に黒沢さんはモラル・ミーニングな物語にはまったく興味がないと思うからこれ以上言ってもしょうがないけど、ただ、この映画、わからないことが多すぎませんか?
わからないこと
一番わからないことは荒川良々ですね。彼は一介のサラリーマンのはずなのに、猟銃をもってるのはそのほうが面白くなるからいいとしても、なぜ菅田将暉を殺しに来るんでしょうか? 彼は転売の被害に遭ってないんでしょ? 菅田将暉に辞められただけでしょ? 居留守で殺す? そういえば妻子を殺して指名手配中というニュースがありました。あれは何? キチガイということ? ぜんぜんわからない。
奥平大兼の佐野くんという菅田のアシスタントもよくわからない。クビにされてもそれでも菅田を助けに行くのは、おそらく、彼はゲイなのでしょう。古川琴音の誘惑にもまったくなびかなかったのでね。でも、それならそれで匂わせるだけでなく、もっとはっきり描けばいいのに。
動機はそれでいいとしても、「組織」から拳銃を都合してもらったり死体の掃除までしてもらったり、いったい彼は何者なの? 菅田が初めの一発を撃たなかったら彼は死んでいたし、そんなに名手ではないみたい。
最後の古川琴音もわからない。最初から菅田のクレジットカードが狙いだったというのはいいし、菅田は結構本気だったというのもわかる。でも、あんな群馬の山奥まで一緒に引っ越すだろうか?
銃撃戦
黒沢さんはかねてより、「アメリカ映画に一番影響を受けた」と言っています。その言葉通り、アメリカの銃撃戦を自らの血肉として、堂に入った銃撃戦を披露してくれます。
他にも素晴らしいショットを素晴らしい呼吸で編集した「これぞ活劇」といったシーンがたくさんありました。
だから残念なんですよね。もっと物語の背景や根っこの部分からもっと真剣になってほしかった。
だって、これじゃあ、ただの「銃撃戦をやりたかった自主映画」とどこが違うかわかりませんもの。
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