『コヴェナント 約束の救出』(2022、アメリカ)
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脚本:ガイ・リッチー、アイバン・アトキンソン&マーン・デイビス
監督:ガイ・リッチー
出演:ジェイク・ギレンホール、ダール・サリム、アントニー・スター、エミリー・ビーチャム


「通訳」という新しい素材
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実際に20年も戦争していたのに、こんないい方したら怒られるだろうけど、でも、この映画の作者たちは、「アフガン戦争における通訳」を素材にするという時点で「勝ったも同然」と快哉を叫んだんじゃないだろうか。他のアメリカ映画でも、アラブ人でアメリカ軍の味方をする通訳なんて出てこなかったし。

だから、作者たちは「アメリカ兵士」と「その通訳」の高らかな実話を映画にすればヒットするだろう、という思惑でこの映画を作ったに違いありません。まだアフガニスタンにひそんでいると言われる数千人もの元通訳たちには申し訳ないけど、映画には新鮮な素材が必要なんですよね。

しかし、である。


脚本構成
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ジェイク・ギレンホール演じるジョン・キンリー曹長の通訳が殺される。

アーメッドという名の新しい通訳が来る。

アーメッドの活躍、キンリー、彼を信用する。

タリバンとの戦闘。

キンリー、負傷する。

アーメッド、独りでキンリーを救出すべく、彼を載せた台車を引っ張る。

タリバンに見つかりそうになるが、アーメッドの活躍で血祭りにあげる。

米軍がやってきてアーメッドを拘束するが、負傷兵がキンリー曹長と判明し、キンリーとアーメッドは救出される

4週間後、キンリーはアーメッドが勲章よりビザをほしがっていることを知る。キンリーを救出した英雄として有名になってしまい、高額の賞金がかけられ、彼は家族とともにアフガニスタンのどこかに潜伏している。

キンリー、命の恩人であるアーメッドを救出すべく再びアフガニスタンへ赴く決意をする。


この物語の流れは自然だしドラマチックでもありますが、全編115分ほどなのに、ここまでで75分も使ってるんですよね。本筋のアーメッド救出に40分しか使えない。

三幕構成の言葉を使えば、ここがもうはやターニングポイント②です。

が、やはり、二人が米軍によって救出される場面がターニングポイント①でないといけないんじゃないでしょうか。

つまり、

キンリーとアーメッドとの出会いから、二人の救出。(第一幕)

4週間後、キンリーが再びアフガンへ赴く決意をする。キンリーと妻との葛藤。悩むキンリー。
結局、妻の「彼はあなたの命の恩人。彼にビザをあげてちょうだい」との理解ある言葉。
アフガニスタンに向かうキンリー。当地の司令官パーカーとの出会い。(なぜ偽名を使ったんだろう?)
アーメッドの弟に会うべく車を発車させる。弟と会うキンリー。なかなかアーメッドに会わせてくれない。
やっとアーメッドに会える。「ここらへんは犬が多いな」(←いいセリフ。いい再会の場面)(第二幕)

アーメッドを車に乗せて脱出。タリバンとの激しい銃撃戦。
パーカーが遣わした米軍の機銃掃射で難なくミッション・コンプリート。(第三幕)

というふうに、私なら構成しますね。

実際の映画は最後の銃撃戦が迫力はあるのにすぐ終わってしまうのでね。もうちょっと長く見せてほしかったな、というのが正直な感想です。

やっぱり、アーメッドがキンリーを救出したのはお話の前段なんだから、そこまでを75分もかけるなんていくら何でも時間かけすぎです。

これも手持ちカメラで撮られてましたが、そんなに揺れてなかったですね。それだけでもよかった。

でも、ケチつけたり、ほめたり、いろいろ気楽なことができるのはこの国がいま平和だから。戦争が始まればこんなことに時間費やしたりできない。

少しでも長く「戦前」の時間を長くして次世代にバトンタッチしたいものです。




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