山田尚子監督の新作というより、脚本家の吉田玲子さんの新作といいたい『きみの色』を見て、昔の出来事を思い出しました。
『きみの色』(2024、日本)
脚本:吉田玲子
監督:山田尚子
声の出演:鈴川紗由、髙石あかり、木戸大聖、戸田恵子、新垣結衣
主人公のトツ子をはじめ、登場人物の背景がとても薄く、なかなか乗れないというのは多くの人が言っているからいまさら私が言うことでもありません。ただ、きみちゃんが退学させられた理由はもっとはっきり語られるべきではないか、ということだけ言っておきます。
「歌うなら自分の歌を歌え」
思い出した昔のことというのは、十数年前、大阪の街頭でギターを弾きながらスピッツを歌っていた男を見たときのことでした。猛然と腹が立ち、当時やっていたミクシィにこんな日記を書きました。
「仮にもミュージシャンを目指したいのなら、なぜ他人の歌を歌うのか。もっと自分の歌を歌え」
すると、マイミクで「脚本家の卵」を自称する男(?)からこんなコメントがつきました。
「『学ぶ』というのは『真似ぶ』から来ています。他人の歌をまねすることはとても重要なことです。そこんとこよろしく」
私はさらに怒り狂い、
「しかしですね、それならそれで他人の歌を歌うのは自宅とか他の人に聞かれないところでだけやって、公衆の面前で歌うのは自分の歌だけにすべきではないですか」
と返そうと思ってやめた。
ツイッターをやっていたときもそうだったけど、不毛な誹謗中傷合戦はいやなので、頃合いを見計らって退散するのが私の流儀。負けと思われてもかまわない。
それはさて、『きみの色』の「しろねこ堂」と名付けられたバンドの3人はちゃんと自分の歌を歌ってますよね。それはとても好もしい。
でも、他人の歌は歌っていない。
自分たちの歌を作って演奏する前に、やっぱり他人の歌を真似ぶ必要はあったんじゃないか。
「他人の歌を真似べ」
ただ、他人の歌、たとえば、あいみょんとかYOASOBIとかの楽曲で練習したりすると、映画では使用料がかかる。それも有名なミュージシャンならかなりの額でしょう。いくらかは知らんが。
そういうそろばん勘定なしに映画は作れない。バンド活動ならタダでできるけど、映画は無理。億単位の博奕なのだから。
だから、他人の歌を真似ぶシーンが皆無なのは、そのへんの経済的事情が関与している可能性が高いけれども、それならもっと安い楽曲を借りるとか何かやりようがあったのではないか。
きみちゃんもトツ子もバンドは初めて。というか、ギターやピアノを弾き始めたばかり。そんな状態でオリジナル曲をいきなり作って演奏するというのは、やはり無理があると思う。
自分の歌を歌う。それはとても大事。『水金地火木土天アーメン』の歌なんてとても素敵。でもその前に、他人の歌を真似ぶ。これも大事。両方大事。そこんとこよろしく。
『きみの色』(2024、日本)
脚本:吉田玲子
監督:山田尚子
声の出演:鈴川紗由、髙石あかり、木戸大聖、戸田恵子、新垣結衣
主人公のトツ子をはじめ、登場人物の背景がとても薄く、なかなか乗れないというのは多くの人が言っているからいまさら私が言うことでもありません。ただ、きみちゃんが退学させられた理由はもっとはっきり語られるべきではないか、ということだけ言っておきます。
「歌うなら自分の歌を歌え」
思い出した昔のことというのは、十数年前、大阪の街頭でギターを弾きながらスピッツを歌っていた男を見たときのことでした。猛然と腹が立ち、当時やっていたミクシィにこんな日記を書きました。
「仮にもミュージシャンを目指したいのなら、なぜ他人の歌を歌うのか。もっと自分の歌を歌え」
すると、マイミクで「脚本家の卵」を自称する男(?)からこんなコメントがつきました。
「『学ぶ』というのは『真似ぶ』から来ています。他人の歌をまねすることはとても重要なことです。そこんとこよろしく」
私はさらに怒り狂い、
「しかしですね、それならそれで他人の歌を歌うのは自宅とか他の人に聞かれないところでだけやって、公衆の面前で歌うのは自分の歌だけにすべきではないですか」
と返そうと思ってやめた。
ツイッターをやっていたときもそうだったけど、不毛な誹謗中傷合戦はいやなので、頃合いを見計らって退散するのが私の流儀。負けと思われてもかまわない。
それはさて、『きみの色』の「しろねこ堂」と名付けられたバンドの3人はちゃんと自分の歌を歌ってますよね。それはとても好もしい。
でも、他人の歌は歌っていない。
自分たちの歌を作って演奏する前に、やっぱり他人の歌を真似ぶ必要はあったんじゃないか。
「他人の歌を真似べ」
ただ、他人の歌、たとえば、あいみょんとかYOASOBIとかの楽曲で練習したりすると、映画では使用料がかかる。それも有名なミュージシャンならかなりの額でしょう。いくらかは知らんが。
そういうそろばん勘定なしに映画は作れない。バンド活動ならタダでできるけど、映画は無理。億単位の博奕なのだから。
だから、他人の歌を真似ぶシーンが皆無なのは、そのへんの経済的事情が関与している可能性が高いけれども、それならもっと安い楽曲を借りるとか何かやりようがあったのではないか。
きみちゃんもトツ子もバンドは初めて。というか、ギターやピアノを弾き始めたばかり。そんな状態でオリジナル曲をいきなり作って演奏するというのは、やはり無理があると思う。
自分の歌を歌う。それはとても大事。『水金地火木土天アーメン』の歌なんてとても素敵。でもその前に、他人の歌を真似ぶ。これも大事。両方大事。そこんとこよろしく。
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