アポロ月面着陸のホントかウソかわからない裏話(たぶん半分はホント)を描いた『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』を見てきました。(以下ネタバレあり)


『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(2024、アメリカ)
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原案:ビル・キルスタイン&キーナン・フリン
脚本:ローズ・ギルロイ
監督:グレッグ・バーランティ
出演:スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、ウディ・ハレルソン、レイ・ロマノ


あおりか俯瞰か
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後半までずっと不満だったのは、「垂直」の構図がなかったことでした。

上の画像のように、被写体は垂直に上がっていくのに、それを見せる術として真横から取るという手法しかないのはいかがなものか、と。

月が地球から見てどの辺にあれば着陸にふさわしいのかは、宇宙物理学にはまっとく疎いので知りませんけど、少なくとも発射の時点でロケットは垂直に上がっていくので、垂直に見上げる(あおり)か、垂直に見下ろす(俯瞰)か、どちらかの映像がこの映画にはふさわしいと思いながら見てたんですが、まったくそのような画がない。


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せっかくスカーレット・ヨハンソンとチャニング・テイタムが飛行機に乗る場面があるのだから、垂直に見上げるとか、そういう映像があってしかるべきだと思ってたのに、ここでもそういうのはなかった。

と思ったら、ありました、ありました!

アームストロング船長の乗ったアポロ11号が打ち上げ10分前になったとき、ものすごい勢いでロケットの周りを旋回しながら、カメラが俯瞰でロケットを見下ろすショットがありました。

なるほど、あそこまで焦らそうとしてたわけね。正確には、ジョージア州の議員が出てくるところで、まだ製造中のロケットを俯瞰で撮ったショットがあったんですが、物語的にはあそこでああ撮らなくてもいい。やはり、打ち上げのときに待ちに待ったショットをもってきた。ハリウッド映画はこういうところが抜け目ないから好きです。


リアルかフェイクか
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政府関係者を演じるウディ・ハレルソンが、「これはもはや月に着陸できるかどうかというプロジェクトではない。ソ連との勝負なのだ」といって、月に着陸したと見せかけるフェイク映像を撮れとスカーレット・ヨハンソンに指示しますが、ここでヨハンソンがほとんど内面の葛藤を見せないのがなぜかわからなかったんですが、生き別れになった母親仕込みの詐欺のテクニックをもっていて、彼女はそうやって人を騙すことを商売に生きてきたことがあとになってわかって納得したのでした。

それはともかく……

フェイク映像を作っていたはずなのに、着陸する段になって、「本物を映そう」とウディ・ハレルソンへの反発なんでしょう、本物の月面着陸の映像を世界中に放送することにする。

が、あの伏線の匂いがプンプンしていた黒猫の再登場によって、いま自分たちが放送しているのがリアル映像なのかフェイク映像なのかわからなくなるというドタバタには笑い転げました。

もし画面にあの黒猫が映ってしまっていればNASAの、というか、アメリカ合衆国の威信が地に落ちていましたね。そうなれば世界情勢はどうなっていたか。それを想像するだけでもかなり面白い。


配役の妙
もうひとつ面白いと思ったのは、あの「この一歩は小さな一歩だが、人類にとって大きな一歩である」という名言で有名な、アームストロング船長をどの俳優が演じているのかよくわからなかったことです。

普通ならもう少しネームバリューのある役者に演じさせるじゃないですか。大きな役なんだし。それをその他大勢と同じに扱うというのが、この映画のアポロ計画へのスタンスが感じられてよかったです。

実直なNASAの技術屋のチャニング・テイタムを軸に、政府関係者でフェイク映像を撮れと命じるウディ・ハレルソンと、彼への反発心から大きな仕事をやってのけるスカーレット・ヨハンソン。これだけでこの映画はいけると踏んだ製作陣の英断ですね。


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あ、あと、主要人物で唯一実直なチャニング・テイタムの親友役のレイ・ロマノね。彼もまた実直を絵に描いたような人物で、いかにもチャニング・テイタムの友人という感じがしたし、馬鹿みたいなコメディを脇で引き締めてくれていました。彼は名もなきNASAの技術屋ですが、アームストロング船長よりもよっぽど大きな役。これがこの『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』のスタンスなんだよ、と監督以下スタッフが言っているように感じました。





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