さて、もうはや今年も半分が終わってしまいました。早くも夏ドラマの季節です。
例によって見始めた順に感想をつらつらと。
『僕の妻は感情がない』
人間の男が女性型家事ロボットに恋をして結婚する、という手垢にまみれた設定。
なぜそんなものを見始めたかというと、いま構想中の小説がまさに「手垢にまみれた設定」だから。どうやって古い革袋に新しい酒を入れるか、勉強させてもらおうと見始めました。
うん。何よりスピードがありますな。凡百の脚本家なら、家事ロボットが家にやってくるところから、つまり二人の出逢いから始めるところを、家事ロボットがすでに来ている、そして主人公がプロポーズする気満々にまで気持ちが高まっているところからスタートするのは、展開が速くてとてもいいと思いました。
なるほど、こういう感じで始めたらいいのか。目からウロコ。これは見続けたいですね。
『海のはじまり』
有村架純が出ているので見てみました。それと、脚本がいま大注目の生方久美さんなので。
しかし、うーん、まずこれは内容がどうのという前に、目黒蓮が口先だけでしゃべっているのがいただけません。声が小さいのです。他の役者は腹から声を出しているのに、彼だけ口先でしゃべっているから、声量が違いすぎてアンバランスです。音量を上げて見たら、さらにひどい。子役の女児ですら大きな声を出しているのに、録音技師も監督もなぜ何も言わなかったのか。
それから、これは例によって最近はやりの、初回だけ30分延長バージョンとかで、ただ、それに見合った内容ならいいんですが、30分経ってやっと古川琴音が妊娠中絶の申込用紙を目黒蓮につきつける。『僕の妻は感情がない』なら、15分でプロポーズです。スピード感がぜんぜん違う。ほんとはこの内容なら90分は必要ないでしょう。不要な「え?」という聞き返しが多いのはそのせいかと。無理やり会話を長引かせている気がしました。
それに、中絶用紙を突き付けられた目黒蓮が、「いつ妊娠がわかったの?」と訊いて、古川琴音が「一週間前」と答える。すると目黒蓮が「ごめんね。一週間も苦しめちゃってごめんね」というんですが、何だかあまりに「正しい」反応で興ざめしました。いつから映画やテレビドラマでは正しいことしか描いちゃいけなくなったのか。まったくもって嘆かわしい。
『新宿野戦病院』
これはもう、クドカン×小池栄子×仲野太賀という強力トリオなので今季一番楽しみにしていた作品です。
見てみて驚きました。『海のはじまり』へのアンチテーゼといえる作品だったので。
仲野太賀が働く歌舞伎町の救急病棟は大赤字のせいで駐車場にしたほうがいいという案が出ているほど。そこで院長の弟で経営を任されているらしい生瀬勝久は「新しい外科医を雇えなかったら駐車場だ!」と条件を出す。そこに小池栄子登場。日系アメリカ人のくせに岡山弁を流暢に話す彼女はアメリカの軍医であるが日本の医師免許はもっていない。
つまり日本において小池栄子はブラックジャックと同じくモグリの医者。つまり彼女を雇って医療行為をさせれば違法、つまり犯罪となる。しかし、違法行為へのバッシングがすさまじい日本で「犯罪」を主軸にしてドラマを成立させられるか、というのがクドカンの挑戦だったのだと思う。
クドカンは見事に成功した。違法滞在の難民を救うために小池栄子が執刀する。難民を助け、かくまうのは違法である。違法行為をなくすのではなく、逆に増やすことによって視聴者を納得させる。
専門学校時代、「矛盾が生じたら、矛盾をなくすのではなく、矛盾を高めなさい」と教えられたが、あれと同じようなものだろうか。
これは見続けたい。というか、ほぼ完走必至だと思う。塚地武雅のジェンダー問題でも、どういう解答を出してくれるのか楽しみ。無難な「正解」ではなく、不適切にもほどがある「不正解」を待っています!
蛇足ですが、小池栄子の英語がネイティブっぽくないとかいう文句が多数出ているそうですが、私はそんなのどうでもいいというスタンスです。リアリティがそんなに大事か? リアリティより、映画やテレビドラマに求められるのは「マジック」だと思う。
クドカン・マジックが今後どのように機能するのか、大期待!
『義妹生活』
親の再婚によって、学校一の美少女と義兄妹になるという手垢にまみれた設定。ですが、上述のとおり、勉強のために見てみました。
が、『僕の妻は感情がない』の広田光毅さんが脚本であるにもかかわらず、話にスピード感がありません。特に、義兄の主人公のナレーション、義妹のナレーションで始まるオープニングにはげんなりしました。あれではただの「説明」です。まぁアメリカ映画でも最近はナレーションで始まるものが多いのは確かですが。
それでも、後の展開もとてものろい。30分かかってほとんど何も語っていない。これでは勉強にならないので1話でリタイアします。
せめて、父親の「お父さん、再婚するんだ」というセリフから始まっていてくれたら、と残念です。
『青島君はいじわる』
中村アンが出てるので見始めました。
冒頭、いきなり中村アンが彼氏から「他に好きな人ができた」と別れ話を切り出され、彼氏なしの状態に陥る。このスピーディーな始まり方がとっても気に入りました。
そして、結婚式に彼氏ともども呼ばれていたため、会社内で女子から大人気の青島くんに「契約彼氏」になってほしいと頼む。いま彼女を作る気がない青島くんは「女除け」のためにすぐ受け入れる。これも展開が速い。
青島くんを演じる渡辺翔太は、最初は「何でこんなブサイクを起用したんだろう?」と不思議でしたが、話が進むごとに青島くんらしく見えてきたのでうれしかった。芝居がうまいのかな。目黒蓮と違って声も出てる。
ウソから出たマコト系のラブコメで、「契約彼氏」とかそういうのは手垢にまみれてますが、これもまた構想中の小説の勉強になりますな。
『現代誤訳』
ハライチの岩井勇気が脚本を書いていると聞いて興味をもちました。タイトルも面白そうだなと思って。(タイトルはとても大事ですよ)
が、これは「ドラマ=劇」ではなく、「コント」でした。だから芸人が書いているのか、と。
私が求めているものとはぜんぜん違うので、1話でリタイアです。
しかしながら、6本中3本がすごく面白いので、今季も豊作なんでしょうか。後半戦は、『南くんが恋人!?』『菜なれ花なれ』『GO HOME』などを見始める予定です。
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なぜそんなものを見始めたかというと、いま構想中の小説がまさに「手垢にまみれた設定」だから。どうやって古い革袋に新しい酒を入れるか、勉強させてもらおうと見始めました。
うん。何よりスピードがありますな。凡百の脚本家なら、家事ロボットが家にやってくるところから、つまり二人の出逢いから始めるところを、家事ロボットがすでに来ている、そして主人公がプロポーズする気満々にまで気持ちが高まっているところからスタートするのは、展開が速くてとてもいいと思いました。
なるほど、こういう感じで始めたらいいのか。目からウロコ。これは見続けたいですね。
『海のはじまり』
有村架純が出ているので見てみました。それと、脚本がいま大注目の生方久美さんなので。
しかし、うーん、まずこれは内容がどうのという前に、目黒蓮が口先だけでしゃべっているのがいただけません。声が小さいのです。他の役者は腹から声を出しているのに、彼だけ口先でしゃべっているから、声量が違いすぎてアンバランスです。音量を上げて見たら、さらにひどい。子役の女児ですら大きな声を出しているのに、録音技師も監督もなぜ何も言わなかったのか。
それから、これは例によって最近はやりの、初回だけ30分延長バージョンとかで、ただ、それに見合った内容ならいいんですが、30分経ってやっと古川琴音が妊娠中絶の申込用紙を目黒蓮につきつける。『僕の妻は感情がない』なら、15分でプロポーズです。スピード感がぜんぜん違う。ほんとはこの内容なら90分は必要ないでしょう。不要な「え?」という聞き返しが多いのはそのせいかと。無理やり会話を長引かせている気がしました。
それに、中絶用紙を突き付けられた目黒蓮が、「いつ妊娠がわかったの?」と訊いて、古川琴音が「一週間前」と答える。すると目黒蓮が「ごめんね。一週間も苦しめちゃってごめんね」というんですが、何だかあまりに「正しい」反応で興ざめしました。いつから映画やテレビドラマでは正しいことしか描いちゃいけなくなったのか。まったくもって嘆かわしい。
『新宿野戦病院』
これはもう、クドカン×小池栄子×仲野太賀という強力トリオなので今季一番楽しみにしていた作品です。
見てみて驚きました。『海のはじまり』へのアンチテーゼといえる作品だったので。
仲野太賀が働く歌舞伎町の救急病棟は大赤字のせいで駐車場にしたほうがいいという案が出ているほど。そこで院長の弟で経営を任されているらしい生瀬勝久は「新しい外科医を雇えなかったら駐車場だ!」と条件を出す。そこに小池栄子登場。日系アメリカ人のくせに岡山弁を流暢に話す彼女はアメリカの軍医であるが日本の医師免許はもっていない。
つまり日本において小池栄子はブラックジャックと同じくモグリの医者。つまり彼女を雇って医療行為をさせれば違法、つまり犯罪となる。しかし、違法行為へのバッシングがすさまじい日本で「犯罪」を主軸にしてドラマを成立させられるか、というのがクドカンの挑戦だったのだと思う。
クドカンは見事に成功した。違法滞在の難民を救うために小池栄子が執刀する。難民を助け、かくまうのは違法である。違法行為をなくすのではなく、逆に増やすことによって視聴者を納得させる。
専門学校時代、「矛盾が生じたら、矛盾をなくすのではなく、矛盾を高めなさい」と教えられたが、あれと同じようなものだろうか。
これは見続けたい。というか、ほぼ完走必至だと思う。塚地武雅のジェンダー問題でも、どういう解答を出してくれるのか楽しみ。無難な「正解」ではなく、不適切にもほどがある「不正解」を待っています!
蛇足ですが、小池栄子の英語がネイティブっぽくないとかいう文句が多数出ているそうですが、私はそんなのどうでもいいというスタンスです。リアリティがそんなに大事か? リアリティより、映画やテレビドラマに求められるのは「マジック」だと思う。
クドカン・マジックが今後どのように機能するのか、大期待!
『義妹生活』
親の再婚によって、学校一の美少女と義兄妹になるという手垢にまみれた設定。ですが、上述のとおり、勉強のために見てみました。
が、『僕の妻は感情がない』の広田光毅さんが脚本であるにもかかわらず、話にスピード感がありません。特に、義兄の主人公のナレーション、義妹のナレーションで始まるオープニングにはげんなりしました。あれではただの「説明」です。まぁアメリカ映画でも最近はナレーションで始まるものが多いのは確かですが。
それでも、後の展開もとてものろい。30分かかってほとんど何も語っていない。これでは勉強にならないので1話でリタイアします。
せめて、父親の「お父さん、再婚するんだ」というセリフから始まっていてくれたら、と残念です。
『青島君はいじわる』
中村アンが出てるので見始めました。
冒頭、いきなり中村アンが彼氏から「他に好きな人ができた」と別れ話を切り出され、彼氏なしの状態に陥る。このスピーディーな始まり方がとっても気に入りました。
そして、結婚式に彼氏ともども呼ばれていたため、会社内で女子から大人気の青島くんに「契約彼氏」になってほしいと頼む。いま彼女を作る気がない青島くんは「女除け」のためにすぐ受け入れる。これも展開が速い。
青島くんを演じる渡辺翔太は、最初は「何でこんなブサイクを起用したんだろう?」と不思議でしたが、話が進むごとに青島くんらしく見えてきたのでうれしかった。芝居がうまいのかな。目黒蓮と違って声も出てる。
ウソから出たマコト系のラブコメで、「契約彼氏」とかそういうのは手垢にまみれてますが、これもまた構想中の小説の勉強になりますな。
『現代誤訳』
ハライチの岩井勇気が脚本を書いていると聞いて興味をもちました。タイトルも面白そうだなと思って。(タイトルはとても大事ですよ)
が、これは「ドラマ=劇」ではなく、「コント」でした。だから芸人が書いているのか、と。
私が求めているものとはぜんぜん違うので、1話でリタイアです。
しかしながら、6本中3本がすごく面白いので、今季も豊作なんでしょうか。後半戦は、『南くんが恋人!?』『菜なれ花なれ』『GO HOME』などを見始める予定です。
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