昨日最終回を迎えた『アンチヒーロー』、何ともげんなりするクライマックスでした。


antihero

前回、大島優子が衝撃の裏切りを見せて逮捕された長谷川博己。どうなるかと思ったら、大島優子が裏切ったというのはフェイクで、実は木村佳乃とつながっていたのですね。

まず、敵のうちに裏切り者がいて主人公を利するというのは単純につまらないです。どうしたって主人公が勝てるから。やはり、大島優子の裏切りは本当で、そこから長谷川博己や北村匠海がどう打開するかを見たかった。

それ以上に問題なのは……


antihero3

かつて『L.A.コンフィデンシャル』という映画がありました。

適当に刑事をやっているケビン・スペイシーが、重要な証拠を握ったとき、黒幕に撃たれるんですが、複雑に絡み合った問題の諸相を、黒幕の「個人悪」に帰してしまう最悪の瞬間でした。

それと同じことがこの『アンチヒーロー』にも言えます。

長谷川博己が闘うべき相手は検察庁のはずです。1話2話で出てきた検事も証拠の捏造をしていた。検察という組織そのものが腐っているのです。それは元検事の長谷川博己が一番よくわかっているはず。

なのに、彼は野村萬斎を叩き潰すことしか考えていない。野村萬斎さえ潰せば……事態は『L.A.コンフィデンシャル』と同じです。複雑な「組織」と戦うべきなのに、そのなかに巣食う「個人」と戦うのは筋違いというものです。

しかも、野村萬斎を裏切った木村佳乃は、検事総長もその事実を知っているという。主人公が倒すべき相手組織の長まで寝がえり、主人公を利する。噴飯ものです。

おそらく長谷川博己は、緒方直人を救うことで頭がいっぱいで、そのために野村萬斎を倒さねばということしか見えなくなっている。野村萬斎一人を追放したところで、組織そのものが腐っているのだから、第二第三の緒方直人が出てくるのは必定。緒方直人一人救ってめでたしめでたしというのは、あまりにそれこそおめでたい話じゃありませんか。

そりゃ組織と戦って勝てるかといえば勝算はあまりないでしょうが、そういう問題ではないでしょう。

それから……


antihero2

岩田剛典はなぜ長谷川博己に利用されていると知ってて引き受けたんでしょうね。一文の得にもならないのに。

というか、それ以上に、長谷川博己は「犯罪者」というものにあまりに厳しすぎないでしょうか。「犯罪者とはそういうものです」などと言ってましたが、自分が自白を強要した死刑囚の再審請求を勝ち取るために、一人の犯罪者を利用する。どうにも解せません。

私は、犯罪者にも犯罪者じゃない者にも三分の理、と思っているので、この合法か違法かで人を分ける明墨という人間の思想にはまったく相容れません。

というわけで、まったく乗れなかった最終回でした。

妄言多謝





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