『拳銃貸します』(1942、アメリカ)
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原作:グレアム・グリーン
脚本:W・R・バーネット&アルバート・マルツ
監督:フランク・タトル
出演:アラン・ラッド、ヴェロニカ・レイク、ロバート・プレストン、レアード・クリーガー、タリー・マーシャル

(以下ネタバレあります。ご注意ください)

物語は一見複雑だが……
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フランク・タトル監督によるアラン・ラッド初主演の『拳銃貸します』は、一見複雑な物語ですけど意外にシンプルな筋立てとなっています。

殺し屋のアラン・ラッドが、依頼主からある書類を脅迫者から取り返せと言われ、見事取り返す。その報酬にもらった10ドル紙幣が別の強盗事件で盗まれたものでナンバーを控えられており、アラン・ラッドは警察から追われる身となります。

警察から逃げ、かつ、自分を罠にはめた依頼主を追うべく深夜鉄道に乗り込むラッド。そこで妖艶な美女ヴェロニカ・レイクと知り合います。彼女はマジシャンを装ってますが、実はナチスのスパイを暴くための活動をやっている。

最終的に明らかになるのは、アラン・ラッドが追っている依頼主と、ヴェロニカ・レイクが暴こうとしている売国奴の正体がまったく同じ人物だということです。あまりにあんまりな偶然ですね。これを理由にこの映画を駄作だと難じる人もいそうです。

でも、私はそうは思いません。確かに偶然はよくないが、この映画はそれを補ってあまりある「テーマの追求」があるからです。


大きな物語とストーリーフォーカス
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実は、上に記したあらすじは、俗に「ストーリーフォーカス」と呼ばれるものです。

その前に「大きな物語」の話をしましょう。

殺し屋が売国奴を成敗する物語の背後にある、もっと大きな物語の存在。

この『拳銃貸します』の場合は、第二次世界大戦ですよね。そしてそれは、連合国が枢軸国を打ち負かす物語です。

ナチスや大日本帝国が悪の枢軸国、アメリカやイギリスをはじめ枢軸国を倒すべく立ち上がったのが連合国です。神話的に言えば、枢軸国はアンチヒーローの下降側の国々、連合国は上昇側のヒーローの国々となります。

さて、この映画でナチスと通じ、日本に毒ガスの化学式を売りつけようとしている黒幕はアメリカ人。つまり、売国奴です。売国奴をやっつけるのですから、アラン・ラッドやヴェロニカ・レイクは愛国者となります。この映画の中心にある「追及される価値」は、だから「愛国心」となります。


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アラン・ラッドは一介の殺し屋にすぎないので愛国心とは関係ないはずが、最後にヴェロニカ・レイクが愛国心ゆえの活動をしていると知って自分の身を犠牲にして売国奴をやっつけることに成功します。

ここなんですよね。

上述のあらすじで、アラン・ラッドとヴェロニカ・レイクが同じ標的を追っていると判明すると書きましたが、そうではなく、同じ「追及される価値」=愛国心を抱いていたのが最後で判明するところに感動するのです。

愛国心はあくまでも「大きな物語」のテーマでした。それが、「ストーリーフォーカス」の上でも重要なテーマとなる瞬間がこの映画の結末です。

前景の物語と、背後にある絶対的に大きな物語との接合。これを80分でやってしまうんですから、当時のハリウッドはやっぱりすごかったんですね。




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