『アイアンクロー』(2023、アメリカ)
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脚本・監督:ショーン・ダーキン
出演:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン、スタンリー・シモンズ、ホルト・マッキャラニー、モーラ・ティアニー、リリー・ジェームズ

(以下ネタバレあり)


親ガチャ=名字ガチャ
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1970年代から80年代にかけて活躍した実在のプロレスラー、ケビン・フォン・エリックを主人公とした物語。

以下が家族一覧です。

父:フリッツ
母:ドリス
長男:ジャック・ジュニア
次男:ケビン
三男:デビッド
四男:ケリー
五男:マイク

長男のジャック・ジュニアは主人公の次男ケビンが5歳の時に死亡しており、実質的には四人兄弟で、ケビンが長男的役割をこなしています。

父のフリッツがなかなかに強権的な父親で、自身がプロレスラーだったから息子も全員プロレスラーになった、という感じ。なったというか、ならせた。四男のケリーなんかは円盤投げでモスクワオリンピックを目指していたのに、国がボイコットを表明すると、父親から「お前もプロレスをやれ。強制はしない」と言って強制するのです。ケリーは「お父さん、ありがとう」みたいな感じで受け答えしてるけど、あまり乗り気じゃない感じ。でも、やっぱり父親の言うとおりにプロレスをやる。父親が怖いのか。怖いんだろうけど、あまり突っ込んだ描写がなされないのではっきりとはわからない。

三男デビッドが日本ツアーの際に、腸が破裂して死んだのを皮切りに、ケリーもマイクも自殺してしまう。二人の自殺の理由もはっきりとは描かれません。

でも、ケビン以外の3人が死んだときに共通するのは、「呪いだ」というケビンの一言。

フォン・エリックという名字はもともと父親の母親、つまり、ケビンから見れば祖母の名字で、出生時は普通に祖父の名字を名乗っていたらしい。それを父親が祖母の名字に変えた。祖母の家系は不幸の多い家系だったから、その「呪い」が自分たちを襲っているとケビンは言います。


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昨日、『親ガチャの哲学』という本を読んだのですが、ケビンの考え方は「名字ガチャ」ですよね。でも、その名字は他でもない父親が変えてそうなったものだから、やはり「親ガチャ」なのか。

すべてを名字の呪いのせいにするケビンは、なんだか哀れです。

それよりも……


名字を変えた理由は?
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名字を変えた理由も明示されませんが、父フリッツは祖父が嫌いだったんですかね。

ケビンたちがフリッツを恐れているように、フリッツも彼の父親に強権的に支配されていたのかもしれない。

でも、これは推測にすぎません。そういう大事なところはちゃんとセリフで説明するなり何なり、ちゃんと明示してほしいです。

父親と息子の葛藤という古くて新しいテーマの映画ですが、必要な情報量がぜんぜん足りないと思いました。


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親ガチャの哲学(新潮新書)
戸谷洋志
新潮社
2023-12-18


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