私が通っていた映画美学校の製作作品、37分の短編『天使の欲望』をU-NEXTにて鑑賞しましたが、あまりに安易な結末のつけ方を見て筆を執りました。(以下ネタバレあり)
『天使の欲望』(2013、日本)
脚本・監督:磯谷渚
出演:本間玲音、柳英里紗緒、中谷仁美、相馬有紀実
登場人物はいろいろ出てきますが、メインの葛藤をなすのは以下の二人のみ。
百合子……転校生。父親に犯されそうになって死なせたことがあり、「親殺し」と噂されている。
沙織……痴漢されたくて「痴漢電車」と噂されている花川線に乗っている。
見事なドラマ設定
百合子は男を敵と思っていて、なかでも、自分が被害に遭ったように、女を自分の持ち物のように扱うレイプ犯や痴漢が大嫌い。カミソリを持ち歩いており、転校初日の花川線で、痴漢されていた沙織を助けるときにも平気で男の腕をカミソリで切る。
同じクラスになった二人は、さらに別の二人の仲間も得て、四人で花川線で「痴漢狩り」を始める。痴漢する男を百合子直伝の関節技で捕らえ、警察に届けようとする。が、男たちは金で解決しようとしたり、「女なんか触られねえと価値ねえんだよ!」などといきがる。
沙織が、花川線で赤い本をもっていると「痴漢OK」という意味だと知っててそうしていたと百合子が知る。沙織は自分たちの仲間ではなく、男たちのイヌだったんだ、と愕然となる。
冷静さを失った百合子は、沙織と肉体関係になった不良グループのリーダーの頸動脈を切って殺し、あまりのことに追いかけてきた沙織の前で線路に飛び込んで死ぬ。
安易は、あまりにも安易な
という結末なんですが、あまりに安易じゃないですかね? 正義漢面して痴漢狩りをやっているだけで犯罪組織の人間じゃないんだから、あんな簡単に人を殺したりしないでしょう。
確かに父親は殺したというか、犯されそうになったときに父親の頭にテレビが落ちて死んでしまった。そのときの心の傷が百合子を絶望させたのかもしれないが、死にたい人間が痴漢狩りなんかするだろうか?
死に場所を探していたからカミソリを持ち歩いていた? うーん、わからんではないけど、やっぱりまだ16,17の女子高生があまりに簡単に人を殺したり、あまりに簡単に自殺したり、ちょっともったいない。
というか、ただ痴漢狩りして男たちの勝手な言い分を聞かされるだけなら少しも面白くないけど、この映画は素晴らしい葛藤を用意していますよね。
百合子と沙織。
この二人は、男を敵と憎む百合子と、男のイヌとして生きることを決めた沙織という、完全に相容れない二人じゃないですか。親友になりかけながら、対極の思想の持ち主だったところがこの物語の勘所というか、すごく面白いところなのに、あんなに簡単に百合子が死んじゃったらすべて雲散霧消してしまって、すごくもったいない。
作者は、自分が作った素晴らしい設定を大事にしていない。それは百合子が簡単に自殺するような、自分を大事にしていない主人公だというところにも通じるでしょう。
私も「面白い設定を活かせていない」と言われたことが何度もあって、いや、だからこそこれだけ熱っぽく言うのですが、せっかく面白いドラマの種を生み出せたのなら、それを活かしきってほしい。
作者の製作態度に、自戒をこめて「喝!」と言いたい。
『天使の欲望』(2013、日本)
脚本・監督:磯谷渚
出演:本間玲音、柳英里紗緒、中谷仁美、相馬有紀実
登場人物はいろいろ出てきますが、メインの葛藤をなすのは以下の二人のみ。
百合子……転校生。父親に犯されそうになって死なせたことがあり、「親殺し」と噂されている。
沙織……痴漢されたくて「痴漢電車」と噂されている花川線に乗っている。
見事なドラマ設定
百合子は男を敵と思っていて、なかでも、自分が被害に遭ったように、女を自分の持ち物のように扱うレイプ犯や痴漢が大嫌い。カミソリを持ち歩いており、転校初日の花川線で、痴漢されていた沙織を助けるときにも平気で男の腕をカミソリで切る。
同じクラスになった二人は、さらに別の二人の仲間も得て、四人で花川線で「痴漢狩り」を始める。痴漢する男を百合子直伝の関節技で捕らえ、警察に届けようとする。が、男たちは金で解決しようとしたり、「女なんか触られねえと価値ねえんだよ!」などといきがる。
沙織が、花川線で赤い本をもっていると「痴漢OK」という意味だと知っててそうしていたと百合子が知る。沙織は自分たちの仲間ではなく、男たちのイヌだったんだ、と愕然となる。
冷静さを失った百合子は、沙織と肉体関係になった不良グループのリーダーの頸動脈を切って殺し、あまりのことに追いかけてきた沙織の前で線路に飛び込んで死ぬ。
安易は、あまりにも安易な
という結末なんですが、あまりに安易じゃないですかね? 正義漢面して痴漢狩りをやっているだけで犯罪組織の人間じゃないんだから、あんな簡単に人を殺したりしないでしょう。
確かに父親は殺したというか、犯されそうになったときに父親の頭にテレビが落ちて死んでしまった。そのときの心の傷が百合子を絶望させたのかもしれないが、死にたい人間が痴漢狩りなんかするだろうか?
死に場所を探していたからカミソリを持ち歩いていた? うーん、わからんではないけど、やっぱりまだ16,17の女子高生があまりに簡単に人を殺したり、あまりに簡単に自殺したり、ちょっともったいない。
というか、ただ痴漢狩りして男たちの勝手な言い分を聞かされるだけなら少しも面白くないけど、この映画は素晴らしい葛藤を用意していますよね。
百合子と沙織。
この二人は、男を敵と憎む百合子と、男のイヌとして生きることを決めた沙織という、完全に相容れない二人じゃないですか。親友になりかけながら、対極の思想の持ち主だったところがこの物語の勘所というか、すごく面白いところなのに、あんなに簡単に百合子が死んじゃったらすべて雲散霧消してしまって、すごくもったいない。
作者は、自分が作った素晴らしい設定を大事にしていない。それは百合子が簡単に自殺するような、自分を大事にしていない主人公だというところにも通じるでしょう。
私も「面白い設定を活かせていない」と言われたことが何度もあって、いや、だからこそこれだけ熱っぽく言うのですが、せっかく面白いドラマの種を生み出せたのなら、それを活かしきってほしい。
作者の製作態度に、自戒をこめて「喝!」と言いたい。
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