『お熱いのがお好き』(1959、アメリカ)
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脚本:ビリー・ワイルダー&I・A・L・ダイアモンド
監督:ビリー・ワイルダー
出演:ジャック・レモン、トニー・カーティス、マリリン・モンロー、ジョージ・ラフト


『天使にラブ・ソングを…』(1992、アメリカ)
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脚本:ジョゼフ・ハワード
監督:エミール・アルドリーノ
出演:ウーピー・ゴールドバーグ、ハーベイ・カイテル、マギー・スミス、ビル・ナン


以下いきなりネタバレしてます。ご注意ください。


ラストシーンは憶えていても
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『お熱いのがお好き』の結末はとても有名です。女装したジャック・レモンに惚れた大富豪が、「俺は男だ!」とレモンが白状しても、「完全な人間はいないよ」と軽く受け流す爆笑シーンで幕を閉じます。

だからなのか、この映画が、レモンとトニー・カーティスの二人がギャングに命を狙われ、何とか逃げようとする「サスペンス」であることをほとんどの人が忘れているようです。

三谷幸喜なんかもこの映画の特に結末のセリフを挙げて「コメディとして最高」と言いますが、それは否定しませんし、その通りだと思うものの、この映画ではコメディ、つまり女装の面白さはサブプロットにすぎず、メインプロットはギャングから命を狙われるサスペンスであることにはいっさい言及しないことに、どうにもモヤるのです。


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開巻早々、「1929年シカゴ」と時代と舞台が明かされます。あのアル・カポネがいたころの禁酒法時代のシカゴですね。ジョージ・ラフトがカポネをモデルとしているのは明らかです。ジャック・レモンとトニー・カーティスはカポネに命を狙われているのです。絶体絶命のピンチです。

でも、コメディ・パートが抜群の面白さだからか、誰も彼もジョージ・ラフトの存在を忘れてしまっているようです。


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それは『天使にラブ・ソングを…』でも同じで、ウーピー・ゴールドバーグが聖歌隊に入ってからのミュージカル・パートがあまりに楽しいからか、ウーピーがハーベイ・カイテル演じる愛人にしてギャングの親玉から命を狙われていることを忘れてしまっている人が多いようです。命を狙われたから彼女は警察に助けを求め、刑事から修道院を紹介されるんですがね。

この2本の映画は、ごく簡単に要約すれば、

「ギャングから命を狙われた主人公が、それまでとはあまりに不似合いな組織に潜入し、そこで人気者となり、それが彼/彼女自身の命を助ける」

というものになりましょう。まったく同じ物語です。

ただ、細かいことを言えば、2本ともメインプロットとサブプロットがほぼ同時に解決するとはいえ、『天使にラブ・ソングを…』のほうが、2つの解決(ハーベイ・カイテルの逮捕と、ウーピーと確執関係にあったマギー・スミス院長との和解)がほとんど同時にきて、まさに言葉通りの「大団円」となるところが、小さいけれど大きな違いとなりましょうか。

『お熱いのがお好き』ではコメディ・パートとサスペンス・パートが完全に融合しきれていない憾みが残ります。脚本だけ見るなら『天使にラブ・ソングを…』のほうに軍配を上げますね。

ただ、続編の『天使にラブ・ソングを…2』になると、肝心要のサスペンス要素がほとんどなくなるんですよね。札付きの高校生たちを改心させて州の合唱コンクールで優勝させる物語自体は面白いものの、前作ではサブプロットだった部分をメインにしているわりにはとんとん拍子に事が進んであまり面白くない。

逆に、1作目ではウーピーたちの聖歌隊が素晴らしいと評判になったためにハーベイ・カイテルに察知されて窮地に陥るんですが、2作目ではウーピーが修道女ではなく、ラスベガスで歌っていた歌手だとばれても、敵だったはずの神父たちが一致協力してウーピー追放を目論むジェームズ・コバーン理事長を物置に監禁したり、サスペンス色がまったくといっていいほどなくなってしまい、ハラハラドキドキの要素が皆無なのが残念。

それはやはり、聖歌隊に関するお話がサブプロットにすぎなかったことを忘れたためじゃないでしょうか。

プロデューサーは2作とも、キャンセル・カルチャーのためにハリウッドを追放されたとはいえ、辣腕で知られたスコット・ルーディン。信じられない。


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お熱いのがお好き
ジャック・レモン
2019-07-22



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