後半戦です。例によって見始めた順に感想をつらつらと。
『いちばんすきな花』
男女の間に友情は成立するかという古くて新しいテーマを描く作品。
まず何よりも役者のアンサンブルがいいんじゃないでしょうか。多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠が職業も性格、考え方も何もかも違う男女を好演。人物設定を多彩にするのは鉄則ですけど、とても丁寧に造形されていると感じました。さすがヤングシナリオ大賞を受賞してすぐ連ドラのライターに抜擢された脚本家の作品のことだけはありますな。
撮り方も、フィックスばかりで手持ちは一回もなかったんじゃないかしら。好感がもてます。
2話まで見て、「かみ合わない会話がネットで話題!」とかいうニュースを見ましたが、それには大いに疑問。
確かに現実にああいう会話はあるでしょうけど、フィクションでああいうのは「あざとい」と思う。当然のことながら現実と虚構は違います。虚構における「会話のリアル」はまた別にあると思う。
それと、自分のクラスで勉強できない塾生に「席があるならクラスに行ってもいかなくてもどっちでもいいんじゃない?」と言った多部未華子が、松下洸平の家で再度集まるシーンで神尾楓珠から「そこ、ゆくえちゃんの席ですよ」と言われて「自分の席があるんだ」と感激するのは、これまたちょいとあざとくないでしょうか。見ててすごく恥ずかしかった。
普通ならここでリタイアするところですが、この作品には何か別の魅力がある。うまく言えない何かが。2話には出てこなかった仲野大賀も気になるし3話も見ます。彼、好きなんですよ。いい柄してると思う。
内容が目当てなのはもちろんですが、今田美桜のおっぱいもね。ふふふ。たぶん、私は女性との間に友情なんか成立させられないでしょうな。ははは。
『すべて忘れてしまうから』
初回でほとんど何もお話が展開せずイライラしましたが、阿部ちゃんの新作だし、我慢して2話目も見ました。
うーん、、、リタイアを決意しました。
話の関節を外そう外そうとすること自体は大歓迎なのだけど、ちょいと外しすぎじゃないですかね? 背後関係とかよくわからない。いったい何についての話なの? というか誰についての話? そこからしてもうわからない。もっと丁寧な描写を積み重ねてほしいです。
『単身花日』
重岡大毅が好きなので見始めました。
妻子持ちの重岡大毅が故郷の鹿児島に単身赴任で帰り、そこで人妻になっている初恋の人・新木優子とのダブル不倫が描かれます。
初恋の人と再会するとか、ダブル不倫とか、いまさらな題材ですが、それはまぁいいでしょう。
しかし、ちょいと偶然が多すぎやしませんかね?
新木優子とは、鹿児島に着いてすぐ空港の近くですれ違い、家の近くのスーパーで久しぶりの会話をし、またどこかの公園か何かで再会する、という偶然のオンパレード。スーパーの再会のあと、新木優子は旧友に「同窓会やろう」ともちかけているので、そこですぐ同窓会になってもよかったんじゃないでしょうか。
ここでリタイアしようか、とりあえず2話も見るか迷った結果……リタイアを決意。とても完走する自信がないのでここで終わりにしようと。
『ミワさんなりすます』
あらすじを読んだら面白そうなので見てみました。
やはり「ウソ」を起爆剤に駆動される物語は面白いですね。いつか露見するだろうという期待と、それまでのハラハラドキドキというサスペンスがあって。
29歳になるまで映画鑑賞一筋で生きてきたオタク道まっしぐらな主人公が自分に重なってしまい、応援したくなる。いまでこそ「オタク」というと市民権を得たみたいになってるけど、それは普通に社会生活を送っていたらの話であって、松本穂香演じる主人公みたいに何の資格もなく何の取り柄もない人間(それは私のことでもある)がオタクというのは「痛い」ものなのでしょう。だからこそ、「オタクも悪くないよね」という地平を切り拓いてほしいと切に望みます。最後で「オタクやめます」なんてのだけはやめてね。応援してます。
『コタツがない家』
天才・小池栄子が民放連ドラ初主演作ということで見始めました。別にそんな記念作でなくても小池栄子が出てるなら見るけど。
これが私的には今クール最大の収穫! まだ1話だけど、圧倒的に面白い。
ウェディングプランナーとして有名なのに自分の結婚生活は土壇場を迎えている小池栄子。夫は崖っぷちのマンガ家で、一人息子はぐれかかっている。父親は母親(つまり妻)に捨てられ熟年離婚。何と小池栄子の家に「この家の頭金を払ったのは俺だ!」と転がり込んできた。
夫の吉岡秀隆は編集者・北村一輝(作家のほうが敬語なのはなぜ? 次週あたりに説明があるのかな)にそそのかされて「離婚しなよ。離婚するまでをマンガにすればいいんだよ」という言葉を実行しようとしている。父の小林薫は母の高橋惠子に完全に見捨てられているけど、作り手としては、両親夫婦と小池夫婦の双方を対照的に描くことで「結婚」あるいは「夫婦生活」ひいては「家族」なるものを多角的に描くことが主眼なのでしょう。これぞホームドラマの王道ですよ! 私がテレビドラマに求めるのはこういうのです。
『いちばんすきな花』とは対極の「作りこまれたセリフ」のオンパレードですけど、フィクションにおける「リアルな会話」ってこれだと思う。
気になるのは、小池の顧客で「結婚したいんじゃなくて結婚式をしたいだけ」と言ってた人がいたけど、なるほど確かに「結婚」と「結婚式」はぜんぜん違う。はたして小池栄子の職業をウェディングプランナーに設定したのははたして正解だったのかどうか。ちょいと心配。
それにつけても小池栄子! 第1話はそれほど見せ場がないなぁと残念に思っていたら、最後にありましたね。夫や父親に向けて悪口雑言を投げつけたあとに泣いてしまう場面。彼女はとにかく涙の見せ方がうまい。同じ脚本家・金子茂樹さんの『俺の話は長い』で生田斗真相手に説教したあとに涙をポロポロこぼすシーン、いまでも脳裏に焼き付いています。
それと、中島悟監督に関して。
前述の『俺の話は長い』も中島監督がメインディレクターだったと記憶していますが、『俺の話は長い』もこの『コタツがない家』も、家の中の空間の撮り方がうまいというか、そもそものセットの造りがとてもいいんじゃないでしょうか。
かなり広い家で、リビングの向こうには階段、サンルーム、和室がありました。光の加減から見て、スタジオ内に建てたセットではなくロケセットのようですが(いやもしかしたらセットなんだろうか。日光がやたら強烈だったけど)いい家を見つけてきましたね。あの家を見つけてきて、さらに主演に小池栄子が決定した時点で「勝ったも同然」と思いますが、広い空間を活かした見せ方、特にカメラを引いたときの構図がとてもいいと唸りました。
これはもう完走確定でしょう。もはや問題は「今年の何番目か」でしょうな。(しかし「コタツがない家」とはどういう意味だろうか。小池の後輩・ホラン千秋の家にはコタツがあったが……?)
『ケンシロウによろしく』
バカリズム脚本によるDMM.TV配信作品。
母親が失踪した原因のヤクザに復讐するため、北斗神拳をマスターし、ツボというツボに精通しながらも、友達なし、彼女なしの主人公に松田龍平。ユリアよろしく彼を温かく見つめる助手に西野七瀬。
あの主人公を一番自然に演じられるのは松田龍平だけだと思うし、西野七瀬はやはりどの作品で見ても凡百の女優とは一味も二味も違う。元トップアイドルだけあって、自分の見せ方を心得てるんでしょうな。
話はバカバカしすぎるほどバカバカしいけど、外連味たっぷりで面白い。映画でこれだと結構しんどいと思うけど、テレビシリーズでこれなら大歓迎。『コタツがない家』とは真逆だけど、これぐらい振り切れたバカバカしさも好き。
来週で最終回。復讐の結末も気になるところだけど、斉木しげるに援助を打ち切られた松田龍平がどう自分の人生を再構築していくのかも気になるところ。
このドラマは「復讐」を扱っているけれど、最終的に主人公の「生活」を扱うことになるのではないか。バカバカしいことこの上ないこの作品の根底には「生活者の目線」があって、それが好もしいし、それがバカリズム作品の魅力の源泉ではないかと思いました。
結局、この『ケンシロウによろしく』は、『ミワさんなりすます』と同じ問題を扱ってるわけですよね。映画オタクと復讐オタクの差こそあれ、何かに熱中しすぎて人生を誤ってしまった人間の再生の物語。西野七瀬と結婚とか、そんなラストだけはやめてほしいけど、バカリズムのことだからそんな凡百な結末はまったく頭をかすめたりしないんでしょうな。彼我の差はこういうところに表れる。
『薬屋のひとりごと』
うーん、よく日本のアニメでありますよね。あれは手塚治虫がやり始めた手法なのか、シリアスな内容でも時折コミカルな描写があって、画調が変わるアレ。手塚治虫なら『ブラックジャック』で多用してたし、最近のアニメでも『鬼滅の刃』でありますよね。
この『薬屋のひとりごと』でも同じような描写がありますが、ないほうがよくないですか? シリアス一辺倒のほうがいいように思いました。鬼退治の物語『鬼滅の刃』でもギャグはいい感じにはまってたと思いますが、この作品ではコミカルがメインプロットの流れを寸断しているように感じました。
他にも思うところがありますが面倒くさいのでいちいち言いません。一挙放映された3話でリタイアを決意。
『たとえあなたを忘れても』
神戸が舞台ということで見てみました。
まず、なぜ関西弁をしゃべってる人が一部だけで、あとの人は標準語なんでしょうか。中途半端なことをするくらいなら全員標準語でよかったのでは? 神戸っ子としてはちゃんと全員が神戸弁をしゃべってほしいですが。
それから、堀田真由が目を動かしすぎです。目は口ほどに物をいうとは言うけれど、目に芝居させすぎ、しゃべらせすぎです。萩原莉久との会話中、堀田真由は目を動かしすぎだし、まばたきしすぎだと思いました。たまに、萩原莉久をまっすぐ見つめたり、虚空を見つめたりしていたけど、そういうほうが「物を言う」と思う。
もっと大事なのは、この作品の主人公は、『ミワさんなりすます』や『ケンシロウによろしく』みたいに「ひとつのことに熱中しすぎたあまり、こじらせてしまった人」ですよね。
でも肩入れできないのは、例えば『ミワさん』の松本穂香なら何だかんだ言っても映画のことになると熱弁をふるったり、『ケンシロウによろしく』の松田龍平なら指圧やマッサージに関しては人一倍プライドが高かったり、その熱中しているひとつのことが本当に好きなんだなぁ、一家言あるんだなぁ、と微笑ましく思えるんですよ。
でも、この『たとえあなたを忘れても』の堀田真由は、音楽一筋に生きてきたというわりには、転職活動がうまくいかないと簡単に携帯ショップという音楽とは無関係の職に鞍替えしたり、いまでもピアニスト活動をしている森香澄のコンサートを聴きに行って嫉妬をぶつけそうになるも、すぐにウソの笑顔で取り繕ったり、何もかもが中途半端で応援する気になれません。森香澄にビンタくらいかましてやってもよかったのでは?
「病気」を軸にして物語を転がす作品も好きになれません。『流浪の月』とかね。1話でリタイアです。
というわけで、今クール後半戦のトップは『コタツがない家』。その次に『ミワさんなりすます』『ケンシロウによろしく』が来る。どれも「庶民の生活」という意味で通底していて、それこそ私がテレビドラマに求めるものなんだと再認識いたしました。
「生活という桎梏のなかでおまえはこれからどう生きていくのか」
そう問われているように感じました。
前半戦と合わせ全15本(後半戦8本)のうち、すでにリタイアしたものが9本(同4本)、継続視聴しているものが6本(同4本)、完走したものor完走を確信しているものが5本(同3本)と、大豊作となりました。大豊作は久しぶりなのでうれしい悲鳴を上げています。ありがとうございます。
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まず何よりも役者のアンサンブルがいいんじゃないでしょうか。多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠が職業も性格、考え方も何もかも違う男女を好演。人物設定を多彩にするのは鉄則ですけど、とても丁寧に造形されていると感じました。さすがヤングシナリオ大賞を受賞してすぐ連ドラのライターに抜擢された脚本家の作品のことだけはありますな。
撮り方も、フィックスばかりで手持ちは一回もなかったんじゃないかしら。好感がもてます。
2話まで見て、「かみ合わない会話がネットで話題!」とかいうニュースを見ましたが、それには大いに疑問。
確かに現実にああいう会話はあるでしょうけど、フィクションでああいうのは「あざとい」と思う。当然のことながら現実と虚構は違います。虚構における「会話のリアル」はまた別にあると思う。
それと、自分のクラスで勉強できない塾生に「席があるならクラスに行ってもいかなくてもどっちでもいいんじゃない?」と言った多部未華子が、松下洸平の家で再度集まるシーンで神尾楓珠から「そこ、ゆくえちゃんの席ですよ」と言われて「自分の席があるんだ」と感激するのは、これまたちょいとあざとくないでしょうか。見ててすごく恥ずかしかった。
普通ならここでリタイアするところですが、この作品には何か別の魅力がある。うまく言えない何かが。2話には出てこなかった仲野大賀も気になるし3話も見ます。彼、好きなんですよ。いい柄してると思う。
内容が目当てなのはもちろんですが、今田美桜のおっぱいもね。ふふふ。たぶん、私は女性との間に友情なんか成立させられないでしょうな。ははは。
『すべて忘れてしまうから』
初回でほとんど何もお話が展開せずイライラしましたが、阿部ちゃんの新作だし、我慢して2話目も見ました。
うーん、、、リタイアを決意しました。
話の関節を外そう外そうとすること自体は大歓迎なのだけど、ちょいと外しすぎじゃないですかね? 背後関係とかよくわからない。いったい何についての話なの? というか誰についての話? そこからしてもうわからない。もっと丁寧な描写を積み重ねてほしいです。
『単身花日』
重岡大毅が好きなので見始めました。
妻子持ちの重岡大毅が故郷の鹿児島に単身赴任で帰り、そこで人妻になっている初恋の人・新木優子とのダブル不倫が描かれます。
初恋の人と再会するとか、ダブル不倫とか、いまさらな題材ですが、それはまぁいいでしょう。
しかし、ちょいと偶然が多すぎやしませんかね?
新木優子とは、鹿児島に着いてすぐ空港の近くですれ違い、家の近くのスーパーで久しぶりの会話をし、またどこかの公園か何かで再会する、という偶然のオンパレード。スーパーの再会のあと、新木優子は旧友に「同窓会やろう」ともちかけているので、そこですぐ同窓会になってもよかったんじゃないでしょうか。
ここでリタイアしようか、とりあえず2話も見るか迷った結果……リタイアを決意。とても完走する自信がないのでここで終わりにしようと。
『ミワさんなりすます』
あらすじを読んだら面白そうなので見てみました。
やはり「ウソ」を起爆剤に駆動される物語は面白いですね。いつか露見するだろうという期待と、それまでのハラハラドキドキというサスペンスがあって。
29歳になるまで映画鑑賞一筋で生きてきたオタク道まっしぐらな主人公が自分に重なってしまい、応援したくなる。いまでこそ「オタク」というと市民権を得たみたいになってるけど、それは普通に社会生活を送っていたらの話であって、松本穂香演じる主人公みたいに何の資格もなく何の取り柄もない人間(それは私のことでもある)がオタクというのは「痛い」ものなのでしょう。だからこそ、「オタクも悪くないよね」という地平を切り拓いてほしいと切に望みます。最後で「オタクやめます」なんてのだけはやめてね。応援してます。
『コタツがない家』
天才・小池栄子が民放連ドラ初主演作ということで見始めました。別にそんな記念作でなくても小池栄子が出てるなら見るけど。
これが私的には今クール最大の収穫! まだ1話だけど、圧倒的に面白い。
ウェディングプランナーとして有名なのに自分の結婚生活は土壇場を迎えている小池栄子。夫は崖っぷちのマンガ家で、一人息子はぐれかかっている。父親は母親(つまり妻)に捨てられ熟年離婚。何と小池栄子の家に「この家の頭金を払ったのは俺だ!」と転がり込んできた。
夫の吉岡秀隆は編集者・北村一輝(作家のほうが敬語なのはなぜ? 次週あたりに説明があるのかな)にそそのかされて「離婚しなよ。離婚するまでをマンガにすればいいんだよ」という言葉を実行しようとしている。父の小林薫は母の高橋惠子に完全に見捨てられているけど、作り手としては、両親夫婦と小池夫婦の双方を対照的に描くことで「結婚」あるいは「夫婦生活」ひいては「家族」なるものを多角的に描くことが主眼なのでしょう。これぞホームドラマの王道ですよ! 私がテレビドラマに求めるのはこういうのです。
『いちばんすきな花』とは対極の「作りこまれたセリフ」のオンパレードですけど、フィクションにおける「リアルな会話」ってこれだと思う。
気になるのは、小池の顧客で「結婚したいんじゃなくて結婚式をしたいだけ」と言ってた人がいたけど、なるほど確かに「結婚」と「結婚式」はぜんぜん違う。はたして小池栄子の職業をウェディングプランナーに設定したのははたして正解だったのかどうか。ちょいと心配。
それにつけても小池栄子! 第1話はそれほど見せ場がないなぁと残念に思っていたら、最後にありましたね。夫や父親に向けて悪口雑言を投げつけたあとに泣いてしまう場面。彼女はとにかく涙の見せ方がうまい。同じ脚本家・金子茂樹さんの『俺の話は長い』で生田斗真相手に説教したあとに涙をポロポロこぼすシーン、いまでも脳裏に焼き付いています。
それと、中島悟監督に関して。
前述の『俺の話は長い』も中島監督がメインディレクターだったと記憶していますが、『俺の話は長い』もこの『コタツがない家』も、家の中の空間の撮り方がうまいというか、そもそものセットの造りがとてもいいんじゃないでしょうか。
かなり広い家で、リビングの向こうには階段、サンルーム、和室がありました。光の加減から見て、スタジオ内に建てたセットではなくロケセットのようですが(いやもしかしたらセットなんだろうか。日光がやたら強烈だったけど)いい家を見つけてきましたね。あの家を見つけてきて、さらに主演に小池栄子が決定した時点で「勝ったも同然」と思いますが、広い空間を活かした見せ方、特にカメラを引いたときの構図がとてもいいと唸りました。
これはもう完走確定でしょう。もはや問題は「今年の何番目か」でしょうな。(しかし「コタツがない家」とはどういう意味だろうか。小池の後輩・ホラン千秋の家にはコタツがあったが……?)
『ケンシロウによろしく』
バカリズム脚本によるDMM.TV配信作品。
母親が失踪した原因のヤクザに復讐するため、北斗神拳をマスターし、ツボというツボに精通しながらも、友達なし、彼女なしの主人公に松田龍平。ユリアよろしく彼を温かく見つめる助手に西野七瀬。
あの主人公を一番自然に演じられるのは松田龍平だけだと思うし、西野七瀬はやはりどの作品で見ても凡百の女優とは一味も二味も違う。元トップアイドルだけあって、自分の見せ方を心得てるんでしょうな。
話はバカバカしすぎるほどバカバカしいけど、外連味たっぷりで面白い。映画でこれだと結構しんどいと思うけど、テレビシリーズでこれなら大歓迎。『コタツがない家』とは真逆だけど、これぐらい振り切れたバカバカしさも好き。
来週で最終回。復讐の結末も気になるところだけど、斉木しげるに援助を打ち切られた松田龍平がどう自分の人生を再構築していくのかも気になるところ。
このドラマは「復讐」を扱っているけれど、最終的に主人公の「生活」を扱うことになるのではないか。バカバカしいことこの上ないこの作品の根底には「生活者の目線」があって、それが好もしいし、それがバカリズム作品の魅力の源泉ではないかと思いました。
結局、この『ケンシロウによろしく』は、『ミワさんなりすます』と同じ問題を扱ってるわけですよね。映画オタクと復讐オタクの差こそあれ、何かに熱中しすぎて人生を誤ってしまった人間の再生の物語。西野七瀬と結婚とか、そんなラストだけはやめてほしいけど、バカリズムのことだからそんな凡百な結末はまったく頭をかすめたりしないんでしょうな。彼我の差はこういうところに表れる。
『薬屋のひとりごと』
うーん、よく日本のアニメでありますよね。あれは手塚治虫がやり始めた手法なのか、シリアスな内容でも時折コミカルな描写があって、画調が変わるアレ。手塚治虫なら『ブラックジャック』で多用してたし、最近のアニメでも『鬼滅の刃』でありますよね。
この『薬屋のひとりごと』でも同じような描写がありますが、ないほうがよくないですか? シリアス一辺倒のほうがいいように思いました。鬼退治の物語『鬼滅の刃』でもギャグはいい感じにはまってたと思いますが、この作品ではコミカルがメインプロットの流れを寸断しているように感じました。
他にも思うところがありますが面倒くさいのでいちいち言いません。一挙放映された3話でリタイアを決意。
『たとえあなたを忘れても』
神戸が舞台ということで見てみました。
まず、なぜ関西弁をしゃべってる人が一部だけで、あとの人は標準語なんでしょうか。中途半端なことをするくらいなら全員標準語でよかったのでは? 神戸っ子としてはちゃんと全員が神戸弁をしゃべってほしいですが。
それから、堀田真由が目を動かしすぎです。目は口ほどに物をいうとは言うけれど、目に芝居させすぎ、しゃべらせすぎです。萩原莉久との会話中、堀田真由は目を動かしすぎだし、まばたきしすぎだと思いました。たまに、萩原莉久をまっすぐ見つめたり、虚空を見つめたりしていたけど、そういうほうが「物を言う」と思う。
もっと大事なのは、この作品の主人公は、『ミワさんなりすます』や『ケンシロウによろしく』みたいに「ひとつのことに熱中しすぎたあまり、こじらせてしまった人」ですよね。
でも肩入れできないのは、例えば『ミワさん』の松本穂香なら何だかんだ言っても映画のことになると熱弁をふるったり、『ケンシロウによろしく』の松田龍平なら指圧やマッサージに関しては人一倍プライドが高かったり、その熱中しているひとつのことが本当に好きなんだなぁ、一家言あるんだなぁ、と微笑ましく思えるんですよ。
でも、この『たとえあなたを忘れても』の堀田真由は、音楽一筋に生きてきたというわりには、転職活動がうまくいかないと簡単に携帯ショップという音楽とは無関係の職に鞍替えしたり、いまでもピアニスト活動をしている森香澄のコンサートを聴きに行って嫉妬をぶつけそうになるも、すぐにウソの笑顔で取り繕ったり、何もかもが中途半端で応援する気になれません。森香澄にビンタくらいかましてやってもよかったのでは?
「病気」を軸にして物語を転がす作品も好きになれません。『流浪の月』とかね。1話でリタイアです。
というわけで、今クール後半戦のトップは『コタツがない家』。その次に『ミワさんなりすます』『ケンシロウによろしく』が来る。どれも「庶民の生活」という意味で通底していて、それこそ私がテレビドラマに求めるものなんだと再認識いたしました。
「生活という桎梏のなかでおまえはこれからどう生きていくのか」
そう問われているように感じました。
前半戦と合わせ全15本(後半戦8本)のうち、すでにリタイアしたものが9本(同4本)、継続視聴しているものが6本(同4本)、完走したものor完走を確信しているものが5本(同3本)と、大豊作となりました。大豊作は久しぶりなのでうれしい悲鳴を上げています。ありがとうございます。
関連記事
2023秋の新ドラマ・アニメあれやこれや(SPY×FAMILY、なんうま、ブラックファミリアなどの前半戦)
『流浪の月』感想(登場人物への愛情が感じられない)
『コタツがない家』はなぜ面白いか(コードをまっとうする男たち)
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