早くも1クールを残すのみとなった2023年。例により見た順で感想を記します。前クール途中から始まって先日終わった『何曜日に生まれたの』も含めてます。
『何曜日に生まれたの』
引きこもりは二つの時間を生きている。引きこもっている「今」と、引きこもりの原因になった「過去」の時間と。
この『ナンウマ』では、現在のヒロインが好きになる相手が、どんどん彼女の過去を掘り起こしていく。安楽椅子探偵よろしく。マンガのストーリーを作る取材と称して。
しかし、実は取材というのは口実で、本当は二人は、彼女が引きこもる10年前に出遭っており、安楽椅子探偵は彼女を引きこもりから脱せるように過去を掘り起こしたのが判明する。ここでげんなりしました。いくら何でも10年前にすでに出遭っていたというのは偶然が過ぎるんじゃないでしょうか。
10年前のバイク事故でヒロインは家に引きこもり、10年前のトラウマによって安楽椅子探偵の三島公平は「流行作家=公文竜炎」という仮面の下に引きこもる。こもりびとがこもりびとを救う展開そのものの構造は面白いとはいえ、その二人が奇しくもそのときにすでに出遭っていたという偶然はやっぱりつまらない。
もっと大事なことは、引きこもりを「脱すべきもの」と捉えていることです。確かに社会通念ではそうでしょう。でもそれをフィクションで語られても感動はありません。引きこもりのままでも、あなたのことが好きなのだ、あなたが大切なのだ、という地平まで連れて行ってくれるとよかったんですが……。
それと、ヒロインの「今」は公文竜炎の活躍もあるけど、簡単に解決しすぎでは? 高校時代のサッカー部の面々がみんな物分かりのいい人たちばかりなのはどうなんでしょう。
過去にはいろんなことがあって意外性や人間の裏の顔なんかもあるのに、現在の人物にはそういう屈託が何もないですよね。現在のほうが大事なはずなのに。飯豊まりえがこもりびとを脱するのもひどく簡単なら、最終回で公文竜炎が殻を破って彼女と恋に落ちるのもひどく簡単。その理由は、周りの人があまりに協力的すぎるから。主人公たちにはもっと牙を剥いてほしい。
前半やたら面白かっただけに、後半の失速はとにかく残念です。
『葬送のフリーレン』
金曜ロードショー枠で4話一挙放送と鳴り物入りで始まったので見てみたんですが、うーん、私はこういうファンタジーは苦手でして。
『SPY×FAMILY』のアーニャの声優さんが主役の声らしくて期待したけど、別に普通の声だった。アーニャはかなり芝居してるのね。
この『葬送のフリーレン』で描かれるのは「非日常の中の非日常」ですよね。私はそういうのも不得手だけど、「日常の中の非日常」も好きかというとそれほど……。
好きなのは「非日常の中の日常」です。まさに↓↓これですよ、これ↓↓
『SPY×FAMILY(第2期)』
父:ロイド・フォージャー 裏の顔〈スパイ〉
母:ヨル・フォージャー 裏の顔〈殺し屋〉
娘:アーニャ・フォージャー 裏の顔〈エスパー〉
という仮初の三人家族を描くシリーズ。たまたま先月U-NEXTで見たらはまってしまい、今月から第2期の放送。年末には劇場版公開と、いい時期に見始めた。運がある。
さて、この『SPY×FAMILY』は、前述のとおり、東西スパイ冷戦(米ソ対立ではありません)を背景に、名門小学校に潜入して敵国の情報を得るため仮初の家族を作ったロイド・フォージャー他の物語。見事に「非日常の中の日常」を描いてくれます。
スパイ合戦に秘密警察という非日常の大枠の中で描かれるのは「家族」や「小学校」といったミニマムなもの。これですよ、これ。私がテレビアニメに求めるのはまさにこういうの。
原作読んでないので第2期がどういう話なのかまったく知りませんが、1話目はそれほど面白くなかったかな。やはりヨルさんには笑顔でいてほしい。アーニャの出番も少なかった。モジャモジャの出番減らして。
『ビックリメン』
まったく乗れずじまい。以上。
『たそがれ優作』
北村有起哉が好きなので見始めました。
主人公は三流の役者。離婚して独身。台本読みながら簡単な朝食。近隣の小学校の女の子に芝居をつけてもらう。その通り芝居すると監督に怒鳴られる。現場で自分のファンだという女優と出会う。ワインのおいしい店に連れて行ってほしいと言われるので奮発する。淡い期待は「彼氏がいる」の一言ではかなくも散る。そして行きつけのスナックで独りたそがれる。
という内容で、何の「ドラマ=劇」も「葛藤」もない。ただ、しがない役者の日常が描かれるだけ。女優に彼氏がいるというのも予想の範囲内だし、面白くない。厳しくもない。少しだけ可笑しさはあるけど、ほんの少し。これが30分の枠だったら次を見てもいいけど。1時間はきついです。
『ブラックファミリア 新堂家の復讐』
城定秀夫監督が脚本も書いていると聞いて矢も楯もたまらずU-NEXTの見放題配信で見始めました。便利な時代になったもんです。
まず何よりもカメラがいい。ちゃんと三脚にカメラを固定して撮っているのがとても好感がもてます。前から言っているように、私は手持ちカメラでブレまくるカメラが嫌いなので、こんなオーソドックスなだけの撮り方でも好きにならずにいられない。
で、板谷由夏が取り乱すシーンなどは手持ちで意図的に揺らすんですよね。登場人物の心情に寄り添った撮り方。意図的に揺らすのと自然に揺れてしまうのとの、こんなにも大きな差。
ただ懸念は物語。女優デビュー間近だった末娘が死んでしまい、警察は早々に自殺と断定して捜査を打ち切る。そこにはある政治家一家の圧力があった。という、ちょいと手垢にまみれた感じの物語で、ここをどううっちゃってくれるかが見ものですね。2話は当然見ますよ!
『ONE DAY ~聖夜のから騒ぎ~』
1クールかけて1日の出来事を描く、というのが面白そうで見てみました。
①記憶喪失で殺人事件の犯人にされそうな男
②デミグラスソースをこぼしてしまってクリスマスイブに店を開けられなくなったシェフ
③MCを務める報道番組を打ち切られそうになるキャスター
大きく三つのエピソードが展開するんですが、①の「問題」の大きさ、深さに対して、②と③の7「問題」があまりに小さすぎませんかね。特に②は小さいだけでなく、浅い。人が立って喋っているだけだし。
①だけで構成したほうが面白くなりそうだと思いました。記憶喪失というのはおそらくフィクションの中で最も手垢にまみれた題材だけど、「失ったものが自分自身」と「問題」が大きくて根が深いので魅力的な題材ですよね。②で失われたデミグラスソースは、いくら先々代から受け継いだものとはいえ小さすぎますよ。1話でリタイア。
というわけで、上記7本のうち、すべて見終わったものが1本、継続視聴を決めたものが2本、リタイアを決めたものが4本と、まずまずではないでしょうか。
後半戦は、『コタツがない家』『いちばんすきな花』『ミワさんなりすます』などを見始める予定です。
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この『ナンウマ』では、現在のヒロインが好きになる相手が、どんどん彼女の過去を掘り起こしていく。安楽椅子探偵よろしく。マンガのストーリーを作る取材と称して。
しかし、実は取材というのは口実で、本当は二人は、彼女が引きこもる10年前に出遭っており、安楽椅子探偵は彼女を引きこもりから脱せるように過去を掘り起こしたのが判明する。ここでげんなりしました。いくら何でも10年前にすでに出遭っていたというのは偶然が過ぎるんじゃないでしょうか。
10年前のバイク事故でヒロインは家に引きこもり、10年前のトラウマによって安楽椅子探偵の三島公平は「流行作家=公文竜炎」という仮面の下に引きこもる。こもりびとがこもりびとを救う展開そのものの構造は面白いとはいえ、その二人が奇しくもそのときにすでに出遭っていたという偶然はやっぱりつまらない。
もっと大事なことは、引きこもりを「脱すべきもの」と捉えていることです。確かに社会通念ではそうでしょう。でもそれをフィクションで語られても感動はありません。引きこもりのままでも、あなたのことが好きなのだ、あなたが大切なのだ、という地平まで連れて行ってくれるとよかったんですが……。
それと、ヒロインの「今」は公文竜炎の活躍もあるけど、簡単に解決しすぎでは? 高校時代のサッカー部の面々がみんな物分かりのいい人たちばかりなのはどうなんでしょう。
過去にはいろんなことがあって意外性や人間の裏の顔なんかもあるのに、現在の人物にはそういう屈託が何もないですよね。現在のほうが大事なはずなのに。飯豊まりえがこもりびとを脱するのもひどく簡単なら、最終回で公文竜炎が殻を破って彼女と恋に落ちるのもひどく簡単。その理由は、周りの人があまりに協力的すぎるから。主人公たちにはもっと牙を剥いてほしい。
前半やたら面白かっただけに、後半の失速はとにかく残念です。
『葬送のフリーレン』
金曜ロードショー枠で4話一挙放送と鳴り物入りで始まったので見てみたんですが、うーん、私はこういうファンタジーは苦手でして。
『SPY×FAMILY』のアーニャの声優さんが主役の声らしくて期待したけど、別に普通の声だった。アーニャはかなり芝居してるのね。
この『葬送のフリーレン』で描かれるのは「非日常の中の非日常」ですよね。私はそういうのも不得手だけど、「日常の中の非日常」も好きかというとそれほど……。
好きなのは「非日常の中の日常」です。まさに↓↓これですよ、これ↓↓
『SPY×FAMILY(第2期)』
父:ロイド・フォージャー 裏の顔〈スパイ〉
母:ヨル・フォージャー 裏の顔〈殺し屋〉
娘:アーニャ・フォージャー 裏の顔〈エスパー〉
という仮初の三人家族を描くシリーズ。たまたま先月U-NEXTで見たらはまってしまい、今月から第2期の放送。年末には劇場版公開と、いい時期に見始めた。運がある。
さて、この『SPY×FAMILY』は、前述のとおり、東西スパイ冷戦(米ソ対立ではありません)を背景に、名門小学校に潜入して敵国の情報を得るため仮初の家族を作ったロイド・フォージャー他の物語。見事に「非日常の中の日常」を描いてくれます。
スパイ合戦に秘密警察という非日常の大枠の中で描かれるのは「家族」や「小学校」といったミニマムなもの。これですよ、これ。私がテレビアニメに求めるのはまさにこういうの。
原作読んでないので第2期がどういう話なのかまったく知りませんが、1話目はそれほど面白くなかったかな。やはりヨルさんには笑顔でいてほしい。アーニャの出番も少なかった。モジャモジャの出番減らして。
『ビックリメン』
まったく乗れずじまい。以上。
『たそがれ優作』
北村有起哉が好きなので見始めました。
主人公は三流の役者。離婚して独身。台本読みながら簡単な朝食。近隣の小学校の女の子に芝居をつけてもらう。その通り芝居すると監督に怒鳴られる。現場で自分のファンだという女優と出会う。ワインのおいしい店に連れて行ってほしいと言われるので奮発する。淡い期待は「彼氏がいる」の一言ではかなくも散る。そして行きつけのスナックで独りたそがれる。
という内容で、何の「ドラマ=劇」も「葛藤」もない。ただ、しがない役者の日常が描かれるだけ。女優に彼氏がいるというのも予想の範囲内だし、面白くない。厳しくもない。少しだけ可笑しさはあるけど、ほんの少し。これが30分の枠だったら次を見てもいいけど。1時間はきついです。
『ブラックファミリア 新堂家の復讐』
城定秀夫監督が脚本も書いていると聞いて矢も楯もたまらずU-NEXTの見放題配信で見始めました。便利な時代になったもんです。
まず何よりもカメラがいい。ちゃんと三脚にカメラを固定して撮っているのがとても好感がもてます。前から言っているように、私は手持ちカメラでブレまくるカメラが嫌いなので、こんなオーソドックスなだけの撮り方でも好きにならずにいられない。
で、板谷由夏が取り乱すシーンなどは手持ちで意図的に揺らすんですよね。登場人物の心情に寄り添った撮り方。意図的に揺らすのと自然に揺れてしまうのとの、こんなにも大きな差。
ただ懸念は物語。女優デビュー間近だった末娘が死んでしまい、警察は早々に自殺と断定して捜査を打ち切る。そこにはある政治家一家の圧力があった。という、ちょいと手垢にまみれた感じの物語で、ここをどううっちゃってくれるかが見ものですね。2話は当然見ますよ!
『ONE DAY ~聖夜のから騒ぎ~』
1クールかけて1日の出来事を描く、というのが面白そうで見てみました。
①記憶喪失で殺人事件の犯人にされそうな男
②デミグラスソースをこぼしてしまってクリスマスイブに店を開けられなくなったシェフ
③MCを務める報道番組を打ち切られそうになるキャスター
大きく三つのエピソードが展開するんですが、①の「問題」の大きさ、深さに対して、②と③の7「問題」があまりに小さすぎませんかね。特に②は小さいだけでなく、浅い。人が立って喋っているだけだし。
①だけで構成したほうが面白くなりそうだと思いました。記憶喪失というのはおそらくフィクションの中で最も手垢にまみれた題材だけど、「失ったものが自分自身」と「問題」が大きくて根が深いので魅力的な題材ですよね。②で失われたデミグラスソースは、いくら先々代から受け継いだものとはいえ小さすぎますよ。1話でリタイア。
というわけで、上記7本のうち、すべて見終わったものが1本、継続視聴を決めたものが2本、リタイアを決めたものが4本と、まずまずではないでしょうか。
後半戦は、『コタツがない家』『いちばんすきな花』『ミワさんなりすます』などを見始める予定です。
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