全米脚本家組合がストライキを始めました。監督組合もこの流れに乗るようです。私はこのストライキを断固支持します。その理由は?


最初の理由
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ハリウッド業界人のストライキというと、どうしても、金満家がもっと金よこせとストライキしているというマイナスの目で見る人がいますが、違います。

もう30年も前になりますが、ジョー・エスターハスという脚本家が書いた『氷の微笑』の脚本は500万ドルで売れました。他にも当時は何百万ドルという値で売れる脚本が何本もありました。

そういうニュースに触れただけだと、「ハリウッドの脚本家は金満家なのに、もっと金よこせとストライキするなんてけしからん!」と憤激する人が出る人も無理ないかと思いますが、そのような何百万ドルという値で自作脚本が売れる人なんてほんの一握りもおらず、ほとんどの脚本家が(監督も)カツカツでやっているのです。

だから、昨今の映画スタジオは劇場のチケット収入だけでなく配信でも稼ぎまくっているのに、それに見合った対価をえられていないとストライキを起こすのは当然の流れと言っていいでしょう。

金満家がストライキを起こしているのではなく、我々と同じ生活に追われる労働者がストライキを起こしているのです。

これが私が今回のストライキを支持する最初の理由です。ここまでなら、それなりに映画界の事情に通じてる人ならみんな知ってるでしょうし、そういう人は今回のストライキを支持しているはずで、わざわざこんな記事を書く必要もありません。

私はもっと別の理由で今回のストライキを支持したいのです。


AIへの挑戦状
chatgpt

脚本家たちが秘かに恐れているのは、そして、スタジオが秘かに狙っているのが、生身の脚本家がストライキするなら、chatGPTなどの最新のAIを使って映画やドラマを製作する、というものです。

だって、もう論文も小説も書けるんですから、脚本のフォーマットや名作映画のプロットやセリフなどを教え込ませれば、AIはいい脚本を書けるのかもしれません。

でも、そうなると、人間の脚本家は飯の食い上げじゃないですか。今回のストライキはそれが一番のネックだったと思うんですね。ストライキしても賃上げどころか全員仕事を失うという。

でも脚本家たちはそれを恐れずに立ち上がった。おそらく、AIより自分たち人間のほうがいい脚本が書けるという勝算があったのでしょう。それが正しいかどうかはもう少し様子を見なければわかりませんが、人を感動させることができるのは同じ人間だけだという矜持。

それが今回の一件の要諦のような気がして、だから脚本家を目指していた私はこのストライキを支持したいのです。



脚本を書くための101の習慣
カール・イグレシアス
フィルムアート社
2018-08-03






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