以前、中学生の頃、父と母がチューしてるところを目撃してしまったことがあります。

あのときも恥ずかしかったけど、今回も何だかちょいと恥ずかしいというか、両親の秘密を垣間見てしまったような、現場から逃げるように立ち去ったのでした。

父は去年他界し、母が一人で住んでいたところへ私が戻ってきたんですが、二人とも無職ゆえ、基本的に家にいます。同じ病気を患っていて、母のほうが病状が悪いため、一日の半分以上は居間のソファで寝ています。

「事件」はそんなときに起きました。

今日、昼ご飯のあと、二階の部屋でビデオで映画を一本見た私は、コーヒーカップを洗おうと階下へ降りました。母はいつもと同じようにソファで寝ていました。

コーヒーカップを洗った私は何か小腹を埋めてくれるものはないかと奥の冷蔵庫へ行きました。そのとき、足音がして洗面所でうがいする音がしました。声をかけようと洗面所へ行くと、母はすでにいません。あれ? うがいの音は空耳だったのかな? と思いました。

しかし、別方向から足音がします。奥の仏壇のある和室でした。

母が仏壇に話しかけていました。


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「○○(母の名)はわがままだって言いたいんでしょ」

おそらく夢を見ていて、その文脈で言ったのでしょうから、夢がどんな内容かわからないため、この言葉の意味も永久にわかりません。

しかし、私がそばにいるとわかっていたら、こんなことを仏壇に向って言うこともないだろうと思うと、何か聞いてはいけないことを聞いてしまったような、見てはいけないものを見てしまったような、とてもばつの悪い思いをし、這う這うの体で二階へ上がったのでした。(母は耳が遠いため、足音をさせても聞こえません。それでも抜き足差し足で逃げましたが)

それにしても、葬式が終わってしばらくたったとき、「死んでから一度も涙が出ない」と言っていて、「あ、やっぱり好きじゃなかったんだな。そりゃそうだよね、ほとんど奴隷扱いだったもんね」と思ったんですけど、「わがままだって言いたいんでしょ」という、かわいらしい恨み言をよく噛みしめてみると、母はやはり父のことが好きだったのだなぁと思うのです。

ただそれだけです。



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