ETV特集「ルポ  死亡退院 ~精神医療・闇の実態~」を見て、あまりの衝撃に言葉を失いました。


番組の内容
日常的に虐待が行われている東京都八王子市の滝山病院。

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一人の患者が相原弁護士に助けを乞う。
「帰りたい。病院に戻ったら殺される」
このあと、この患者さんは死亡。おそらく虐待死。相原弁護士は激しい後悔の念にさいなまれ、滝山病院から助けを乞う声があれば、一刻も早く逃げ出させなきゃいけないと決意。お金の話は飛ばそう、お金をもってようがもっていまいが、とにかく連れて帰るんだと決めた、と話す。

院長も看護師長も看護師も准看護師も「(この病院での虐待は)必要悪」という。

滝山病院は透析治療の設備や集中治療室などを備えた珍しい精神科病棟で、そういう設備のない病院が滝山病院を必要としている。行政も、透析の必要があるのに病院に行かない人を強制的に入院させている。行政も滝山病院を必要としている。

所沢市のある病院は、音信不通と書いてある家族に「滝山病院に強制入院させた」と連絡があった。少しも音信不通じゃない。所沢市に問いただすと、「個別事案で個人情報の問題もあるのでお答えしかねるという回答でどうかご理解いただきたい」と話した。

滝山病院の看護師一人が逮捕。しかし病院は「調査の結果、虐待の事実は認められなかった」と回答。

滝山病院での、死亡が理由の退院は全体の78%にのぼる。

院長はこう話す。(盗聴した音声)
「昨日も逝っちまったな。そういう奴しか入ってこないんだよな。ヒヒヒ。根本的に治すなんてとんでもない話だよ。いつか死ぬ。イッヒッヒッヒ」

22年前、患者の生活保護費などを略取して問題になった埼玉県の朝倉病院の院長が、いまの滝山病院の院長。


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保険医の資格を取り消されていたのになぜ? 保険医の資格は5年たつと再申請が可能。しかし、厚労相が著しく不適格と認めれば却下される。厚労省に問い合わせると、「個別事案にはお答えしかねる」と判で押したような回答。

最後は一人の元マンガ家さんが相原弁護士の尽力で退院できることになる。車の中から富士山が見える。


感想
ラストは少しだけ救われる気持ちになったけど、これはもうこの番組を作った人の願いでしょうね。あまりにひどい実態に、少しでも救いを見出したかったということでしょう。私も脚本を書いていたからわかります。救いのない話だと、最後くらいは救いのあるシーンにしたかった。

でも、滝山病院をめぐる悪辣非道はこれからもそんなに変わらないんじゃないかと思いますね。

だって、上述したように、他の病院や行政が必要としてるわけだから。本から絶たないと意味がない。

判断能力がなかったり、まともに話ができない人の生活保護費から入院費や治療費をちょろまかしてるわけでしょ。病院からすれば精神を病んでいる人は「おいしい存在」なわけですよ。

しかも、盗み撮りした虐待映像を見ると、おそらく、ああいう虐待は、決して看護師や准看護師が悪人だからじゃないと思う。


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看守の群と囚人の群に分けてその役を演じさせたら、看守役が囚人役にひどい暴力を振るうようになったという、映画にもなった有名な実験がありますが、あれと同じでしょう。絶対的な弱者が目の前にいると自分を強者だと勘違いして、弱い者いじめをしてしまうんだと思う。哀しいかな、人間とはそういう存在で、私がもし滝山病院で働いたとしても同じことをしてしまうんじゃないか。属人的な問題ではなく、構造的な問題だと思う。

透析設備など内科治療の設備のない病院から必要とされ、患者が入院してくる。滝山病院はその患者から生活保護費をちょろまかすことができる。行政とも同じことをしている。

警察の捜査が入ってるらしいけれど、どこまで解明できるか。院長の逮捕や業務停止までもっていけるか。もっていってほしいけど、仮にそこまで行けても暗澹たる気持ちは消えない。

私は長らく神経症(ノイローゼ)を患っていて、最近それが躁うつ病(双極性障害)に変わったのですが、薬もほぼ全面的に変わって、幸い統合失調症ではないものの、今回別の病気になったということはそのうち統合失調症など入院が必要な病気になる可能性があります。

入院といえば、母が数年前に精神科病棟に入院してました。見舞いに行ったところ、滝山病院のような陰湿なところとはぜんぜん違う明るい雰囲気のいい感じの病院で安心しましたが、当時の主治医に「母が入院した」と言ったら、「え! それはお父さんも同意したってこと!? 何でまた……」と口をあんぐり開けてて、まともな精神科医は精神科病棟への入院は絶対よくないと考えているようでした。

ということは、滝山病院のような病院は精神科病棟としてはごくふつうということです。

やはり、患者を虐待するのは構造的な問題なんだと思います。

院長を逮捕し、滝山病院を業務停止にできたとしても、別の病院が「新たな滝山病院」になるだけでしょう。

何しろ、医師も看護師も、行政も、患者の家族すら、あのような病院を「必要悪」だと言っているのだから。

もし自分が入院ということになったら、もし虐待されたら、と思うと、昨日は夜も眠れませんでした。





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