荻上チキさんの編著による『宗教2世』を読みました。
一番印象が強かったのは、鈴木エイトさんと、黒沼クロヲさんという統一教会2世の方(仮名とは書かれてないから実名なんでしょうかね)を交えた鼎談でした。そこを中心に思ったことを綴ります。

クロヲ氏は、フリーでビデオカメラマンの仕事に就きながら、バンドなどの音楽活動をしているそうです。
クロヲ氏本人も両親もみんな現在は脱会しているとか。しかも、エイト氏がかなり驚いてましたが、「両親が、入信中に数十億円にのぼるという献金のうちかなりの返金交渉をして、結果的に数億円とられてだけですんだ」ということです。普通は脱会したあとに訴訟を起こしたりするものらしいので、入信中に交渉ができるというのはかなり珍しいとか。
献金ごっこ
私がクロヲ氏の話で一番興味深かったのは、幼少の頃の「献金ごっこ」ですね。
統一教会では子どもも献金させられるそうです。でもお金をほとんどもってないから、まず親がお小遣いをくれる。そしてそのお小遣い全額を献金するそうです。つまり、もらったお金を全部献金する。それなら、親が直接教団に献金しても一緒ですが、子どもにも献金が大事という意識を植えつけるのが大事らしい。何ともはや。
でもそれではクロヲ氏のお小遣いがまったくなくなるから、夜中にこっそり献金箱から数百円ちょろまかしていたと。笑ってしまった。
統一教会の性のタブー
次に興味深かったのは、統一教会では性教育に厳しく、何しろクロヲ氏も「祝福2世」と呼ばれる人で、あの合同結婚式で結ばれた夫婦が、教団が指示した通りの性生活をして生まれた子どもは「祝福2世」として尊ばれると。初夜はこういう体位で、次の夜はこういう体位で、と細かい指示があるそうです。んまぁ、何てヤラしい!
で、クロヲ氏によると、映画やアニメのセックスシーンを見るのはご法度で、キスなら許されると。で、エイト氏が「ドラえもんのしずかちゃんのお風呂は?」と訊くと、それはOKで、『水戸黄門』の由美かおるの入浴シーンもOKだったとか。ふうん。そりゃあんなのすらダメだったら何も見れませんわな。
宗教2世あるある
あと、「宗教2世あるある」として、次の二つのことも語られていました。
①文鮮明の写真がドンと飾ってあるのが普通だと思ってたら、家に来た友人が「あれ何?」と訊く。別の友人の家に行くと、文鮮明の写真などない。それで「あるある」だと思ってことが「ないない」だと気づく。
②テレビを見せてもらえないので、いまだとスマホをもたせてもらえる年齢になると、教団の名前で検索したらかなりヤバい情報がわんさか出てきて、教団への疑問が湧く。
「洗脳」とは何か
疑問が湧いて脱会もして、それでも、クロヲ氏は統一教会の教義を信じ込んでいるところがあると言います。特に両親は脱会したし、返金もしてもらったけど、それでも婚前交渉には否定的とか、教義にいまでも忠実なところが多い、と。
さらに、母親が、マルチ商法や健康食品、コロナワクチン陰謀論にハマったと。カルトを抜けて、またカルトへというのが興味深いというか何というか。
でも、興味深いと思ったけれど、これってすべての人間がそうなんじゃないの? と思いました。というか、そもそも「洗脳」って何、と。
私の考えではすべての人が「洗脳」されてます。だって、教育って「洗脳」じゃないですか。
正しいことを脳みそに植えつければ「教育」だけれど、悪いこと・間違っていることを植えつけたら「洗脳」と言われるだけの話であって。
去年死んだうちの親父は、とにかくひどい人間で、論理的に叱るということがなく、ただムカついたなどの感情をそのままぶつけてくる人でした。いちいち書き出したら思い出してしまうので書きませんが、親父を反面教師にして学んだことは以下のようなことです。
「カネは汚いものである」
「カネカネばかり言うのはみっともない」
「カネ儲けに注力するくらいなら死んだほうがまし」
「叱るのときはひとつのことだけ叱る。過去のことをもちだしてはならない」
「同じことを何度も言わない」
「まず人の話を聞く」
カネのことが多いですが、例えば「金は汚い」ということを反面教師的にとはいえ学ばせてもらい、それは素晴らしい教えだと自分では思っています。つまり「教育」ですね。でも、それって「洗脳」の可能性もありますよね。
私は幼少の頃の出来事から、とにかくカネは汚いものだとしか思えないのですが、「カネ儲けに注力するくらいなら死んだほうがまし」をあまり重要視すると、生きていけなくなりますよね。自分としては素晴らしいことを学んだつもりになっているけれど、行きすぎると、統一教会の「祝福」みたいに、初夜はこういう体位で、なんていうナンセンスなことになりかねない。
だから、カルトの教義も、誰もが認める古典に書いてあることも、その他いろんな経験から学ぶことも、どれも「諸刃の剣」だと思う。
父親を反面教師にしていろんなことを学んだ。でも、それって、父親を反転させた架空の人物を「神」として崇めてるってことですよね。既製の○○教とは言わないだけで、これは「宗教」です。
父親はいろんなひどいイデオロギーを私に植えつけようとした。私はそれを拒否した。拒否できたのはいいけど、拒否できなかったら親父と同じ宗教にハマるだけだし、拒否した現在は、親父とは真逆の宗教を信じているだけ。
おそらく私も「宗教2世」なんでしょう。親から強烈な影響を受けている人はみんな広い意味の宗教2世なんだと思います。
だから、充分気をつけてないと、一歩間違えれば、私もあなたもカルトに心を支配されてしまう。
鼎談は、最後は統一教会の解散請求をすべきか、というチキ氏の質問に対し、クロヲ氏は「信者が路頭に迷ったり自殺したり、何か事件を起こしたりするかもしれないから反対」と言い、エイト氏は「信者の受け皿を作ったうえで解散請求すべき」と言っていました。
そういう政治家がやるべきことも大事だろうけど、まず、何かを信じることはすべて「宗教」であり、何かを学ぶことは「洗脳」である、という自覚をもつべきだと思いました。
自分を疑え。
一番印象が強かったのは、鈴木エイトさんと、黒沼クロヲさんという統一教会2世の方(仮名とは書かれてないから実名なんでしょうかね)を交えた鼎談でした。そこを中心に思ったことを綴ります。

クロヲ氏は、フリーでビデオカメラマンの仕事に就きながら、バンドなどの音楽活動をしているそうです。
クロヲ氏本人も両親もみんな現在は脱会しているとか。しかも、エイト氏がかなり驚いてましたが、「両親が、入信中に数十億円にのぼるという献金のうちかなりの返金交渉をして、結果的に数億円とられてだけですんだ」ということです。普通は脱会したあとに訴訟を起こしたりするものらしいので、入信中に交渉ができるというのはかなり珍しいとか。
献金ごっこ
私がクロヲ氏の話で一番興味深かったのは、幼少の頃の「献金ごっこ」ですね。
統一教会では子どもも献金させられるそうです。でもお金をほとんどもってないから、まず親がお小遣いをくれる。そしてそのお小遣い全額を献金するそうです。つまり、もらったお金を全部献金する。それなら、親が直接教団に献金しても一緒ですが、子どもにも献金が大事という意識を植えつけるのが大事らしい。何ともはや。
でもそれではクロヲ氏のお小遣いがまったくなくなるから、夜中にこっそり献金箱から数百円ちょろまかしていたと。笑ってしまった。
統一教会の性のタブー
次に興味深かったのは、統一教会では性教育に厳しく、何しろクロヲ氏も「祝福2世」と呼ばれる人で、あの合同結婚式で結ばれた夫婦が、教団が指示した通りの性生活をして生まれた子どもは「祝福2世」として尊ばれると。初夜はこういう体位で、次の夜はこういう体位で、と細かい指示があるそうです。んまぁ、何てヤラしい!
で、クロヲ氏によると、映画やアニメのセックスシーンを見るのはご法度で、キスなら許されると。で、エイト氏が「ドラえもんのしずかちゃんのお風呂は?」と訊くと、それはOKで、『水戸黄門』の由美かおるの入浴シーンもOKだったとか。ふうん。そりゃあんなのすらダメだったら何も見れませんわな。
宗教2世あるある
あと、「宗教2世あるある」として、次の二つのことも語られていました。
①文鮮明の写真がドンと飾ってあるのが普通だと思ってたら、家に来た友人が「あれ何?」と訊く。別の友人の家に行くと、文鮮明の写真などない。それで「あるある」だと思ってことが「ないない」だと気づく。
②テレビを見せてもらえないので、いまだとスマホをもたせてもらえる年齢になると、教団の名前で検索したらかなりヤバい情報がわんさか出てきて、教団への疑問が湧く。
「洗脳」とは何か
疑問が湧いて脱会もして、それでも、クロヲ氏は統一教会の教義を信じ込んでいるところがあると言います。特に両親は脱会したし、返金もしてもらったけど、それでも婚前交渉には否定的とか、教義にいまでも忠実なところが多い、と。
さらに、母親が、マルチ商法や健康食品、コロナワクチン陰謀論にハマったと。カルトを抜けて、またカルトへというのが興味深いというか何というか。
でも、興味深いと思ったけれど、これってすべての人間がそうなんじゃないの? と思いました。というか、そもそも「洗脳」って何、と。
私の考えではすべての人が「洗脳」されてます。だって、教育って「洗脳」じゃないですか。
正しいことを脳みそに植えつければ「教育」だけれど、悪いこと・間違っていることを植えつけたら「洗脳」と言われるだけの話であって。
去年死んだうちの親父は、とにかくひどい人間で、論理的に叱るということがなく、ただムカついたなどの感情をそのままぶつけてくる人でした。いちいち書き出したら思い出してしまうので書きませんが、親父を反面教師にして学んだことは以下のようなことです。
「カネは汚いものである」
「カネカネばかり言うのはみっともない」
「カネ儲けに注力するくらいなら死んだほうがまし」
「叱るのときはひとつのことだけ叱る。過去のことをもちだしてはならない」
「同じことを何度も言わない」
「まず人の話を聞く」
カネのことが多いですが、例えば「金は汚い」ということを反面教師的にとはいえ学ばせてもらい、それは素晴らしい教えだと自分では思っています。つまり「教育」ですね。でも、それって「洗脳」の可能性もありますよね。
私は幼少の頃の出来事から、とにかくカネは汚いものだとしか思えないのですが、「カネ儲けに注力するくらいなら死んだほうがまし」をあまり重要視すると、生きていけなくなりますよね。自分としては素晴らしいことを学んだつもりになっているけれど、行きすぎると、統一教会の「祝福」みたいに、初夜はこういう体位で、なんていうナンセンスなことになりかねない。
だから、カルトの教義も、誰もが認める古典に書いてあることも、その他いろんな経験から学ぶことも、どれも「諸刃の剣」だと思う。
父親を反面教師にしていろんなことを学んだ。でも、それって、父親を反転させた架空の人物を「神」として崇めてるってことですよね。既製の○○教とは言わないだけで、これは「宗教」です。
父親はいろんなひどいイデオロギーを私に植えつけようとした。私はそれを拒否した。拒否できたのはいいけど、拒否できなかったら親父と同じ宗教にハマるだけだし、拒否した現在は、親父とは真逆の宗教を信じているだけ。
おそらく私も「宗教2世」なんでしょう。親から強烈な影響を受けている人はみんな広い意味の宗教2世なんだと思います。
だから、充分気をつけてないと、一歩間違えれば、私もあなたもカルトに心を支配されてしまう。
鼎談は、最後は統一教会の解散請求をすべきか、というチキ氏の質問に対し、クロヲ氏は「信者が路頭に迷ったり自殺したり、何か事件を起こしたりするかもしれないから反対」と言い、エイト氏は「信者の受け皿を作ったうえで解散請求すべき」と言っていました。
そういう政治家がやるべきことも大事だろうけど、まず、何かを信じることはすべて「宗教」であり、何かを学ぶことは「洗脳」である、という自覚をもつべきだと思いました。
自分を疑え。

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