さて、もう年が明けて早くも2週間近くたちました。早くも新作テレビドラマ・アニメを7本も見始めました。

例によって、見た順に感想をつらつらと。


『ヒヤマケンタロウの妊娠』
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前クールの『エルピス』で、鈴木亮平が「色気だだ漏れ」なんて言葉で評されてましたが、斎藤工も「色気だだ漏れ役者」ですよね。男の私から見てもそう感じるんだから、女性からしたら相当なんでしょうな。今回は上野樹里と共演。まだ36歳と知ってびっくり。初めて見たときはまだ17、8だったからそんなもんか。

内容は、もちろん斎藤工演じる主人公が妊娠するんですが、いくら30分ものとはいえ、やっと第1話のラストで妊娠が発覚するって遅くないですか? タイトルでそうなるのはわかってるんだから、もっと急いでほしい。それか、妊娠発覚からスタートして回想でそれまでを描くとか。

面白いとは思わないけど、面白くないとも断定できないので、とりあえず第2話は見ます。

でも何か最近、ありえない設定のテレビドラマが増えましたよね。私は山田太一さんが書くようなごく普通のホームドラマが一番好みなんですが。テレビドラマではね。映画はまた別だけど。


『三千円の使いかた』
これはつい先日、原作小説を読んだところ、あまりにつまらなかったので見るのやめようかと思ったんですが、読み終わったときにはちょうど初回の放送が終わって録画してたので、これも何かの縁かと思い、見てみました。

お金の側面から登場人物の側面を照らそうというのはいいと思うんですよ。何だかんだいっても、やっぱり金がないと生きていけないし、生活とは金の計算をすることだと思うし。

でも、それなら、もっと極貧の人を主役に据えるべきじゃないですかね? 葵わかながいくら貯金10万しかないといっても、貯めようと思えば貯められる人でしょ。ちゃんとした職業をもっているわけだし。

原作では、小森安生という、定職をもたないのにやたらモテる魅力的な男が出てきますが、彼を主役にしたほうが面白いと思う。

第1話のサブタイトルは「固定費を見直そう」で、これは小説の第1章のサブタイトルとまったく同じ。第2話も同様。ということは、このあとの展開はすべて原作通りということですね。リタイアを決意。

原作では、主人公の彼氏が奨学金が原因の借金地獄に見舞われるという災難が待ってますが、奨学金を借りたら借金地獄に陥るこの社会のあり方が何よりもまず間違っているはずなのに、そこには少しも疑問の目を向けず、借りたのだから返さないといけない、返すにはどうしたらいいか、そんな小手先のことばかりで右往左往されても、読んでるこちらは少しも楽しくない。

もっと根っこから考えるべきです。

もう見ませんが、画面はカラフルで楽しかった。葵わかなの自室とか職場とか服装とか、赤や黄色など原色をたくさん使ってましたね。冒頭がミュージカルだったので『ラ・ラ・ランド』みたいなのを狙ってるのかと思ったらそうでもなかった。中尾ミエを使ってるからもっと歌うのかと期待したけど、ぜんぜん違った。

でも次回は中尾ミエが主役だからかなり歌うのかしら。リタイアはとりあえずやめて次だけでも見てみようかな。


『Get Ready!』
『かがみの孤城』で主人公の声を演じた當真あみという女優見たさで見始めたんですが、どうにもこうにもつまらない。

妻夫木聡演じる闇医者のチームが、通常の医療では助けられない人を日本の医療では認められていない術式で助けていくお話らしいんですが、闇医者、つまりモグリの医者といえば、ちょうどいま『ブラックジャック』を30年ぶりに読み返してまして、どうしても比べてしまう。妻夫木の役は、髪型といい、右半分の白髪といい、完全にブラックジャックを意識してますよね。手塚治虫に挑戦状をたたきつけるのはすごいと思うけど、いかんせん、あの不世出の天才はやっぱりすごかったという感想しかない。心意気は買いますが、それだけではね。これを続けて見るくらいなら『ブラックジャック』を繰り返し読んだほうが断然いいので、1話でリタイア。

そもそも、闇医者が徒党を組んでる時点でつまらない。やっぱりアウトローは一匹狼でなきゃ。

それにつけても『ブラックジャック』のすごさよ。あのクオリティを毎週保つだけでもすごいのに、他に何本も連載を抱えていたわけで、天才ってこういう人を言うんだろうなと、読めば読むほど打ちのめされてます。


『我らがパラダイス』
白川和子を久しぶりに見ました。知らない人のほうが多いでしょうが、日活ロマンポルノの第1号作品『団地妻 昼下がりの情事』の主演女優です。

伊藤洋三郎さんも久しぶりに見ました。有名な役者ではないけど、私の最後の現場仕事(土曜ワイド劇場)でご一緒した人。伊藤さんの長台詞のあるカットで、別の役者がNG連発して何度もやり直しさせられてたけど、いやな顔ひとつ見せずにまったく同じ芝居を淡々と繰り返していた姿にプロ根性を見ました。マイクを振るこっちは悲鳴上げそうなくらいしんどかったけど。でも長回しの緊張感というのは思い出しただけでたまらんものがありますな。しんどいけど面白かった。

高岡早紀も撮影所で本物見ました。まだ妹がタレント(モデル?)になる前で、やたら似てる人が一緒にいるなと思ったら、妹が付き人をやってるとあとで聞きました。映画やテレビで見るぶんには少しもかわいいと思えないのに、実物はめちゃかわいかった。レンズを通すと美しさが減じるようです。

ってなことを考えてたら第1話終わってしまった。少しも物語に入りこめなかった。クレジットを見てびっくりしたんですが、これ脚本が尾崎将也先生なんですね。うーん、少しも尾崎さんらしくない感じ。リタイアします。


『ブラッシュアップライフ』
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バカリズム脚本なら見ないわけにはいかない。そして期待にたがわぬ面白さ!

とにかく前半の会話が楽しい。三人の芝居がかなり練り上げられていてグイグイ引きつけられる。テンポが速く、緩急のつけ方も素晴らしい。惜しむらくは、ファミレスやカラオケボックスで会話しているときに、意味もなくカットを割ること。セリフが面白くて充実した芝居を繰り広げているなら、カットを割らず、カメラ据えっぱなしで長回しで見せてほしかった。安藤サクラの「同級生で落ちぶれてる人いないのかな」みたいなセリフは、さすがにクロースアップでいいと思うんですが、それ以外で意味もなく寄ったり引いたり、アングルを変えたりするのは、この監督さんは役者の芝居を信用してないのかなと邪推してしまいます。

来世がオオアリクイと知った安藤サクラがもう一度、徳を積み直すために人生をやり直す物語。結局、最後は死んで望み通りの来世を手に入れるのか。それとも、過去を変えたために交通事故に遭って死ぬこと自体がなかったことになるのか。どっちだろう。バカリズムだけに凡庸な結末はありえない。どれぐらいこちらの予想を裏切ってくれるのか、楽しみで仕方ない。

それにつけても、あのようなガールズトークを普通に書けるって、やはり彼の中には「オバサン」が棲んでるんでしょうね。でないと書けないでしょう、あれは。『架空OL日記』なんかやってたのも、自身の中の女性を自覚していたからでしょうな。すぐれた作家はやはり自分の中に膨大な数の人間を飼っているようです。

夏帆は渋谷のドンキホーテで見たことあるけど、「あ、夏帆だ」と凝視したら、「何だこいつ」みたいな目で睨んできて、すたこらさっさと去っていく姿がかっこよかった。テレビや映画で見てるのとぜんぜん印象が違った。それもまた素敵。


『久保さんは僕(モブ)を許さない』
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モブというのは「群衆」という意味。民衆のデモとか、そういう人間の大群が出てくるシーンを「モブ・シーン」と言ったりします。

主人公の白石君はあまりに存在感がないので、モブの一人、つまりは背景みたいになってしまっていて、というか、もはや透明人間に近いみたいで、毎日登校してるのにクラスメイトから「不登校になったのかな」と心配されたり、毎回授業終わりに先生のところまで行って「ちゃんと出席してました」と言わなきゃいけないとか、そんなのありえんだろー! と突っ込んでしまいますが、まぁそれぐらい存在感の薄い人間という設定のほうが物語が活きてくるのかもしれない。

で、肝心の物語は、何とクラスで一番の美人である久保さんだけが唯一主人公の存在に気づいているという、何とも都合のいい設定。気づくだけでなく好きらしく、第1話でもうデートの約束をしてしまった。

ここには何の葛藤もありません。葛藤がないということはドラマがないということ。なのに、まったく退屈しないのはどうしてだろう。久保さんが白石君の机に座って、彼を振り返って微笑むときなど、完全に白石君目線なので、彼女が振り向くとまるで我々視聴者に向って微笑んでいるようで、クラクラしてしまう。なるほど、そういう狙いか。作者の術中に完全にハマってしまった私。


『リバーサルオーケストラ』
瀧内公美目当てで見始めたんですが、どうにもこうにもつまらない。

田中圭が少しも名うての指揮者に見えないし、門脇麦も天才バイオリニストに見えない。瀧内公美なんてその他大勢と同じような扱い。これから出番が増えるのかもしれないけど、もう見ません。

門脇麦が公務員の服務規程に違反して自宅でバイオリンを教えていたことを田中圭が調べてたとか、それはいつからいつのことなんでしょう? 彼はそういうことを調べさせながら、オケのみんなに「なっちゃいない!」と怒鳴り散らしてたんですか? 背後に流れる「時間」をどう処理するかという問題がおろそかになってませんかね? 主役は門脇麦のはずなのに、いきなり田中圭が帰国したころにフラッシュバックしたり、いったい誰を軸にして見ていいのやら、途方に暮れてしまいました。


というわけで、7本見始めて生き残っているのは3本。完走を予感できるのが『ブラッシュアップライフ』の1本だけって、何か淋しい。

後半戦は『星降る夜に』『夕暮れに、手をつなぐ』『大雪海のカイナ』『火狩りの王』などを見始める予定です。

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