2022年ももうそろそろ終わりですね。いつもは映画とテレビドラマと本のベストテンを選ぶだけですが、今年からテレビのドキュメンタリーや教養番組のベストテンもやってみようかな、と遊んでみました。
「テン」といっても、同じ問題を扱った番組で複数気に入ったものがある場合は「1本」にまとめてます。なので、合計本数は10本を超えます。映画のベストテンと同じく、数にこだわらないのが私の信条です。
では10位から行きましょう。
第10位『全告白! 国際ロマンス詐欺 ~漫画家が陥った‟偽りの恋”~』(BS1スペシャル、2月19日)
井出智香恵というマンガ家がマーク・ラファロを名乗る詐欺師に騙され、奪われた大金を取り戻すと決意するまでの物語。この井出さんという方はかなり不幸な結婚生活を強いられた過去があり、苦労してマンガ家として有名になり、子どもも育て上げ、これだけ苦労したのだから何か報われるようなことがあってもいいだろう、という心の隙に付け込まれたと。
「絶対取り返す!」との決意表明に拍手喝采。でも実際、取り戻せたかのかどうか。追跡取材とかしてないのかな。続きが見たい。でも、こういう犯人を捕まえて有罪にもちこんでお金を取り戻すのはかなり難しいんでしょうね。
心の隙間に付け込まれるというのは誰にでも起こりうること。気をつけたい。
第9位『単細胞の‟知性”に迫る 謎多き粘菌の世界』(サイエンスZERO、11月13日)
粘菌って何かすごいらしいですよ。脳がなく、というか単細胞なのに、迷路を解いたりするんですって。えさの取り方にも賢い戦略があったり、ものすごい知性を秘めていて、粘菌を研究することで「知性」の何たるかがわかるんじゃないか、と言われているそうです。そんなのこの番組を見なかったら知らないままだった。これはもっと広く世間に知らしむべき事実ではないかと思う。
第8位『狙われた中小企業 ‟経済安保”の裏側でなにが』(クローズアップ現代、11月16日)
これももっと広く世間に知られるべき事件ではないでしょうか。
横浜にある機械メーカーは、中小企業ながら噴霧乾燥機の国内シェア7割を誇る会社で、噴霧乾燥機とは、牛乳を粉ミルクにしたり、コーヒー豆からインスタントコーヒーを作るのに使われる機械だそうです。その技術を応用して、近年ではスマホや半導体の製造にも欠かせないらしい。
その会社の社長が公安に逮捕された。容疑は「生物兵器を作る機械を敵国に売っていた」という驚くべきもの。大量破壊兵器を抑制する国際的な枠組みのなかで、すでに9年前から生物兵器を作れる技術を輸出する際には経済産業大臣の許可がいる。しかしこの会社はその許可を得てなかった、と。
しかし、実際にはその会社の噴霧乾燥機では生物兵器は作れないんです。警察が行った実験はおかしいと従業員が必死で実験を繰り返した結果、警察の実験の不当性が証明された。しかし、社長の右腕とも言える社員がその間に亡くなってしまった。
これはもう権力による間接的な殺人です。容疑は晴れたといっても、世間がどう思うかはまた別の問題だし。冤罪と認められても容赦なく責めるのが世間。加害者ではなく被害者を責めるのも世間。あぁいやだいやだ。
第7位『‟100円均一”もう限界!? 実は大ピンチのワケ』(クローズアップ現代、4月13日)
100円ショップが日本からなくなるかもしれないという衝撃のレポートでした。
消費者が安さばかり求め、100円ショップなのに100円じゃないなんておかしいと平気で言うせいで、100円ショップはかなり苦しい経営を強いられているようです。もう限界と廃業するところがあとを絶たないとか。
実際、中国や東南アジアなど、100円ショップで売られている商品の部品を作るメーカーは「もう日本とは取引しない」と言っているそうです。なぜなら、安く買い叩かれるから。日本の企業に売っても儲けが出ない、だから欧米の企業と取引すると。儲けられないなら当たり前の判断ですね。
で、日本の部品メーカーが何をやっているかというと、ある製品(電卓だったか?)の中の回路を見てみると、詳しく憶えてませんが、ありえない繋ぎ方がされているらしく、なぜそういう部品を廃棄しないかというと、「ロスが出ると儲けが薄くなるから」。少しでもロスを出さないために失敗した部品を何とか使えるようにありえない繋ぎ方でしのいでいる実態。
値上げ値上げで大変なご時世ですが、でも本当に安さばかりを追求するのはやめたほうがいいように思う。安さを追求する⇒利益が薄くなる⇒給料が上がらない⇒さらに安さを求めるという悪循環に陥ってしまっています。
第6位『脱北ユーチューバー』(BS1スペシャル、12月4日)
これについては、見たときに感想を書いたのでこちらをどうぞ⇒『脱北ユーチューバー』感想(一生懸命生きる人とそうでない人)
第5位『ロシアが‟友好国”を拡大? 知られざる国際戦略の実態』(クロースアップ現代、9月28日)
2017年にハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインの性暴力が告発されてMeToo運動が湧き起こってから5年、ついに日本映画界の性暴力が暴露されました。
次々と芋づる式に悪人が業界から追放され、彼らが関係した映画はお蔵入りとなり、反論する者や雲隠れする者など様々ですが、まだまだ氷山の一角でしょう。
私は男だから、現場にいたときもさほどセクハラを受けていたわけではないけど、それでも多少はあった。
でも、それ以上に、セクハラの加害者だった可能性のほうが高い。というか、絶対そうだった。相手が嫌がるとかまったく考えずにそういう言葉を発していたと思う。
詳しくはこちらをご覧ください⇒私が加担した映画界のセクハラ
マリリン・モンローも同様の被害に遭っていたようで、日本でも欧米でも、彼女が男からのセクハラ・パワハラといかに戦ったかという番組が作られました。どちらも興味深かった。あれだけハリウッドの大物たちに喧嘩を売ったから殺されたんだろうか、と邪推したくなります。
でも、まだまだ彼女の死には謎が多い。麻薬でボロボロだったからオーバードーズで死んだのかもしれないし、単に自殺だったのかもしれない。ケネディの愛人だったからCIAに殺された可能性も大いにある。話がそれてきたのでこのへんで。
第3位『問われる政治との距離 激震・旧統一教会と日本政治』(報道1930、7月22日)
日本人からカネを吸い取って韓国や北朝鮮に送金しているのに、嫌韓感情を隠さなかったはずのネトウヨは沈黙したまま。卑怯なり。
『報道1930』がこの問題を取り扱ったときは、「TBSは覚悟を決めたんだね。応援するよ」というツイートがあって私も応援してたが、最近、取り上げることが少なくなってきた。せめて増税とか軍拡とか岸田の悪辣非道を攻撃してほしいのだが、ロシアばかり取り上げてないか。
自民党は、旧統一教会問題のほとぼりが冷めるのを待ってるはずだから。冷めさせてはいけないと思う。
第2位『中井久夫スペシャル』(100分de名著、全4回、12月)
今年は主治医との別れの年でした。胃ガンに冒されてほとんど廃業状態。もう医者としての復帰は無理でしょう。
そんなときに見たのが精神科医・中井久夫さんの業績を、同業の斉藤環さんがプレゼンするこの番組。「病は能力である」とか「多層的な文化が病を包む」とか、魅力的な言葉が並びます。
結局、多数派が「正常」で、少数派が「病気」とされてきただけであり、それを「能力」と捉える中井久夫さんのやさしさに涙があふれました。
「普遍症候群」と「文化依存症候群」という二つの概念しかなかった精神医学の常識に対し、中井さんは「個人症候群」というまったく新しい概念を発明したそうで、どんな分野でも「発明」する人の偉大さに触れると素直に頭が垂れます。
実は中井久夫さんの著作は一冊も読んだことがありません。いい機会なので読んでみようと思います。まずは斎藤環さんイチ推しの『治療文化論』からかな。
第1位『土井善晴 家庭料理はええかげんでええんです! 「一汁一菜」で始まる暮らしの楽しみ』(情熱大陸、10月23日)
『一汁一菜でよいという提案』を読んでも、なるほどとしか思わなかったけど、その素地があったからとはいえ、この番組には生活を変えられました。まったくと言っていいほど料理をしなかった私が、毎日、土井さんの提唱する「具だくさんお味噌汁」を作るようになったのです。ごぼうや里芋の皮をむいたり、大きくて固いかぼちゃを薄く切ろうと悪戦苦闘したりね。
「百聞は一見に如かず。百見は一感に如かず。百感は一行に如かず」
これは小学生のときに何かのテレビ番組で言われていた言葉です。
上の10位から2位までは、感じるものはあれど行動が変わることはなかった。この番組には自然と重い腰を上げてくれる力があったので、これが堂々のベストワンです!
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2023ドキュメンタリー・教養番組ベストテン!
「テン」といっても、同じ問題を扱った番組で複数気に入ったものがある場合は「1本」にまとめてます。なので、合計本数は10本を超えます。映画のベストテンと同じく、数にこだわらないのが私の信条です。
では10位から行きましょう。
第10位『全告白! 国際ロマンス詐欺 ~漫画家が陥った‟偽りの恋”~』(BS1スペシャル、2月19日)
井出智香恵というマンガ家がマーク・ラファロを名乗る詐欺師に騙され、奪われた大金を取り戻すと決意するまでの物語。この井出さんという方はかなり不幸な結婚生活を強いられた過去があり、苦労してマンガ家として有名になり、子どもも育て上げ、これだけ苦労したのだから何か報われるようなことがあってもいいだろう、という心の隙に付け込まれたと。
「絶対取り返す!」との決意表明に拍手喝采。でも実際、取り戻せたかのかどうか。追跡取材とかしてないのかな。続きが見たい。でも、こういう犯人を捕まえて有罪にもちこんでお金を取り戻すのはかなり難しいんでしょうね。
心の隙間に付け込まれるというのは誰にでも起こりうること。気をつけたい。
第9位『単細胞の‟知性”に迫る 謎多き粘菌の世界』(サイエンスZERO、11月13日)
粘菌って何かすごいらしいですよ。脳がなく、というか単細胞なのに、迷路を解いたりするんですって。えさの取り方にも賢い戦略があったり、ものすごい知性を秘めていて、粘菌を研究することで「知性」の何たるかがわかるんじゃないか、と言われているそうです。そんなのこの番組を見なかったら知らないままだった。これはもっと広く世間に知らしむべき事実ではないかと思う。
第8位『狙われた中小企業 ‟経済安保”の裏側でなにが』(クローズアップ現代、11月16日)
これももっと広く世間に知られるべき事件ではないでしょうか。
横浜にある機械メーカーは、中小企業ながら噴霧乾燥機の国内シェア7割を誇る会社で、噴霧乾燥機とは、牛乳を粉ミルクにしたり、コーヒー豆からインスタントコーヒーを作るのに使われる機械だそうです。その技術を応用して、近年ではスマホや半導体の製造にも欠かせないらしい。
その会社の社長が公安に逮捕された。容疑は「生物兵器を作る機械を敵国に売っていた」という驚くべきもの。大量破壊兵器を抑制する国際的な枠組みのなかで、すでに9年前から生物兵器を作れる技術を輸出する際には経済産業大臣の許可がいる。しかしこの会社はその許可を得てなかった、と。
しかし、実際にはその会社の噴霧乾燥機では生物兵器は作れないんです。警察が行った実験はおかしいと従業員が必死で実験を繰り返した結果、警察の実験の不当性が証明された。しかし、社長の右腕とも言える社員がその間に亡くなってしまった。
これはもう権力による間接的な殺人です。容疑は晴れたといっても、世間がどう思うかはまた別の問題だし。冤罪と認められても容赦なく責めるのが世間。加害者ではなく被害者を責めるのも世間。あぁいやだいやだ。
第7位『‟100円均一”もう限界!? 実は大ピンチのワケ』(クローズアップ現代、4月13日)
100円ショップが日本からなくなるかもしれないという衝撃のレポートでした。
消費者が安さばかり求め、100円ショップなのに100円じゃないなんておかしいと平気で言うせいで、100円ショップはかなり苦しい経営を強いられているようです。もう限界と廃業するところがあとを絶たないとか。
実際、中国や東南アジアなど、100円ショップで売られている商品の部品を作るメーカーは「もう日本とは取引しない」と言っているそうです。なぜなら、安く買い叩かれるから。日本の企業に売っても儲けが出ない、だから欧米の企業と取引すると。儲けられないなら当たり前の判断ですね。
で、日本の部品メーカーが何をやっているかというと、ある製品(電卓だったか?)の中の回路を見てみると、詳しく憶えてませんが、ありえない繋ぎ方がされているらしく、なぜそういう部品を廃棄しないかというと、「ロスが出ると儲けが薄くなるから」。少しでもロスを出さないために失敗した部品を何とか使えるようにありえない繋ぎ方でしのいでいる実態。
値上げ値上げで大変なご時世ですが、でも本当に安さばかりを追求するのはやめたほうがいいように思う。安さを追求する⇒利益が薄くなる⇒給料が上がらない⇒さらに安さを求めるという悪循環に陥ってしまっています。
第6位『脱北ユーチューバー』(BS1スペシャル、12月4日)
これについては、見たときに感想を書いたのでこちらをどうぞ⇒『脱北ユーチューバー』感想(一生懸命生きる人とそうでない人)
第5位『ロシアが‟友好国”を拡大? 知られざる国際戦略の実態』(クロースアップ現代、9月28日)
『ウクライナ侵攻が変える世界 2014 対立の原点』(ETV特集、3月19日)
『 戦禍の国のキックオフ ~サッカーが映すウクライナのいま~』(NHKスペシャル、12月10日)
2022年はやはり国際的には「ロシアがウクライナに侵略した年」として記憶されるのでしょう。
ETV特集が2014年に放送した番組に今回の侵略を踏まえて再編集した番組では、ウクライナとロシアの因縁を深掘りしていてとても興味深かった。特に、ウクライナはロシア憎しのために、敵の敵は味方ということで、当時はソ連だったけど、ソ連の敵ナチス・ドイツに協力した。ロシアはその歴史的事実を決して許せず、ウクライナを「裏切り者」と思っている。ウクライナにはウクライナの言い分があり、ロシアにはロシアの言い分がある。客観的に見ればロシアが悪いに決まってるけど、ロシアの主観ではウクライナのほうが悪いとなる。戦争とはそういうもの。ロシアは自分たちこそ正義と思っているからタチが悪い。
あと、『クローズアップ現代』では、ロシアはアフリカや中南米諸国と関係を密にしていて、経済援助を惜しまないことが紹介されました。ブルキナファソ外相は「トゲがある花とわかっていても手に取らないといけないときがある」と、ロシアとの関係強化は必要悪だと捉えている。問題の根は深くなるばかり。
第4位『封じられてきた声 映画界の性暴力 ~被害をなくすために~』(クローズアップ現代、6月15日)2022年はやはり国際的には「ロシアがウクライナに侵略した年」として記憶されるのでしょう。
ETV特集が2014年に放送した番組に今回の侵略を踏まえて再編集した番組では、ウクライナとロシアの因縁を深掘りしていてとても興味深かった。特に、ウクライナはロシア憎しのために、敵の敵は味方ということで、当時はソ連だったけど、ソ連の敵ナチス・ドイツに協力した。ロシアはその歴史的事実を決して許せず、ウクライナを「裏切り者」と思っている。ウクライナにはウクライナの言い分があり、ロシアにはロシアの言い分がある。客観的に見ればロシアが悪いに決まってるけど、ロシアの主観ではウクライナのほうが悪いとなる。戦争とはそういうもの。ロシアは自分たちこそ正義と思っているからタチが悪い。
あと、『クローズアップ現代』では、ロシアはアフリカや中南米諸国と関係を密にしていて、経済援助を惜しまないことが紹介されました。ブルキナファソ外相は「トゲがある花とわかっていても手に取らないといけないときがある」と、ロシアとの関係強化は必要悪だと捉えている。問題の根は深くなるばかり。
『マリリン・モンローとハリウッドの闇 ~映画に夢を求めて~』(ダークサイドミステリー、8月4日)
『‟マリリン”を生きる』(BS世界のドキュメンタリー、10月18日)
2017年にハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインの性暴力が告発されてMeToo運動が湧き起こってから5年、ついに日本映画界の性暴力が暴露されました。
次々と芋づる式に悪人が業界から追放され、彼らが関係した映画はお蔵入りとなり、反論する者や雲隠れする者など様々ですが、まだまだ氷山の一角でしょう。
私は男だから、現場にいたときもさほどセクハラを受けていたわけではないけど、それでも多少はあった。
でも、それ以上に、セクハラの加害者だった可能性のほうが高い。というか、絶対そうだった。相手が嫌がるとかまったく考えずにそういう言葉を発していたと思う。
詳しくはこちらをご覧ください⇒私が加担した映画界のセクハラ
マリリン・モンローも同様の被害に遭っていたようで、日本でも欧米でも、彼女が男からのセクハラ・パワハラといかに戦ったかという番組が作られました。どちらも興味深かった。あれだけハリウッドの大物たちに喧嘩を売ったから殺されたんだろうか、と邪推したくなります。
でも、まだまだ彼女の死には謎が多い。麻薬でボロボロだったからオーバードーズで死んだのかもしれないし、単に自殺だったのかもしれない。ケネディの愛人だったからCIAに殺された可能性も大いにある。話がそれてきたのでこのへんで。
第3位『問われる政治との距離 激震・旧統一教会と日本政治』(報道1930、7月22日)
『カルトとマインドコントロールの脅威』(町山智浩のアメリカの今を知るTV、10月6日)
『スクープ取材・旧統一教会 ‟知られざる被害”の告白(養子縁組のために出産せよ⁉)』(クローズアップ現代、11月15日)
日本の2022年最大のトピックは安倍銃殺でしょうね。そして、銃殺によって明らかになった自民党と旧統一教会との蜜月関係。日本人からカネを吸い取って韓国や北朝鮮に送金しているのに、嫌韓感情を隠さなかったはずのネトウヨは沈黙したまま。卑怯なり。
『報道1930』がこの問題を取り扱ったときは、「TBSは覚悟を決めたんだね。応援するよ」というツイートがあって私も応援してたが、最近、取り上げることが少なくなってきた。せめて増税とか軍拡とか岸田の悪辣非道を攻撃してほしいのだが、ロシアばかり取り上げてないか。
自民党は、旧統一教会問題のほとぼりが冷めるのを待ってるはずだから。冷めさせてはいけないと思う。
第2位『中井久夫スペシャル』(100分de名著、全4回、12月)
今年は主治医との別れの年でした。胃ガンに冒されてほとんど廃業状態。もう医者としての復帰は無理でしょう。
そんなときに見たのが精神科医・中井久夫さんの業績を、同業の斉藤環さんがプレゼンするこの番組。「病は能力である」とか「多層的な文化が病を包む」とか、魅力的な言葉が並びます。
結局、多数派が「正常」で、少数派が「病気」とされてきただけであり、それを「能力」と捉える中井久夫さんのやさしさに涙があふれました。
「普遍症候群」と「文化依存症候群」という二つの概念しかなかった精神医学の常識に対し、中井さんは「個人症候群」というまったく新しい概念を発明したそうで、どんな分野でも「発明」する人の偉大さに触れると素直に頭が垂れます。
実は中井久夫さんの著作は一冊も読んだことがありません。いい機会なので読んでみようと思います。まずは斎藤環さんイチ推しの『治療文化論』からかな。
第1位『土井善晴 家庭料理はええかげんでええんです! 「一汁一菜」で始まる暮らしの楽しみ』(情熱大陸、10月23日)
『一汁一菜でよいという提案』を読んでも、なるほどとしか思わなかったけど、その素地があったからとはいえ、この番組には生活を変えられました。まったくと言っていいほど料理をしなかった私が、毎日、土井さんの提唱する「具だくさんお味噌汁」を作るようになったのです。ごぼうや里芋の皮をむいたり、大きくて固いかぼちゃを薄く切ろうと悪戦苦闘したりね。
「百聞は一見に如かず。百見は一感に如かず。百感は一行に如かず」
これは小学生のときに何かのテレビ番組で言われていた言葉です。
上の10位から2位までは、感じるものはあれど行動が変わることはなかった。この番組には自然と重い腰を上げてくれる力があったので、これが堂々のベストワンです!
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