BS1スペシャル『脱北ユーチューバー』をとても興味深く見ました。
現在の北朝鮮では、MZ世代と言われる世代があり、これはミレニアム世代とZ世代を合わせた言葉で、1980年代半ばから2010年に生まれた若者のことを指すという。
脱北者といえば、昔は生活苦で脱北したが、いまは体制への不満で脱北する。親世代は国からの配給があったが、MZ世代は何ももらえず、そうした不満が脱北者の急増を招いているとか。
番組では、主に三人の女性脱北ユーチューバーに焦点を当てていました。
カン・ナラ(25歳)
脱北ユーチューバーの草分け的存在のカン・ナラは、脱北してからダイエットにエステにブランド品などを買いあさり(おそらく整形も何度もし)ユーチューバーとして成功。
彼女の話は北朝鮮の驚くべき実態を面白おかしく告発していました。
「ジーンズ禁止」
「牛を盗んだら公開処刑。私の友人は牛を盗んで食べてしまい、公開処刑となり、葬式も行われなかった」
「韓流ドラマも禁止。DVDは見たら焼く」
など、これだけでもいかに当局が厳しく監視・取り締まりをしているかがわかる。
カン・ナラがユーチューバーとして活動を始めたのは、ちょうど2018年に南北首脳会談が行われたころで、融和ムードの広がりがあり、さらに2020年の北朝鮮男性と韓国女性の恋愛ドラマ『愛の不時着』により空前の北朝鮮ブームが起こる。かなりの大儲けをしたんでしょう。
有名ブランドのモデルに抜擢されたり、テレビ出演の依頼も殺到。ファッション誌の編集長が言うには、
「明るさの裏に困難を乗り越えたイメージがあるのがいい」
しかし、近年の北朝鮮のミサイル連射で南北関係が悪化。北朝鮮の話題は嫌われるようになった。さらに、今年5月に北朝鮮に対し厳しい態度をとるユン・ソギョルが大統領に就任したため、さらに関係が悪化。互いにミサイルを発射するなど睨み合いが続く。
やはり朝鮮戦争はまだ終わっていないのだな、と思いました。
多くの人が誤解してますが、朝鮮戦争は終わっていません。あれは一時停戦状態がずっと何十年も続いているだけで終戦したわけではない。だからいまでも北緯38度線を境に睨み合いをしているし、北朝鮮は自国民が韓国人と接触することを決して許さない。韓国人と接触しただけで処刑された人も多いとか。
キム・ガヨン(31歳)
)
夫と子どもの三人暮らしのキム・ガヨン(画像の右側)。
「公開処刑なんか見てたから性格が歪んでしまったのね、なんて言われます。でも見たくて見ていたわけではなく、見なかったら殺されるかもしれないからしょうがなく見ていただけで……」
彼女は11歳のとき、商業施設の責任者で稼ぎの多い母親が、貧しい人たちに食料を与えていたら、突然当局に拘束され、拷問の末に処刑されたらしい。
何ともはや。彼女の曾祖父は、あのキム・イルソン国家主席と一緒に日本軍と戦った「パルチザン血統」と言われる人で、由緒正しい血筋とされているとか。それで裕福な暮らしができていた。しかも蓄財していたわけではなく、貧しい人々に施すなど慈善事業をしていた。でも殺された。
「北朝鮮では個人の成功は許されません。その人に忠誠を尽くす人が出てくるからです」
なるほどね。慈善事業をしていたからこそ当局は許さなかったわけだ。じゃ守銭奴として蓄財するなり、国家や国家関連企業に寄付や出資するなどしたほうがよかったってこと?
父親も後を追うように病死してしまい、脱北を決意。
「子どもが悪いことをすると、親が脱北者だからだ、と言われるから、ちゃんとしつけをしたい。脱北者への偏見をなくしたい。一生懸命生きなきゃいけない」
しかし、南北関係の悪化により動画再生数は激減。もちろん収入も激減してしまった。
リュ・ヒジン(31歳)
元アーティスティック・スイミング(シンクロナイズド・スイミング)代表選手のリュ・ヒジン。
彼女は比較的最近脱北したニューカマーで、もう北朝鮮ネタは受けないため、やり始めたのはチマチョゴリを着て水中ダンス。うーん、そんなの誰が見たがるのか。少しも美しくないし。
彼女は幼い頃、両親が離婚し、父親に育てられた。父は名のある音楽家。英才教育を受け、小学生でアーティスティック・スイミングを始め、次々と受賞を重ねて父親の夢でもあった国家代表選手となった。
しかし、16歳のときに海外の北朝鮮レストランで働いている先輩が帰国し、まるで韓国の芸能人みたいに輝いて見えたので、アーティスティック・スイミングをやめ、ヨーロッパの北朝鮮レストランで働くことにした。北朝鮮レストランとは、北朝鮮の企業が資本を出し海外で展開するレストランのことらしく、北朝鮮のいいイメージを広げるためのものなんでしょうね。北朝鮮と国交のない日本ではお目にかかれませんが。
父親とは電話で話すことすら禁止。でも、国の上司と電話で話すとき、いつも父親が横で会話を聞いていたとか。「おまえの声だけ聴いて帰っていくんだ」とこっそり教えてもらったと、リュ・ヒジンは涙をこらえて言う。
しばらくたってから、常連客の韓国人と連絡を取っていたことが当局にばれ、強制帰国を命じられた。帰れば政治犯収容所に収監されることは目に見えている。そこで追っ手を必死で振り払ってヨーロッパの韓国大使館に逃げ込んだ。
父親から最後にもらった手紙にはこう書かれていたという。
「娘に恥じないような父親になれるよう頑張る」
「だから私ももっと一生懸命生きないといけない」と彼女は言うが、それならチマチョゴリを着て水中ダンスとかじゃなく、お父さんの夢でもあったアーティスティック・スイミングの選手として再起すればいいのに。
と思っていたら、実際そうなりました。
世界140か国の首長が集まる国際会議での水中ショーの主役兼演出を依頼された、と。
必死で練習を重ね、ショーは成功した。「氷上がキム・ヨナなら水中はリュ・ヒジンだ」とまで言われる大成功で、ショーを撮影した動画も大好評とか。
私の目にはあまりいいショーには見えなかったけど、このリュ・ヒジンさんが一番地に足をつけて「一生懸命生きている」って感じがしましたね。母国の体制がいやで命からがら逃げだしたことを負い目に思わず、でも決して忘れず、これから韓国人として生きていくんだという決意。そしていつか父親と再会したいという夢。目頭が熱くなりました。
キム・ガヨンのその後
キム・ガヨンは、収入が激減したのでネイリストの国家資格を取るべく、勉強に励んだ。不合格だったが、さばさばした笑顔で、ベストは尽くしたという感じ。一生懸命生きている。
「ユーチューバーとしてもネイリストとしても頑張りたい」
その意気やよし! しかし、残る一人は……
カン・ナラのその後
北朝鮮ネタが受けないとなると、ゴルフのつたない練習風景をアップしたり、それもダメなら水着姿を披露したり。
いや、もう脱ぐとか水着とか、そんなことする時点で終わってるじゃないですか。
それでも『資本主義ロマンス』というタイトルのネットドラマの主役に抜擢される。が、どうにも芝居がうまくないし、仕事中も何となくにやけ顔だし、この人だけ浮ついた生き方をしていると感じました。いまはまだオファーがあるかもしれないけど、そのうち何もなくなるんじゃないですかね。
韓国人として一生懸命生きている姿を見せたいというけれど、「一生懸命生きる」と「一生懸命生きているのを見せる」はぜんぜん違う。前者は本当に一生懸命生きないといけないが、後者は「一生懸命生きてるように見えればいい」わけですからね。
わが国でも、政府の無為無策について「やってる感」なんて言葉が最近よく使われますが、あれと同じでしょ。カン・ナラの言動は「一生懸命生きてる感」を出しているだけ。そう見えているうちはいいけど、化けの皮が剥がれたら……と考えると恐ろしい。
私は、アーティスティック・スイマーのリュ・ヒジンと、ネイリストになるべく奮闘中のキム・ガヨンにもっと頑張ってほしい、幸せをつかんでほしいと強く思いました。
現在の北朝鮮では、MZ世代と言われる世代があり、これはミレニアム世代とZ世代を合わせた言葉で、1980年代半ばから2010年に生まれた若者のことを指すという。
脱北者といえば、昔は生活苦で脱北したが、いまは体制への不満で脱北する。親世代は国からの配給があったが、MZ世代は何ももらえず、そうした不満が脱北者の急増を招いているとか。
番組では、主に三人の女性脱北ユーチューバーに焦点を当てていました。
カン・ナラ(25歳)
脱北ユーチューバーの草分け的存在のカン・ナラは、脱北してからダイエットにエステにブランド品などを買いあさり(おそらく整形も何度もし)ユーチューバーとして成功。
彼女の話は北朝鮮の驚くべき実態を面白おかしく告発していました。
「ジーンズ禁止」
「牛を盗んだら公開処刑。私の友人は牛を盗んで食べてしまい、公開処刑となり、葬式も行われなかった」
「韓流ドラマも禁止。DVDは見たら焼く」
など、これだけでもいかに当局が厳しく監視・取り締まりをしているかがわかる。
カン・ナラがユーチューバーとして活動を始めたのは、ちょうど2018年に南北首脳会談が行われたころで、融和ムードの広がりがあり、さらに2020年の北朝鮮男性と韓国女性の恋愛ドラマ『愛の不時着』により空前の北朝鮮ブームが起こる。かなりの大儲けをしたんでしょう。
有名ブランドのモデルに抜擢されたり、テレビ出演の依頼も殺到。ファッション誌の編集長が言うには、
「明るさの裏に困難を乗り越えたイメージがあるのがいい」
しかし、近年の北朝鮮のミサイル連射で南北関係が悪化。北朝鮮の話題は嫌われるようになった。さらに、今年5月に北朝鮮に対し厳しい態度をとるユン・ソギョルが大統領に就任したため、さらに関係が悪化。互いにミサイルを発射するなど睨み合いが続く。
やはり朝鮮戦争はまだ終わっていないのだな、と思いました。
多くの人が誤解してますが、朝鮮戦争は終わっていません。あれは一時停戦状態がずっと何十年も続いているだけで終戦したわけではない。だからいまでも北緯38度線を境に睨み合いをしているし、北朝鮮は自国民が韓国人と接触することを決して許さない。韓国人と接触しただけで処刑された人も多いとか。
キム・ガヨン(31歳)
)
夫と子どもの三人暮らしのキム・ガヨン(画像の右側)。
「公開処刑なんか見てたから性格が歪んでしまったのね、なんて言われます。でも見たくて見ていたわけではなく、見なかったら殺されるかもしれないからしょうがなく見ていただけで……」
彼女は11歳のとき、商業施設の責任者で稼ぎの多い母親が、貧しい人たちに食料を与えていたら、突然当局に拘束され、拷問の末に処刑されたらしい。
何ともはや。彼女の曾祖父は、あのキム・イルソン国家主席と一緒に日本軍と戦った「パルチザン血統」と言われる人で、由緒正しい血筋とされているとか。それで裕福な暮らしができていた。しかも蓄財していたわけではなく、貧しい人々に施すなど慈善事業をしていた。でも殺された。
「北朝鮮では個人の成功は許されません。その人に忠誠を尽くす人が出てくるからです」
なるほどね。慈善事業をしていたからこそ当局は許さなかったわけだ。じゃ守銭奴として蓄財するなり、国家や国家関連企業に寄付や出資するなどしたほうがよかったってこと?
父親も後を追うように病死してしまい、脱北を決意。
「子どもが悪いことをすると、親が脱北者だからだ、と言われるから、ちゃんとしつけをしたい。脱北者への偏見をなくしたい。一生懸命生きなきゃいけない」
しかし、南北関係の悪化により動画再生数は激減。もちろん収入も激減してしまった。
リュ・ヒジン(31歳)
元アーティスティック・スイミング(シンクロナイズド・スイミング)代表選手のリュ・ヒジン。
彼女は比較的最近脱北したニューカマーで、もう北朝鮮ネタは受けないため、やり始めたのはチマチョゴリを着て水中ダンス。うーん、そんなの誰が見たがるのか。少しも美しくないし。
彼女は幼い頃、両親が離婚し、父親に育てられた。父は名のある音楽家。英才教育を受け、小学生でアーティスティック・スイミングを始め、次々と受賞を重ねて父親の夢でもあった国家代表選手となった。
しかし、16歳のときに海外の北朝鮮レストランで働いている先輩が帰国し、まるで韓国の芸能人みたいに輝いて見えたので、アーティスティック・スイミングをやめ、ヨーロッパの北朝鮮レストランで働くことにした。北朝鮮レストランとは、北朝鮮の企業が資本を出し海外で展開するレストランのことらしく、北朝鮮のいいイメージを広げるためのものなんでしょうね。北朝鮮と国交のない日本ではお目にかかれませんが。
父親とは電話で話すことすら禁止。でも、国の上司と電話で話すとき、いつも父親が横で会話を聞いていたとか。「おまえの声だけ聴いて帰っていくんだ」とこっそり教えてもらったと、リュ・ヒジンは涙をこらえて言う。
しばらくたってから、常連客の韓国人と連絡を取っていたことが当局にばれ、強制帰国を命じられた。帰れば政治犯収容所に収監されることは目に見えている。そこで追っ手を必死で振り払ってヨーロッパの韓国大使館に逃げ込んだ。
父親から最後にもらった手紙にはこう書かれていたという。
「娘に恥じないような父親になれるよう頑張る」
「だから私ももっと一生懸命生きないといけない」と彼女は言うが、それならチマチョゴリを着て水中ダンスとかじゃなく、お父さんの夢でもあったアーティスティック・スイミングの選手として再起すればいいのに。
と思っていたら、実際そうなりました。
世界140か国の首長が集まる国際会議での水中ショーの主役兼演出を依頼された、と。
必死で練習を重ね、ショーは成功した。「氷上がキム・ヨナなら水中はリュ・ヒジンだ」とまで言われる大成功で、ショーを撮影した動画も大好評とか。
私の目にはあまりいいショーには見えなかったけど、このリュ・ヒジンさんが一番地に足をつけて「一生懸命生きている」って感じがしましたね。母国の体制がいやで命からがら逃げだしたことを負い目に思わず、でも決して忘れず、これから韓国人として生きていくんだという決意。そしていつか父親と再会したいという夢。目頭が熱くなりました。
キム・ガヨンのその後
キム・ガヨンは、収入が激減したのでネイリストの国家資格を取るべく、勉強に励んだ。不合格だったが、さばさばした笑顔で、ベストは尽くしたという感じ。一生懸命生きている。
「ユーチューバーとしてもネイリストとしても頑張りたい」
その意気やよし! しかし、残る一人は……
カン・ナラのその後
北朝鮮ネタが受けないとなると、ゴルフのつたない練習風景をアップしたり、それもダメなら水着姿を披露したり。
いや、もう脱ぐとか水着とか、そんなことする時点で終わってるじゃないですか。
それでも『資本主義ロマンス』というタイトルのネットドラマの主役に抜擢される。が、どうにも芝居がうまくないし、仕事中も何となくにやけ顔だし、この人だけ浮ついた生き方をしていると感じました。いまはまだオファーがあるかもしれないけど、そのうち何もなくなるんじゃないですかね。
韓国人として一生懸命生きている姿を見せたいというけれど、「一生懸命生きる」と「一生懸命生きているのを見せる」はぜんぜん違う。前者は本当に一生懸命生きないといけないが、後者は「一生懸命生きてるように見えればいい」わけですからね。
わが国でも、政府の無為無策について「やってる感」なんて言葉が最近よく使われますが、あれと同じでしょ。カン・ナラの言動は「一生懸命生きてる感」を出しているだけ。そう見えているうちはいいけど、化けの皮が剥がれたら……と考えると恐ろしい。
私は、アーティスティック・スイマーのリュ・ヒジンと、ネイリストになるべく奮闘中のキム・ガヨンにもっと頑張ってほしい、幸せをつかんでほしいと強く思いました。
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