どの劇場でも閑古鳥が鳴いてばかりのこのご時世に、なかなか盛況だった『スペンサー ダイアナの決意』。特に面白くないのにまったく退屈しないという不思議な映画でした。(以下いきなりネタバレしてます)


『スペンサー ダイアナの決意』(2021、イギリス・チリ・ドイツ・アメリカ)
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脚本:スティーブン・ナイト
監督:パブロ・ラライン
出演:クリステン・スチュワート、ティモシー・スポール、ジャック・ファーシング、サリー・ホーキンス


まるで『ロボコップ』のような
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最後はあれですよね、『ロボコップ』のパクリですよね。名前を訊かれて「スペンサー」と答えるクライマックスは。「いい腕だな。名前は?」と訊かれたロボコップが「マーフィ」と答えるみんな大好きなエンディングと同じ。

ジャッキー・チェンが「パクリ、盗作、芸のうち」と言ってたのはこういうのですよね。私も師匠の村井さだゆき先生から「もっとうまくパクれ」と発破をかけられたものです。

自分の「本当の名前」を答えることでアイデンティティーを確立するという意味合いは同じままで、しかも誰もあれが『ロボコップ』のパクリだとは気づいてないみたい。客層が違いますしね。

ただ、全体的に退屈でした。もともと脚本家を目指していた頃は構成の勉強のために時間を測りながら見てまして、いまでもその癖が残っているんですが、例外もあって、あまりに面白いときは時計は見ません。しかしこの『スペンサー』は退屈してるのに、初めて時計を見たとき、もう残り10分でした。


クリステン・スチュワート
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理由ははっきりしていて、それはもうダイアナを演じるクリステン・スチュワートが異常なまでに美しいというその一点に尽きます。

あんなきれいな顔をずっと見せられては、そりゃ退屈しませんがな。特に私は自他ともに認める超面食いですから! ときどきティモシー・スポールが邪魔でしょうがなかった。いや大好きな役者さんなんですがね。しかし痩せたな。昔は健康的に太ってたけど。

さて、ではここで唐突に、古今東西、この映画のクリステン・スチュワート並みに美しかった女優のベストテンを発表します!


①『氷の微笑』のシャロン・ストーン
②『昼顔』のカトリーヌ・ドヌーブ
③『君がいた夏』のジョディ・フォスター
④『ガス人間第一号』の八千草薫
⑤『裏窓』のグレース・ケリー
⑥『ワンダーウーマン』のガル・ガドット
⑦『誘う女』のニコール・キッドマン
⑧『マルホランド・ドライブ』のナオミ・ワッツ
⑨『暗殺の森』のステファニア・サンドレッリ
⑩『春の日は過ぎゆく』のイ・ヨンエ



「女優をきれいに撮るのが映画の使命」(蓮實重彦)
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確か蓮實重彦の『見るレッスン』という新書に、「映画は女優をきれいに撮らねばならない」みたいなことが書いてありました。

これには一も二もなく賛成ですね。今日びこういうこと言うと、男女平等を謳う人から忌み嫌われるんでしょうけど、男優などどうでもいいのです。きれいな女優を見たい。私が男だからよけいそう思うのかもしれないが、女性だってきれいな女は好きでしょう? どうあがいても男を美しく撮ろうにも、そういう被写体はかなり限られる。女ならそこそこの顔立ちでもライティングその他を工夫すれば、上に挙げた10人に比肩しうるのは無理でも、普通にきれいに撮ることはできるし、撮るのが監督やカメラマンの義務であり、使命でしょう。

そういえば、蓮實は『戦メリ』に関する座談会で、「なぜ映画を撮らないのか」という問いに対し、「日本には女優の顔をきれいに撮れるカメラマンがいないから」と言ってたけど、それは言い訳でしょと笑ってしまった。

とはいえ、一片の真実はあって、上に挙げた10人のうち日本人が一人しか入っていないのは、やはり女優の顔をきれいに撮れるカメラマンが少ないからではないかしら。単に私が外人の女性(特に金髪)が好きなだけかもしれんが。


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というわけで、この映画の監督パブロ・ララインが企図したのが、「ダイアナの決意」なるもの、それはつまり名前を訊かれて「スペンサー」と答える『ロボコップ』のパクリをやりたかったのか、それとも美しい女性を撮りたい、それもいま一番美しいクリステン・スチュワートを撮りたいという欲望があって、そのためにダイアナの物語が要請されたのかは知りません。

「口実としての物語」などという言葉を使いたがる蓮實なら絶対後者だと言い張るんでしょうけど、私は別にどっちでもいい。作者の動機など何でもいい。できあがった映画が心に残るものならそれでいい。

というわけで、この『スペンサー ダイアナの決意』は、『ロボコップ』を想起させてくれる作品として、そして何よりクリステン・スチュワートという稀代の美人女優の美しさを堪能させてくれた作品として、大変美味な映画でありました。




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