誤解している人が多いですが、『ロッキー』は「最後に勝つ」物語ですよね。

え? 勝つのはアポロですって!?

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違います。ロッキーは最後に勝つのです。

Jホラーの仕掛け人と言われた『リング』の脚本家、高橋洋さんが『ロッキー』の大ファンと知ったときは驚愕しましたが、その高橋さん作の『ロッキー』のログラインは次のようなものです。(ログラインとは、「初期設定」「前半の山場」「後半の山場」から成るもので、ちゃんと前半・後半どちらにも山場があるかどうかを本来は脚本家がセリフチェックするために作るものです)

「しがない四回戦ボクサーのロッキー・バルボアが、ひょんなことから世界タイトルマッチの相手に選ばれ練習に励むが、勝てないと悟り15ラウンド終了したときに立っていられるかどうかに賭ける」


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アポロとの決戦前夜、眠れぬ夜にエイドリアンに打ち明けます。「勝てるわけがない」と。でもロッキーはこうも言います。「もし15ラウンドのゴングが鳴って、そのとき立っていられたら、俺は負け犬じゃないと証明できる」

ロッキーはアポロと戦っているのではありません。自分自身と戦っているのです。小さい女の子にも馬鹿にされる負け犬人生を歩んできた男が、自分は負け犬じゃないと証明するために。

だから、ロッキーは最後に勝利したわけです。確かにアポロには負けました。でもロッキー自身が言ってましたよね。「判定は偉い人たちが決めることだ。俺には関係ねえ。エイドリアーーーン!」と。

ロッキーが自分自身と戦っているのを知っているのはエイドリアンだけ。だからロッキーは負けたのではなく勝ったと知っているのも彼女だけ。観客はそのすべてを知っている。そこが『ロッキー』のいいところだと思うんですんがね。


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さて、この『ロッキー』とまったく同じ物語を語っているのが『ターミネーター』です。

これも誤解している人が多いですが、『ターミネーター』の主役はシュワルツェネッガーではなく、サラ・コナーを演じるリンダ・ハミルトンです。

だって、ターミネーターは単なる殺人マシーンであって、擬人化もされてないものが「キャラクター」なわけがありません。(やや擬人化された『ターミネーター2』の主役はシュワルツェネッガーと言っていいと思いますが)


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『ターミネーター』も『ロッキー』と同じく周囲からいじめられる負け犬根性の女が、ヒーローとして屹立していくまでを描いた物語です。

働いているレストランでは客からいじめられ、子どもにもおちょくられ、同僚からも仲のいいふりをして腹の中では完全に小馬鹿にされている。

そんな彼女が「将来、救世主を生む伝説の母」だと言う男、マイケル・ビーンの登場で一変します。

彼女は「私が救世主の母? この私が?」と自嘲して笑いますが、ターミネーターとの死闘を通して、そして愛するマイケル・ビーンの死を見て、ターミネーターにトドメを刺し、ロッキーと同じく負け犬を返上します。

ラストシーンでは、顔がこんなに変わっていましたね。


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この世の人々はみんな自分自身と闘っています。そして多くの人がもう一人の自分に負けてしまう。

『ロッキー』と『ターミネーター』が時代を超えて人々に愛されるのは、主人公が最後の最後で自分自身との闘いに勝利する物語だからでしょう。


「同じ構造をもつ物語」シリーズ
①『波止場』と『王様のレストラン』


ロッキー (字幕版)
カール・ウェザース
2015-10-07


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