先週5日のゴゴスマや日曜日の番組で、橋下徹が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の名称変更について、こんな発言をしたそうです。


hasimototooru

「要件を満たしている以上、名称変更の届け出は受理しないといけない。法律にそう明記されてるんだから、変更を認めた下村さんは正しい。名称変更をしたら被害に遭う人が増える? それとこれとは違う話でしょ。名称変更の届け出は法律通り受理する。もし被害が増えたら、取り締まる法律を作るなり厳しくする。法治国家なんだからそれが当たり前」

「名称変更を拒否した前川喜平さんが正義の味方みたいになってるけど、違法行為じゃないですか」

うーん、この人はすぐ「法律」「ルール」と言いますが、どうにも腑におちません。これが腑におちたら人間ではなくなってしまう危機感を覚えます。

というか、上の言葉は明らかに間違っています。というか、彼が弁護士であることを考えれば、かなり悪質な詭弁と言わざるをえません。


touitukyoukai (1)

統一教会がやっていることは「宗教」ではなく明らかな「詐欺」です。

しかし、オレオレ詐欺や結婚詐欺なら金品を騙し取ろうとした意思を立証することは簡単でしょうが、「宗教」を隠れ蓑にした場合は難しく、実際、明治維新から150年で宗教団体が詐欺罪で摘発されたことはほんの少ししかないそうです。(文鮮明がアメリカで逮捕されたのも脱税の容疑でしたよね)

これがなぜかというと、心の問題は裁きにくいからです。

オレオレ詐欺や結婚詐欺と違い、信仰心で人から金品を巻き上げた場合、加害者がいくら最初から騙し取る気満々だったとしても、「本気で信じている」と言い張り、「これがうちの教団の教義なのだ」と言われたら、信教の自由は憲法で保障されているし、指紋やアリバイ崩しのような物理的なものなら科学で対処できるけれど、人間の心とか霊魂とかそういうものが相手だと科学は歯が立たない。

騙す意思があったとはっきり認められない以上はすべてはグレーゾーンになってしまう。安倍晋三を射殺した山上容疑者の母親などは、あんな事件を息子が起こしても「教会に悪いことをした」と言っているらしく、1億もの金を騙し取られたという自覚もない。自分から進んで献金したと思い込んでいるのだから、取り締まりたくても取り締まれない。

だから、橋下徹の言った、「統一教会が名称変更したことで悪いことをするならそれを取り締まる法律を作ればいい」というのは「できない相談」なんですよね。それができるならとっくの昔にそういう法律ができてますよ。それが難しいから被害者が増えてるわけで。

30年前、ワイドショーが連日、統一教会問題を報じたものだから、名前を変えないと儲けが少なくなってしまった。それを前川さんは止めたんですよね。これを受理したら泣く人が増えると。


maekawakihei

少しも間違っていないと思う。そりゃ、法治国家なのに役人が勝手に法律をねじ曲げたらなし崩し的に……と橋下徹が言いたい気持ちは理解できます。しかしながら、大勢の人が泣かされ、家族離散といった被害に遭っていると知りながら、しかも、名称変更をしたらそういう人がもっと増えると知りながら「法律だから受理せねばならない」というのはあまりに情けない発言だと思います。それならAIにだって務まるじゃないですか。

法律は論理で人の言動を取り締まるものだから、信仰心といった論理の入り込む余地のないものには少しも有効じゃない。

論理で扱えないものこそ「人間」が扱うべきじゃないでしょうか。

人の心を取り締まることができるのは、人の心だけです。


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