このところ寝たきり生活だったのであまりニュースを見てませんでしたが、ロシアのウクライナ侵攻に関し、UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)とFIFA(国際サッカー連盟)が下した制裁にははっきり言って幻滅しました。


ワールドカップからロシアを排除
FIFAはカタール・ワールドカップ予選でプレーオフに勝ち残っていたロシア代表の排除を決定しました。一見、当然の措置のように見えますが、選手には何の罪もないですよね。プーチンとその側近が勝手にやり出した戦争なのに。そりゃ選手にもウクライナ侵攻を支持するけしからん人もいるのでしょうが、「ロシア人」と十把ひとからげにするのはいかがなものか。


ヨーロッパリーグからスパルタク・モスクワを排除
Spartak_Moscow

UEFAはヨーロッパリーグ(EL)決勝トーナメントに勝ち残っていたスパルタク・モスクワの排除を決定。これはもっと無理がある。選手構成は知りませんが、クラブチームなんだからてロシア人しかいないわけじゃない。いろんな国の人がいるだろうし、ウクライナ人だっているかもしれない。それをロシアリーグのクラブだからと排除するのはまったく賛成できない。


ロシア代表の件もスパルタク・モスクワの件も了承できないのは、「ロシア人」だからといってプーチン支持、ウクライナ侵攻支持とはかぎらないのに、そこを無視して一律に排除するという強権的やり方だからです。これって力ずくでウクライナに侵攻したプーチンとどこが違うの? こういうときこそロシアのチームもどこのチームもサッカーを通して仲良くなれることを示すいいチャンスだったのではないでしょうか。


レッドスター・ベオグラードは排除せず
red-star-belgrade (1)

ドイツのシャルケやUEFA自身がロシアの政府系企業「ガスプロム」とのスポンサー契約を解除しました。そのこと自体はいいのだけど、ガスプロムと切っても切れない関係のセルビアの古豪レッドスター・ベオグラードは関係を維持しました。「ガスプロムとは2010年から契約しており、ガスプロムがなかったら、いまレッドスターというクラブは存続できなかった」というごく普通の理由。しかしレッドスターはこうも言う。「FIFAやUEFAのやり方を我々は認めない。国際法上の根拠はない。欧州全土で反ロシアのヒステリーが起きている」とロシア支持を表明し、「政治がスポーツに介入している」と。

確かにそうですよね。同じことはスパルタク・モスクワの選手も言っていました。

「いつもなら政治がスポーツに介入すべきではないとみんな言うのに、ロシアのことになるとそれを容認してしまうのはなぜ?」

ま、ことが侵略戦争だからというのもありましょうが、しかし、選手や監督、チームスタッフには何の咎もないし、はっきり戦争反対を主張しても、スパルタク・モスクワの選手だから、ロシア代表の選手だからという、ただそれだけで大会から排除された。

逆にロシア支持を鮮明にしているレッドスター・ベオグラードは何のお咎めもなし。普通にELの舞台で戦っています。彼らはFIFAやUEFAの強権的やり方に反対しているだけで、戦争を支持してるわけじゃないからですよね。なら、同じ考え方をそれをスパルタク・モスクワやロシア代表にも適用すべきです。

ウクライナ侵攻した直後、日本のロシア料理店の看板が破壊されるなどの被害に遭ったというニュースが流れました。実はその店の店主はウクライナ人だったという笑えないものでしたが、FIFAやUEFAがやっていることも同根です。その人の内実を見ず、「ロシア人」とか「ロシアリーグのチーム」という看板だけで判断して攻撃している。

すべてを「ロシア」というワードで十羽ひとからげにしているのだから、これはもう「差別」です。一人一人を見ず「黒人」「ユダヤ人」「女性」「障碍者」などと十羽ひとからげにするのが差別でしょ。人間をジャンル分けするのが差別。


関連記事
ロシアとウクライナの地政学 ~『紛争でしたら八田まで』感想②~
ジャンル分け主義者の映画ファン=差別主義者トランプ




このエントリーをはてなブックマークに追加