映画芸術誌のベストテン&ワーストテン、そしてキネマ旬報ベストテンが発表されました。

集計したベストテンはつまらない
蓮實重彦はかつてキネ旬ベストテンについて「あの恥ずかしいベストテン」と揶揄してましたが、私は恥ずかしいとは別に思わないけれど、「つまらない」とは何度見ても痛切に感じますね。
やっぱり集計してしまうからだと思うんですよ。
個々のベストテンはその人の個性や人となりが出ていて面白いと思うんですが、集計してしまうとすべての個性が消されてしまうし、満遍なく票を集めたものが上位に来るから面白みに欠ける。ごく少数の人にしか響かなかったけど尖った作品とか完全に埋没しちゃうでしょ。
1位票だけのベストテン
集計してキネ旬としてのベストテンを出さないと雑誌が売れないとかいろんな事情はあるんでしょうが、それならそれで、1位票だけのベストテンも作ってみてはどうか。
つまり、1位10点~10位1点という従来のベストテンとは別に、1位票だけの票数のベストテンを作るのです。
あれは1994年。阪本順治の『トカレフ』が公開された年のベストテンでは、3位に『居酒屋ゆうれい』が入ったんですけど、1位票を入れた人は一人もいませんでした。逆に『トカレフ』は5人が1位票を入れていて、でも一部の好事家に愛されただけで満遍なく票を集めることができず、11位、ぎりぎりベストテン圏外という結果に終わりました。
最大公約数的に愛された作品を称揚するのも大事でしょうが、一部に熱狂的なファンがいる作品も顕彰してほしい。
今回なら『MONOS 猿と呼ばれし者たち』がそういう作品になりうるか、と期待してたんですが、1位票を入れていた人は一人もいませんでした。嗚呼。
芝山幹郎さんも2位でしたしね。でも、私の予想では、二人か三人くらいが1位票を入れて、でもそれ以外だれも票を入れず、合計30点くらいかなと思ってたんですが、それなりに票を集めて59点で全体の15位というのは驚きました。喜んでいいのか悲しんでいいのか。全体の順位はともかく1位票が1票もなかったというのがね。ダントツのベストワンに推した私としては淋しいところ。
映芸ベストテン&ワーストテン

知らなかったんですが、ベストの合計点からワーストの合計点を引く、という底意地の悪い集計法に戻ったんですね。いつの間に。いや、底意地の悪いというのはほめ言葉ですよ。私は映芸の底意地の悪さが好きだったのです。
しかしながら、4年前のアニメ除外とかの大改革で選者がたくさん降りてしまったので、知らない人ばかりになっちゃった。キネ旬も知らない人が増えてるけど、それでも半分以上は知ってる。映芸の選考委員で知ってるのはごくわずか。
そもそも選考委員の数が少なすぎ。ベストワンの『草の響き』が30点台でしたっけ? 1位なのに? ちょいと淋しすぎないか。
おそらくアカデミー国際長編映画賞を獲るであろう『ドライブ・マイ・カー』をワーストワンに選べなかったのは痛恨ですね。『おくりびと』をワーストワンにしたとき「国辱雑誌」と罵られてましたが、あのときは私も『おくりびと』批判派だったから映芸の味方だった。
今回私は『ドライブ・マイ・カー』派だけど、映芸には普通の映画賞のカウンターパンチであってほしいのでワーストの4位などという中途半端な位置づけは何とも残念。
というわけで、映芸にはもっと独自路線を歩んでほしいですが、キネ旬には集計するなら1位票だけの集計もしてほしいと、この30年くらいずっと思っていることをまたぞろ思った立春の夕暮れでした。
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『MONOS 猿と呼ばれし者たち』日記(21世紀最高傑作!)


集計したベストテンはつまらない
蓮實重彦はかつてキネ旬ベストテンについて「あの恥ずかしいベストテン」と揶揄してましたが、私は恥ずかしいとは別に思わないけれど、「つまらない」とは何度見ても痛切に感じますね。
やっぱり集計してしまうからだと思うんですよ。
個々のベストテンはその人の個性や人となりが出ていて面白いと思うんですが、集計してしまうとすべての個性が消されてしまうし、満遍なく票を集めたものが上位に来るから面白みに欠ける。ごく少数の人にしか響かなかったけど尖った作品とか完全に埋没しちゃうでしょ。
1位票だけのベストテン
集計してキネ旬としてのベストテンを出さないと雑誌が売れないとかいろんな事情はあるんでしょうが、それならそれで、1位票だけのベストテンも作ってみてはどうか。
つまり、1位10点~10位1点という従来のベストテンとは別に、1位票だけの票数のベストテンを作るのです。
あれは1994年。阪本順治の『トカレフ』が公開された年のベストテンでは、3位に『居酒屋ゆうれい』が入ったんですけど、1位票を入れた人は一人もいませんでした。逆に『トカレフ』は5人が1位票を入れていて、でも一部の好事家に愛されただけで満遍なく票を集めることができず、11位、ぎりぎりベストテン圏外という結果に終わりました。
最大公約数的に愛された作品を称揚するのも大事でしょうが、一部に熱狂的なファンがいる作品も顕彰してほしい。
今回なら『MONOS 猿と呼ばれし者たち』がそういう作品になりうるか、と期待してたんですが、1位票を入れていた人は一人もいませんでした。嗚呼。
芝山幹郎さんも2位でしたしね。でも、私の予想では、二人か三人くらいが1位票を入れて、でもそれ以外だれも票を入れず、合計30点くらいかなと思ってたんですが、それなりに票を集めて59点で全体の15位というのは驚きました。喜んでいいのか悲しんでいいのか。全体の順位はともかく1位票が1票もなかったというのがね。ダントツのベストワンに推した私としては淋しいところ。
映芸ベストテン&ワーストテン

知らなかったんですが、ベストの合計点からワーストの合計点を引く、という底意地の悪い集計法に戻ったんですね。いつの間に。いや、底意地の悪いというのはほめ言葉ですよ。私は映芸の底意地の悪さが好きだったのです。
しかしながら、4年前のアニメ除外とかの大改革で選者がたくさん降りてしまったので、知らない人ばかりになっちゃった。キネ旬も知らない人が増えてるけど、それでも半分以上は知ってる。映芸の選考委員で知ってるのはごくわずか。
そもそも選考委員の数が少なすぎ。ベストワンの『草の響き』が30点台でしたっけ? 1位なのに? ちょいと淋しすぎないか。
おそらくアカデミー国際長編映画賞を獲るであろう『ドライブ・マイ・カー』をワーストワンに選べなかったのは痛恨ですね。『おくりびと』をワーストワンにしたとき「国辱雑誌」と罵られてましたが、あのときは私も『おくりびと』批判派だったから映芸の味方だった。
今回私は『ドライブ・マイ・カー』派だけど、映芸には普通の映画賞のカウンターパンチであってほしいのでワーストの4位などという中途半端な位置づけは何とも残念。
というわけで、映芸にはもっと独自路線を歩んでほしいですが、キネ旬には集計するなら1位票だけの集計もしてほしいと、この30年くらいずっと思っていることをまたぞろ思った立春の夕暮れでした。
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