『有村架純の撮休』『竹内涼真の撮休』に続く、連続オリジナルドラマ『撮休』シリーズ第3弾は『神木隆之介の撮休』。
女優、男優、と来たんだから次は女優だろう、木村文乃か永野芽郁あたりの『撮休』を見せてほしいと思っていたんですけど、神木隆之介ですか。少しも好きじゃない役者だしあまり食指が動かないなぁと思ってましたが、とりあえず見てみた第1話「はい、カット!」が素晴らしい出来映えでした。(以下ネタバレあります)
新機軸!
いつものようにマネージャーから「明日突然撮休になりまして」というお約束から始まる『神木隆之介の撮休』は、新機軸を打ち出してきました。この第1話で描かれるのは「神木隆之介の撮休」ではないのです。悪夢の可能性は否定できないけれど、少なくとも撮休の出来事ではありません。
マネージャーから「新しい作品の台本読んでおいてください」と言われた神木隆之介は、パン切り包丁で殺人をする役のためホームセンターに実物を見に行く。でもパッケージされているので手に取ってみることができない。そこで店員に「パン切り包丁で人も切れますかね?」ととんでもない質問をしてしまい、怯んだ店員を見て「あ、違います、買うんです!」とパン切り包丁を取って差し出すも店員はよけいに恐怖を感じてパニックになる。
そこで「はい、カット!」の声。
実は、役作りのために小道具を買いに来て逆に変質者と間違われる役を彼は演じていたんですね。しかし神木隆之介本人にそんな自覚はない。というかそんな仕事を受けた覚えがない。何だこれは。
と思っていたら、ホームセンター内でいろんな出来事があり、そのたびに「はい、カット!」の声がかかる。今日は撮休だし芝居をしているつもりもないのに、周りは彼が主人公の作品を撮っている(ことになっている)。
子役出身ならではの物語
「先輩」が現れます。神木が鞄を落とすと拾ってくれた店員が何と安達祐実。役者としても先輩ですが、何より大事なのは「子役出身」ということ。神木と同じ子役出身の安達祐実が彼の身に起こっている怪現象を説明してくれます。自分もそれに侵されていたからよくわかる、と。
「はいカット・シンドロームだ」と。
何かというと、子どもの頃から自分とは違う人を演じ続けてきて、現実でも安達祐実や神木隆之介というキャラを演じている。だから、現実と虚構の区別がつかない。「はい、カット」の声がかからないと現実世界に目覚められない。
しかし、「はい、カット」の声がかかってもいつの間にか芝居が始まっている。そしてまた「はい、カット」。何が現実で何が虚構なのかわからない。安達祐実は先輩として「この状況を楽しめばいいのよ」と拳銃で自分の頭をぶち抜いたりするけど、「はい、カット!」で生き返る。
そんな安達祐実は、ホームセンターの屋上の柵にもたれ、「あたしを押して」という。神木は突き落とし、地上で血まみれになっている安達祐実に駆け寄る。どうせ「はい、カット」だろ、と思っていたら、声がかからない。「あの人が突き落としたのを見た」と証言する人も現れ、神木は捕まりそうになる。え、これって現実なの? 虚構じゃないの?
そこで「はい、カット!」。すべては虚構だった。
安達祐実は血まみれのメイクをされていただけで無事に立ち上がる。助監督が「クランクアップです。神木隆之介さん、お疲れさまでした」と言って、万雷の拍手を受けて神木は安達から花束を受け取る。
これが現実だ。「はい、カット」ではなく「クランクアップ」との声がかかったのだからしばらく現実世界が続くはず。安堵した神木隆之介に先輩・安達祐実が悪魔の囁きをする。
「用意、はい」
目が点になる神木。また虚構が始まってしまった。いつになったら現実世界に戻れるのか。というところで暗転。ジ・エンド。
素晴らしいホラーでした。
はいカット・シンドロームかと思って安達祐実を突き落としたらほんとに殺してしまった、というところで終わったら『世にも奇妙な物語』レベルだったでしょうが、あの「用意、はい」は本当に悪魔の囁き。あれがすべてをひっくり返したし、作品のレベルをグンと上げていますね。
野心的試み(かどうか)
このあと最終第8話までどんな内容なのかまったく知りませんが、これを第1話にもってくるというのは大変野心的な試みだと思います。
凡庸なプロデューサーなら最後にもってくるはず。でも最初にもってきた。これで第2話以降にどんな撮休が描かれようと、神木隆之介ははいカット・シンドロームに侵されているという「現実」から逃れられない。
私の懸念は、このはいカット・シンドロームが神木の悪夢として処理されること。悪夢なら第2話以降で何を描いても「第1話はただの夢ですから」で逃げることができてしまう。
そうじゃなくて、「神木隆之介ははいカット・シンドロームに侵されている」ことを前提にした撮休が描かれるといいと思うんですが、それは不可能ですかね? でも、もし悪夢としてこの第1話を描いたのなら、それこそ最終話にもってきてほしかった。
さて、第2話以降がどうなるか、注目です。
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新機軸!
いつものようにマネージャーから「明日突然撮休になりまして」というお約束から始まる『神木隆之介の撮休』は、新機軸を打ち出してきました。この第1話で描かれるのは「神木隆之介の撮休」ではないのです。悪夢の可能性は否定できないけれど、少なくとも撮休の出来事ではありません。
マネージャーから「新しい作品の台本読んでおいてください」と言われた神木隆之介は、パン切り包丁で殺人をする役のためホームセンターに実物を見に行く。でもパッケージされているので手に取ってみることができない。そこで店員に「パン切り包丁で人も切れますかね?」ととんでもない質問をしてしまい、怯んだ店員を見て「あ、違います、買うんです!」とパン切り包丁を取って差し出すも店員はよけいに恐怖を感じてパニックになる。
そこで「はい、カット!」の声。
実は、役作りのために小道具を買いに来て逆に変質者と間違われる役を彼は演じていたんですね。しかし神木隆之介本人にそんな自覚はない。というかそんな仕事を受けた覚えがない。何だこれは。
と思っていたら、ホームセンター内でいろんな出来事があり、そのたびに「はい、カット!」の声がかかる。今日は撮休だし芝居をしているつもりもないのに、周りは彼が主人公の作品を撮っている(ことになっている)。
子役出身ならではの物語
「先輩」が現れます。神木が鞄を落とすと拾ってくれた店員が何と安達祐実。役者としても先輩ですが、何より大事なのは「子役出身」ということ。神木と同じ子役出身の安達祐実が彼の身に起こっている怪現象を説明してくれます。自分もそれに侵されていたからよくわかる、と。
「はいカット・シンドロームだ」と。
何かというと、子どもの頃から自分とは違う人を演じ続けてきて、現実でも安達祐実や神木隆之介というキャラを演じている。だから、現実と虚構の区別がつかない。「はい、カット」の声がかからないと現実世界に目覚められない。
しかし、「はい、カット」の声がかかってもいつの間にか芝居が始まっている。そしてまた「はい、カット」。何が現実で何が虚構なのかわからない。安達祐実は先輩として「この状況を楽しめばいいのよ」と拳銃で自分の頭をぶち抜いたりするけど、「はい、カット!」で生き返る。
そんな安達祐実は、ホームセンターの屋上の柵にもたれ、「あたしを押して」という。神木は突き落とし、地上で血まみれになっている安達祐実に駆け寄る。どうせ「はい、カット」だろ、と思っていたら、声がかからない。「あの人が突き落としたのを見た」と証言する人も現れ、神木は捕まりそうになる。え、これって現実なの? 虚構じゃないの?
そこで「はい、カット!」。すべては虚構だった。
安達祐実は血まみれのメイクをされていただけで無事に立ち上がる。助監督が「クランクアップです。神木隆之介さん、お疲れさまでした」と言って、万雷の拍手を受けて神木は安達から花束を受け取る。
これが現実だ。「はい、カット」ではなく「クランクアップ」との声がかかったのだからしばらく現実世界が続くはず。安堵した神木隆之介に先輩・安達祐実が悪魔の囁きをする。
「用意、はい」
目が点になる神木。また虚構が始まってしまった。いつになったら現実世界に戻れるのか。というところで暗転。ジ・エンド。
素晴らしいホラーでした。
はいカット・シンドロームかと思って安達祐実を突き落としたらほんとに殺してしまった、というところで終わったら『世にも奇妙な物語』レベルだったでしょうが、あの「用意、はい」は本当に悪魔の囁き。あれがすべてをひっくり返したし、作品のレベルをグンと上げていますね。
野心的試み(かどうか)
このあと最終第8話までどんな内容なのかまったく知りませんが、これを第1話にもってくるというのは大変野心的な試みだと思います。
凡庸なプロデューサーなら最後にもってくるはず。でも最初にもってきた。これで第2話以降にどんな撮休が描かれようと、神木隆之介ははいカット・シンドロームに侵されているという「現実」から逃れられない。
私の懸念は、このはいカット・シンドロームが神木の悪夢として処理されること。悪夢なら第2話以降で何を描いても「第1話はただの夢ですから」で逃げることができてしまう。
そうじゃなくて、「神木隆之介ははいカット・シンドロームに侵されている」ことを前提にした撮休が描かれるといいと思うんですが、それは不可能ですかね? でも、もし悪夢としてこの第1話を描いたのなら、それこそ最終話にもってきてほしかった。
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