2021年の劇場新作ベストテンを発表します。一部劇場で見てないものもあります。ビデオで見てもベストに入れたくなるほどよかったのだからいいでしょう。逆にワーストには劇場で見たもの、途中退出せずに最後まで見たものからしか選んでいません。でないとフェアじゃないのでね。

去年のベストテンでも書きましたが、映芸ベストテンである選者が言っていた順位付けに倣っています。

すなわち、1位今年の顔、2位から5位質とボリューム、6位裏ベストワン、7~9位味系、10位11位に欠点だらけだけど大好きな作品を挙げてまとめに入り、12位はお祭りの総仕上げです。

なぜ12本かって? それも過去記事を見てください。10本なんて誰が決めたの?

では行きましょう。


MONOS10 (1)


③アオラレ(デリック・ボルテ監督)
⑤クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園(高橋渉監督)
⑥ディエゴ・マラドーナ 二つの顔(アシフ・カパディア監督)
⑦グンダーマン 優しき裏切り者の歌(アンドレアス・ドレーゼン監督)
⑧愛してるって言っておくね(ウィル・マコーマック&マイケル・ゴビア監督)
⑨スイング・ステート(ジョン・スチュワート監督)
⑫アメリカン・ユートピア(スパイク・リー監督)


MONOS11.jfif (1)

というわけで、「21世紀最高傑作」と叫んだのは少しも大げさではなかった『MONOS』がダントツのベストワン。『ドライブ・マイ・カー』もあの熱量にはかなわず。

というか、初めて見た監督の作品が過半数(9本も!)を占めるというのは珍しい。でも、これから追いかけたい監督が増えたわけで、慶賀慶賀。

『ドライブ・マイ・カー』はアカデミー賞でどこまで行きますかね。国際長編映画賞はほぼ手中に収めていますが、問題は作品賞。2年前の『パラサイト』のように非英語映画の作品賞受賞なるか。

現状では難しい気がしますが、脚色賞の受賞は堅いと私は見ています。監督賞と編集賞のノミネートを勝ち取れれば作品賞も現実味を帯びてきますが、どうでしょうか。(しかし編集賞のノミネートが作品賞受賞の必要条件というのは私が言い出したことなんですがね。ヤフー掲示板「アカデミー賞を語る」トピで「編集賞」と題したコメントをしたunforgiven2939とは私のことです。ここまで世間に広まるとは思わなかった。これははっきり言って自慢)


MONOS1

『MONOS』は東京でも渋谷のイメージフォーラムというちょっと行きにくい映画館でしかやってないので未見の人が多いみたいですが、私があの映画の存在を知ったのは週刊文春シネマチャートで芝山幹郎さんが絶賛していたから。なのに同じ芝山さんが『アオラレ』に低い点をつけていたのはいまもって解せない。ああいう笑える娯楽映画は芝山さんが一番好きなタイプの映画のはずなのに。

マラドーナ率いるアルゼンチンがワールドカップ優勝をはたした時分にサッカーをやっていた者としては『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』には感涙しきり。昨日は彼の弟さんも死んだとニュースで知りました。マラドーナよ、永遠に。去年彼が死んだとき、日本では神の手ゴールとその直後の伝説の5人抜きゴールばかり放送されてましたが、この映画ではナポリがユベントス相手に初めてアウェーで勝った試合の詳細など見せてくれた。感謝感激。

『グンダーマン』と『愛してるって言っておくね』を見せてくれたWOWOWとネットフリックスには感謝感謝。いいときにいい映画に出逢いました。出逢いってほんと大切。

バカリズムがまたも天才ぶりを発揮した『地獄の花園』も『アオラレ』同様に世間的評価が低いですが、テレビの監督が撮っても脚本が超一流なら面白い映画になる典型でした。



MONOS10

さて、以下は恒例のワーストです。

いつも言っていることですが、ワーストに選ぶにはそれなりの「格」が必要です。

例えば今年なら、『キャラクター』『ベイビーわるきゅーれ』『岬のマヨイガ』『サマーフィルムにのって』『アナザーラウンド』『騙し絵の牙』『由宇子の天秤』『最後の決闘裁判』『草の響き』『マリグナント 狂暴な悪夢』『ラストナイト・イン・ソーホー』

などのような、単につまらない映画を挙げても少しも面白くありますまい。面白いけど決定的なミスを犯した映画こそ「ワースト」の名に値する。そんな映画は今年は1本しかありませんでした。


プロミシング・ヤング・ウーマン(エメラルド・フェネル監督)


死んだ友人のために復讐をする。それはいい。でも、主人公は友人への想いが強すぎて、同じように自分を愛してくれている両親の愛情にあまりに無自覚です。なぜ実家を出なかったのか。それがワーストの理由。この瑕疵は本当に決定的。(詳しいことはリンク先に書いてますのでどうぞ)

はたして来年はどんな映画との出逢いがあるでしょうか。少なくとも『MONOS』を超える映画との出逢いは少なくとも数年以上先でしょうけど。


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