ツイッター界隈で「傑作!」と話題沸騰だった『パーフェクト・ケア』を見てきました。

面白い面白いと思って手を叩いて笑いながら見ていましたが、ラストに至って長谷川和彦監督から言われた言葉を思い出しました。(以下ネタバレあります)



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『パーフェクト・ケア』
脚本・監督:J・ブレイクソン
出演:ロザムンド・パイク、ピーター・ディンクレイジ、エイサ・ゴンサレス、ダイアン・ウィースト


痛快なピカレスク・ロマン
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『ゴーン・ガール』以来、すっかり「悪女」のイメージが定着したロザムンド・パイクが演じるのは法定後見人。判断力の衰えた老人の後見人に収まり、その財産を根こそぎ奪い取る。すべては合法的に。だから老人の家族が異議申し立てをしても裁判所はロザムンド・パイクの味方。

めちゃ痛快でしたね。こういう映画を「不謹慎だ」などと非難する人も最近は多いのかもしれませんが、映画なんて本来不謹慎なものですよ。まじめに映画を見ちゃダメ。

さて、このロザムンド・パイクが次に狙いを定めたのはダイアン・ウィースト演じる老人で、いつものように後見人に収まり財産を調べてみると試算がわんさか出てくる出てくる。試算表に載っていないダイヤモンドもたくさんもっている。つまりどうしようとロザムンド・パイクの自由。しかし、このダイアン・ウィーストには実は秘密があり……



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息子がロシアン・マフィアだったのでした。このピーター・ディンクレイジという役者さんが実にいい味を出してました。役者といえば、ロザムンド・パイクと恋仲で仕事上のパートナーでもあるエイサ・ゴンサレスという女優がこれまたかわいい。この映画は内容も痛快だし役者もいいし、とても『アリス・ウリードの失踪』を撮った監督の作品とは思えないな、とうれしい誤算に飛び上がりたいほど喜んで見ていました。

ロザムンド・パイクはロシアン・マフィアに殺されかかるも何とか生き延び、逆に彼に薬を打って身元不明の行き倒れとして通報されるよう仕向け、彼の後見人に収まると。いや実に痛快。

と思っていたら……

映画の冒頭で登場した、ロザムンド・パイクのせいで母親に会うこともできなくなった息子が突如現れて彼女を撃ち殺します。

最後の最後で裏切られましたね。主人公は確かに悪人ですが、その悪人が強大な力をもったマフィアに勝利する話だったはずなのに、そして同時に、女が男に勝利するはずの話だったのに、最後で男によって罰せられてしまう。それじゃそれまでの痛快な流れは何のためだったの?


思い出される長谷川和彦監督の言葉
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もう20年近くになりますが、長谷川和彦監督に自作シナリオを読んでもらって感想を聞きました。次々に人を殺してその肉を喰らう人肉食を扱ったシナリオだったんですが、最後に追ってきた刑事に撃ち殺される内容でした。長谷川監督は素朴な疑問なんだがと前置きして訊いてきました。

「この男は何で最後に殺されるの?」
「やはり悪行三昧してきた奴なんで、裁きを受けるべきではないかと思って」
「そこなんだよ。作者の君が登場人物を裁いちゃいけないんだ」

その1本前にはホラーのシナリオを読んでもらってたんですが、そのときはこんなことを言っていました。

「俺はホラーは苦手だ。でも1本だけ好きなホラーがある。トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』だ。チェーンソーを振り回すラストはかっこよかったね」

そういう会話があったので、長谷川監督はこう続けました。

「トビー・フーパーは君みたいに裁いたりしないんだよ。もし裁いてたら『悪魔のいけにえ』のラストで感動するなんてことはなかっただろうね」

確かに長谷川監督も裁かないですよね。『青春の殺人者』の水谷豊も裁かないし、『太陽を盗んだ男』でも、文太刑事は沢田研二を裁こうとするも、作者は主人公をいっさい裁かない。



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『パーフェクト・ケア』は、まるで出来の悪い自作シナリオを読んでいるような感覚に陥りましたね。それも最後の最後で。

ほんと裏切られた気分です。あのラストさえなければ……。





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