『ドーン・オブ・ザ・ビースト/魔獣の森』(2020年、アメリカ)
原案:ブルース・ウェンプル
脚本:アンナ・シールズ
監督・編集:ブルース・ウェンプル
出演:アドリアン・バーク、アリエラ・マストロヤンニ、アンナ・シールズ


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アメリカB級映画行脚が大の趣味の私は、誰に言っても「そんな映画知らない」と言われそうだけど、気になって仕方がない『ドーン・オブ・ザ・ビースト/魔獣の森』を見てきました。

そして、裏切られました。実につまらない、少しも恐くないホラー映画でした。

しかしながら、「カットバック」のオンパレードのこの映画は、いろんなことを考えさせてもくれました。


独特の切り返し
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通常、二人の人間が対面している場合、図のように、二人を結ぶ直線をイマジナリーラインと呼び、その手前からAさんを撮ったら、イマジナリーラインを越えない位置にカメラを置いてBさんを撮らねばなりません。でないと、編集したとき二人の人物が向かい合っているように見えないからです。

図のようなカットバックを蓮實重彦はかつて「構図/逆構図」という独特の言い方で表現しました。図のように、Aさんを撮ったショットとは真逆のアングルでBさんを撮ることをいいます。二つのショットは左右対称のような形になります。それが「構図/逆構図」。

しかし蓮實重彦は、そのようなカットバックは平凡な作法であり、ジョン・フォード監督『幌馬車』(1950)のような撮り方が素晴らしいと言っていました。

画像がないので説明が難しいですが、まず会話をしている人物を横並びに置き、Aさんは正面から撮り、Bさんは横から撮る。単純な「構図/逆構図」ではない画が素晴らしいのだと。

この『ドーン・オブ・ザ・ビースト』にもそのような演出がありました。それも開巻早々です。

アバンタイトルで主人公たちの先輩が魔獣の犠牲になるのですが、そこではなく、オープニング・タイトルのあと、後輩たちが出てきたときです。

車の助手席に女が座り、その斜め後ろに男が座っている。その二人の会話を、男は正面から撮り、女は横から撮っていました。『幌馬車』と同じです。しかも、女は後ろの男を振り返ったり、前を向いたりするので動きが変化に富んでいました。

しかも、男と女の位置関係は最初に提示されるのではなく、会話が続くうちにわかるのです。マスターショットがなく、最初は男も女もクロースアップだけなので位置関係がよくわからない。会話が進むうちにバストショットやウエストショットが挿入され、徐々に位置関係がわかるように設計されていました。

お、これはひょっとすると、とんだ拾い物ではないか。そう思いました。何しろジョン・フォードと同じこと、もしかするとそれ以上のことをやっているのですから。

しかし、実際はそれはただの「偶然」でした。

そこからあともカットバックは多用されますが、「構図/逆構図」ばかり。上記のようなユニークな切り返し映像はまったくなくなります。たまたまだったのです。

偶然でもいいものを見せてもらったと思いました。しかし、肝心のホラー映画としての出来映えが残念でした。


ドガジャーン!
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若者たちは未確認生物(UMA)を研究するグループで、お約束通り一人ずつ魔獣たちに血祭りにされていきます。

その見せ方があまりにつまらない。若者が暗い森を歩いている。突如魔獣登場、ドガジャーン! 大音量の音楽が入る。その連続。

その昔、『ラストサマー』という映画がありました。『スクリーム』のケビン・ウィリアムソンが脚本を書いた映画なんですが、彼はおそらく「俺はこんなふうなシーンを書いていない!」と激怒するような演出がなされていました。

いまでもはっきり憶えているのが、何かを知っているらしいアン・ヘッシュに事件のことを聞きに来た女子学生が車に乗って帰ろうとすると、アン・ヘッシュが運転席の窓に突如顔を出して、ドガジャーン! と音楽が入るんですね。『スクリーム』の仕掛け人ケビン・ウィリアムソンが手掛けた映画ということで話題性があり、若い女性の観客が多かったんですが、ドガジャーン! のところでみんな一様に「恐~~~い」と言っていました。いやいや、それは違うだろう、恐いんじゃなくてビックリしただけでしょ、と。

『ドーン・オブ・ザ・ビースト』も同じです。びっくりする仕掛けはたくさんあります。ショッカー映画とは言えるかもしれないけど、ホラーではないな、と。


お色気
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アリエラ・マストロヤンニという気になる名前のこの女優は、オレンジ色の服で登場するんですが、ノーブラではないものの、服やブラジャーの生地が薄いのか、乳首が浮き出ていました。そして過去に魔獣に殺された人の白骨死体の首に着いていたネックレスを取ろうとかがむと、巨乳が半分くらい見えるんですね。あれは完全に狙ってやっている。

『ラストサマー』は話題性があったため女性客が多かったですが、通常、こういう類のホラーは若い男を客層として狙っている。だから乳首とかハミ乳とか、意味もなくキャミソールを脱いでブラジャーだけになるとかのシーンがある。男の子向けなのだからそういうサービスは当たり前。

しかし、それならなぜもっと美人の女優を選ばなかったのでしょう。もう一人、脚本を書いた女性が役者として出ていますが、どちらかといえばブサイクでした。やはりかわいい系ときれい系、FカップとCカップくらいの2タイプの女優を配すべきでしょう。そしてもっと暑い設定にしなきゃ。露出が増えますからね。ズボンじゃなくて短パンにすべき。ほとんど裸のような衣装にすべき。『アナコンダ』はそうしてましたよ。それが基本です。

ハミ乳を見たときは、この監督はわかっていると思いましたが、それもまた思い過ごしだったことが判明し、げんなりしてしまいました。

どうしてもB級映画が好きなので褒めるつもりで見ちゃうんですよね。でもだんだんと化けの皮がはがれてしまった。いや、化けの皮は私が着せたんです。これはすごい映画だと思いこんで見ていたから。

それほど、冒頭の車のシーンはユニークでした。あそこだけでも映画学校で見せて真似てみてもいいんじゃないでしょうか。それくらいよかったです。


幌馬車(字幕版)
ジョーン・ドルー







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