またひとつ映画館が消えました。

いや、映画館は消えていない。ピンク映画館が消えたのです。

その映画館はいまも残っています。だって今日そこに行ってきたんだから。

でも演目はピンク映画ではありません。ジャン・ポール・ベルモンド傑作選の『オー!』と『ムッシュとマドモアゼル』の2本立て。会員料金で1300円。

そうです。この映画館、シネマ神戸さんの2番スクリーンはピンク映画3本立てから普通の洋画を2本立てで上映する名画座へと変わったのです。


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場内はピンク映画を上映していたときとまったく同じ。もともと洋画の名画座だった1番スクリーンよりもこっちの2番スクリーンのほうが落ち着くんですよ。多くの人がそうだと思う。これはやってる映画の内容とは関係なく、方角とかの問題じゃないかしら。1番スクリーンのほうはドアの立て付けが悪いというのもあるし、2番スクリーンは途中入場者があっても邪魔な光が入ってこない。うん、やっぱり方角の問題だ。

近くの福原国際東映にも足繁く通ったときがありました。あそこは4本立てでしたが、そのうち1本が日活ロマンポルノの名作だったりして侮れなかった。でも結構前からホモさんたちのハッテン場と化してしまい、自然と足は遠のきました。

シネマ神戸さんの2番スクリーンはハッテン場にならずクリーンなピンク映画館で好きだったんですがねぇ。とはいえもう2年近く行ってなかったのであまり偉そうなことは言えないんですけど。

どうしてもピンク映画館って受付の横に淫靡なポスターが貼ってあって男ですら気後れしますもんね。私も若い頃はそうでした。でも20年ほど前から7~8年くらいはよく通いましたよ。淫靡な時間と空間を楽しむのがオトナというものさ、などとうそぶいたりして。

その頃、友人が兵庫県の北のほうに転勤で引っ越し、遊びに行ったんですが、近くの映画館はピンク映画館しかないということで一緒に行きました。おまえをピンク映画デビューさせてやろう、と。あとでこっそり聞いたんですが、奥さんは「こんな小さな町でそんなことやめてほしい」と言っていたとか。

そうなんですよね。ピンク映画愛好家は世間から排除されるのです。世間は綺麗事が大好きだから。でもそれはいい。排除したいならすればいい。でも排除する側には絶対回らないよ、という矜持が少なくとも私にはある。

映画の専門学校に行っていたときもピンク映画やロマンポルノを見もせずに「あんな映画」みたいに吐き捨てるような言い方をする連中が嫌いでした。見て非難するのは各人の自由だが、見もせずに言うな。言うならまず見ろ。映画を作ろうという人間ですらそうなのだから一般の映画ファンでピンク映画に興味・理解がある人は本当に少ない。

だから15年ほど前からどんどんピンク映画館が減少している。減少するから予算は縮小する。質が落ちる。客足が落ちる。儲からないから閉館が相次ぐ。さらに予算が減少する。という悪循環。その結果、良心的な小屋だったシネマ神戸さんの2番スクリーンまでもが灯火を消してしまった。

コロナも影響しているのか、どうか。でも緊急事態宣言も明け、感染者も嘘のような減少ぶりを見せているのにベルモンド傑作選、お客さん少なかった。ロードショー館でやっていたときにすでに見た人が多いというのもあろうかとは思うけど、ピンク映画をやっていたときとたいして客の数が変わらない。悲しいじゃございませんか。せっかく一般映画館へと鞍替えしたのなら前より客足が伸びてくれないと。伸びないならあのまま良心の灯火を消さないでほしかった。


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トイレ横の壁。かつては次週上映予定の淫靡なポスターが貼ってありました。ピンク映画ってあまり情報が入ってこないから(ネットでもそれほど得られない)ポスターを参考にしてましたよ。それがいまやベルモンドのポスターに。(いや別にベルモンドを貶めてるわけじゃないですよ)

くだんの転勤した友人は私と一緒に見た3本立てが3本ともハズレで「二度と見ない」と言っていました。私は初めて見たポルノが日活の『女教師』で(昔、サンテレビとテレビ大阪が深夜に名作ロマンポルノを放送してくれてた)あまりに面白かったのでいまもその手の映画を好んで見ています。

出逢い方も大事。日活ロマンポルノ以外のポルノ、つまりいわゆるピンク映画で最初に見たのが『美女濡れ酒場』。最初に見たのが大当たりだった私は幸せ者です。

大阪や京都にはまだピンク映画館がありますが、あの梅田日活でさえつぶれたのだから、おそらくそう遠くない将来、日本中のピンク映画館はすべて潰えるでしょう。

最近はまったく映画館で見ず、日本映画専門チャンネルやチャンネルNECOで放送されるピンク映画ばかり見てた私にも責任の一端はある。CSや配信があるからピンク映画自体はなくならないでしょう。エロがなくなるわけがない。わけがないが、そういう日陰の作品をみんなで一緒に見る「場」が失われていくことがたまらなく哀しいのです。


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淫靡な匂いの残る映画館で見るベルモンドは格別のものがありました。しかし、本来ここはそういう「皮肉」を味わう場所ではない。

淫靡な映画館は淫靡な作品を楽しむためにある。

これからこの映画館に来るたびに複雑な気持ちになりそうです。






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