80年代、90年代に続く、アメリカ映画だけのベストテン第3弾は2000年代。私のような古典的ハリウッド映画を愛する人間にとってはどんどんいい映画が少ない時代になっていきますが、それでもやっぱりアメリカ映画が世界で一番面白い!

いつものように縛りを設けます。以下の作品をあらかじめ除外します。

①評価や人気の高い監督、すなわち、イーストウッド、ウディ・アレン、バーホーベン、ジョン・カーペンター、スコセッシ、スピルバーグ、キャメロン、ゼメキス、リンチ、ロメロ、クローネンバーグ、アルトマン、タランティーノ、トニー・スコット、ティム・バートンなどの全作品。

②アカデミー賞や大きな映画祭の賞に絡んだもの、または批評家からの評価が高かったもの、すなわち、『エリン・ブロコビッチ』『ビューティフル・マインド』『ノーカントリー』『ブロークバック・マウンテン』『戦場のピアニスト』『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、『シカゴ』など。

③上記のような栄光は勝ち取ってないけど、映画ファンの間で高い人気を誇っているもの、すなわち、『プラダを着た悪魔』『アメリカン・サイコ』『トロピック・サンダー』『スクール・オブ・ロック』など。

もちろん例外はあります。

では10位から行きましょう。




第10位『ホワット・ライズ・ビニース』(2000、ロバート・ゼメキス監督)
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いきなり来ました、例外の1本。公開当時は酷評の嵐でしたもんね。ゼメキスもついに焼きが回ったか、みたいな言われ方して。
私もこの映画の物語についてはあまり好きじゃないというかよく理解できないというのが正直なところ。でも妄想に憑りつかれたミシェル・ファイファーの恐怖を追体験できるというか、ヒッチコックのような主観ショットを多用した映像演出が奏功して極上のサスペンス・ホラーとなっています。あのバスタブのシーンは白眉ですよね。モンタージュのお手本かと。



第9位『デッドコースター』(2003、デビッド・R・エリス監督)
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冒頭の玉突き交通事故シーンを見るだけでも一見の価値あり。『ファイナル・デスティネーション』の続編ですが、正編も続編は内容はあまり憶えていません。そんなことより「死に方」の追求がすごい。マンガ『殺し屋1』は殺し方に知恵を絞ってましたが、この映画では人の死に方に知恵を絞っている。斬新きわまりない事故死をいくつも見れます。中盤に死ぬ若い女性の死に方など悲惨すぎて笑っちゃった。人が死ぬことを無邪気に楽しめてしまう。映画ってほんっとにいいもんですね! 



第8位『ストーリーテリング』(2001、トッド・ソロンズ監督)
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私はトッド・ソロンズ監督のファンではないし、実際好きなのはこれだけかな。『フルメタル・ジャケット』みたいな前後半2部構成というのも好みじゃない。でもこの映画での2部構成は正確には「2話しかないオムニバス映画」だから嫌いでもない。よりテーマが深化してるようにも思う。マイノリティへの無意識の差別という深刻な問題を「喜劇」として提示しているのが素晴らしい。深刻な問題を深刻に扱う凡百の映画とは一線を画す。個人的にはセルマ・ブレアが自作小説を酷評した黒人教授に犯され志願する第1部「フィクション」が好き。



第7位『ファム・ファタール』(2002、ブライアン・デ・パルマ監督)
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何度見てもよくわからない本作は、ただ単に「夢オチに憑りつかれた変人監督がやりたい放題した極致」だと思う。思わせぶりな大仰な演出、意味のないショットの連鎖、『絞殺魔』リチャード・フライシャーも真っ青の分割画面など見どころはたくさんあります。多くの人にとっては退屈なんでしょうけど私は大好き。何度も見てしまうのだから「名作」に決まってる。



第6位『ふたりの男とひとりの女』(2000、ボビー・ファレリー&ピーター・ファレリー監督)
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ジム・キャリーで1本選ぶならこれかしら。彼の顔面芸は脚本とか演出とかカメラとかそういうものを一切無化してしまう力がある。チャップリンやバスター・キートンの芸と同じ。サイレントの王者と同じことをやってるのに巷の評価の低さには怒り狂うばかり。
他にも「殺して死なない牛」など面白いアイテムがたくさん出てきます。公開当時、友人に薦めたら「ひとつひとつのギャグは面白いけどお話全体がつまらなかった」と言ったので殴りました。ウソです。しかし「どんな映画でも物語全体が楽しめないといけない」なんて抑圧でしかないと思う。ブルース・リーの映画にストーリーの面白さを求めますか? そういうことです。



第5位『16ブロック』(2006、リチャード・ドナー監督)
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先日リチャード・ドナーが亡くなったときこの映画を上げてる人がたくさんいたので除外せねばならないかとも思いましたが、まぁ例外の1本ということで。
ロードショーで1回見たきりなので細かいことは憶えてませんが、孤立無援の主人公にエレガントでスマートな悪役。最高じゃないですか。アクションも決まってたし、これぞハリウッドB級娯楽映画の鑑! 



第4位『セルラー』(2004、デビッド・R・エリス監督)
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また出ました、デビッド・R・エリスという名前。2000年代はもしかするとこの人の時代だったのかも。最近はどんなの撮ってるんだろうと調べてみると、何と2013年に亡くなってる……。
そうだったのか。それならなおのこと声を大にして言わねばならない。2000年代はデビッド・R・エリスの時代だった! 『スネーク・フライト』も快作だったしね。合掌。


さて、いよいよベスト3の発表です。







第3位『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』(2008、デビッド・フランケル監督)
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『プラダを着た悪魔』のデビッド・フランケル監督がプラダの直後に撮った名作。これについては先日再見したときに書いた感想(⇒こちら)を参照してください。邦題で損してますね。タイトルは作品の「顔」。『マーリー』だけでよかったのでは?



第2位『ブラック・スネーク・モーン』(2006、クレイグ・ブリュワー監督)
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クリスティーナ・リッチがやたらエロい。いや、そんなことよりこの映画では人間の肌がとても美しく撮られています。特に黒人の肌の美しさ。バラージュ・ベーラは「映画は人間の顔が風景であることを発見した」と言いましたが、人間の肉体そのものが美しい風景だとこの映画は訴えかけてきます。


では、栄えある第1位は……












第1位『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』(2009、サーシャ・ガヴァシ監督)
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80年代、まだ彼らが20代だった頃はメタリカやスレイヤーの面々に「奴らにはかなわない」と言わしめながら、日本ツアーしたバンドで彼らだけCDが売れなくなる。ライブもたまにやる程度に落ちぶれてしまう。もうやめたら? と誰もが思う状況で「音楽をやらない人生なんて」と50代になっても夢を追い続ける愚か者アンヴィルの二人の熱いドラマ。
彼らが純粋に夢を追っていることは家族を見ればわかりますね。息子は肉体労働しかできない父親を少しも軽蔑せず、夢を追い続けている姿に尊敬の念をもっている。CDを出すための多額の金を貸してくれる姉は「あなたには音楽しかないから。いつか花が開くわよ」と目に涙を浮かべて抱きしめてくれる。家族愛の物語、男の友情物語として出色の出来映え。泣ける!! これで泣けない人とは友だちになれません!


というわけで、以上が私が選ぶ2000年代のアメリカ映画10本。

80年代ベストテンでは『ゼイリブ』を入れ忘れ、90年代では『アライバル/侵略者』を入れ忘れるという痛恨を犯したので、たぶん今回も大事なのを入れ忘れてると思います。それが何かが判明するのも楽しみ。

3年後くらいに2010年代のベストテンをやりたいですね。もちろんアメリカ映画だけの。


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