2021年09月02日

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話題沸騰中の『サマーフィルムにのって』を見てきたんですが、久しぶりに映画館で激怒するしかない映画でした。(以下ネタバレあります)


穴だらけのシナリオ
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時代劇が大好きで勝新が何よりの大好物の女子高生なんているだろうかと誰もが思うものの、それはファンタジーということでいいと思います。こういう子がいたら面白いだろうなと思うし、映画ファンの願望を具現化したということでいいんじゃないでしょうか。ちゃんと中盤でなぜ時代劇のファンになったかという説明もあったし。

時代劇大好きガールが、好き好き大好き恋愛映画へのアンチテーゼとして映画を撮る。

というコンセプトはとてもいいと思うんですけど、なぜ主役に選んだ男が「未来人」という設定が必要なのかさっぱりわからない。

簡単に未来から来たと口を滑らせすぎだし、それを特に重く受け止めていない他の面々の気持ちもよくわからない。
しかも、未来では映像は平均5秒だけ、1分になるともう長編、というのはどういうことだろうと。他人の物語に割く時間がない、ということらしいけど、未来人の生活ってどんなものなんだろうか? そこらへん、もう少し説明がほしかった。

未来から来た男を好きになった、つまり何がどうあっても別れの日が来る、ということに主役のハダシが気づくのが遅すぎるし、だからといってシナリオを書き換えたり、書き換えたシナリオで撮ったラストシーンをあろうことか上映会でやり直す、というラストに至っては、いったい何をやりたかったのかよくわかりませんでした。

そもそも、ビート板が「面白い」と言った最初の『武士の青春』はどんな物語、どんなラストだったのか。ハダシが書き換えて撮影・編集された『武士の青春』のラストはどんなものだったのかがまったく示されないのに「やり直す!」と言われても戸惑うばかり。

『武士の青春』のシナリオをちゃんと書いたんですかね? いや、ハダシが、じゃなくて『サマーフィルムにのって』の脚本家が、ですよ。それは『好きってしかいえねーじゃん』についても同じ。

劇中劇がある場合は、まずその劇中劇のシナリオを書くのが鉄則です。『武士の青春』と『好きってしかいえねーじゃん』のシナリオを書いて、書き換えたなら改稿分も書いて、そのうえで『サマーフィルムにのって』のシナリオを書かないといけない。

かなりめんどくさいんですが、めんどくさいがゆえに書いてないんじゃないですかね? はっきりとはわかりませんが、私は書いてないと思う。書いてたら、もっと劇中劇がどういう内容かはっきりわかるように見せられるはずだし、何よりメインプロットとリンクしてくる。この映画では何もわからないし、リンクもしない。ラストで強引にリンクさせようとしてたけど、うまく行ってるようには見えない。

最も脚本家の手抜きを感じて激怒したのはそこなんですよね。

でも他にも激怒ポイントはありました。


花鈴のキャラ
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映画部の投票でハダシ以外の全員の票を集めたのが花鈴という女の子の『好きってしかいえねーじゃん』という恋愛映画。これがハダシによると「あそこまで好き好き好きばっかり言ってるとアヴァンギャルドだよ」と皮肉を言ってましたが、主役にそんなセリフを言わせておいて、ラストで未来人への愛の告白に「好き」としか言わせないのはこれも手抜きというか、作者のキャラクターや題材への愛情をまったく感じ取ることができませんでした。

花鈴たち映画部の連中がハダシの撮影を手伝うのも同様に作者たちの愛情を感じない。

ハダシは投票で大敗したのにその映画を作って文化祭で上映しようとする。なら花鈴たちには内緒でやってるのかと思ったらどうも了解を取っているらしく、文化祭での上映もOKをもらっているらしい。

え……?

映画祭をジャックするんじゃなかったの? 部費が下りないということで引っ越しのバイトをしてたけど、立ちはだかるハードルが金だけというのはどうなんでしょう?

やはり、花鈴たちが横槍を入れてきたり、いまどき時代劇なんてと鼻で笑ったりしないといけないんじゃないですか? 

長谷川和彦監督に自作シナリオを読んでもらったとき、

「もっと主人公を困らせなきゃだめだよ。甘えさせすぎ。君はほんとに主人公を愛してる? 俺は愛情が足らないと思う。ほんとに愛情があれば、この壁を乗り越えてみろと難関を設定できる」

と言われました。

だからこれは自戒をこめて言うのですが、この映画の作者たちは主人公ハダシへの愛情が足らないと思う。ハダシ、ビート板、ブルーハワイ……あだ名の由来の説明が何もないのはよかったけど、もしかしてそれも愛情の欠如が原因なのかも、なんて勘繰ってしまいました。

それに、そもそも花鈴たちの『好きってしかいえねーじゃん』が、映画部に入るような人間があんなのに投票するだろうかとしか思えない企画で、ちょっと鼻白んでしまいました。急遽出演することになったハダシの下手すぎる芝居になぜNGを出さないのかもわからない。すべてがぬるま湯。

撮影中に疲れたからみんな寝てしまうのもわかるけど、ハダシも寝てどうする⁉ 君の夢と情熱はその程度のものだったのか、と説教したくなってしまいました。未来人の話では、文化祭で上映されたと記録されているという。それなら絶対完成するってことじゃないか。なぜもっと闘志を出さないのか。

というわけで、おそらく3年ぶりくらいになるかと思いますが、あらんかぎりの声で叫ばせていただきます。








金返せ!!!

マッケンドリックが教える映画の本当の作り方
アレクサンダー・マッケンドリック
フィルムアート社
2009-09-28





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