少し前に失業して職探しをしているんですが、最近、やたら腹が立つことがあります。

それが、履歴書の「性別」という項目。

私はLGBTQでも何でもなく、ごく普通の男ですが、履歴書の性別の項目をなくすべきだと思うのです。(この「ごく普通の男」という言い方自体が生物学的には大問題なのですが、それについては最後に書きます)


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JIS規格から「性別」はすでになくなっているらしく、コクヨなどが作っている手書きの履歴書ではすでに性別欄がないらしいです。欄があるものでも「性別の記載は任意です」との但し書きがあるとか。

私は手書きじゃなくて、あるサイトを利用してパソコンで作っていて、そのサイトではいまだに「性別は必須項目」となっているんですが、そんなのはもう時代遅れのようで、性別の記入は「不要」「任意」というのが常識だそう。

私が「性別の項目をなくすべき」と言っているのは、各企業が独自に用意している履歴書というか、企業は「アンケート」などと称してますが、エントリーシートみたいなやつです。

ネットから応募する場合は、たいていその会社から「簡単なアンケートにお答えください」というメールが来て、その会社の独自フォーマットに名前や住所、学歴、職歴などの個人情報を書いて送信するのが主流なんですが(それアンケートとちゃうやろ)そのとき、性別の項目に「男性」「女性」の選択肢の他に、「どちらでもない」「答えたくない」という三つ目の選択肢が増えていることに今回の職探しで驚愕したんですね。

最初はいいことだと思ったんですよ。体は男だけど心は女、私はどっちと書けばいいの? というような人や、「そもそも仕事に性別なんか関係ない。有能な人を雇えばいいんだから性別を書かせること自体がナンセンス!」というような人にとって三つ目の選択肢があるというのは非常にいいことだと。

でも、いや、これはちょっと違うぞ、と最近思い始めました。


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「どちらでもない」「答えたくない」という欄を設けるくらいなら、コクヨの履歴書のようにそもそも性別の項目をなくせばいいじゃないですか。わざわざ三つ目の選択肢を増やすというのは、性的マイノリティに配慮しているように見えて、その実、差別主義者が悪意をもってそうした可能性もあると思う。いや、その可能性はかなり高い。

私は事務系の仕事を希望していて、そういうのは女性が優遇されやすいんですよね。はっきり「女性限定」と言ってくるところもある。だからそういう企業にとって三つ目の選択肢は「うちはマイノリティへの配慮がある企業ですよ」というアピールでしかなく、実際は男性を落とすための口実でしかない。

でも「女性限定」というのはいまに始まった話じゃなく、男女雇用機会均等法が施行されてから「男性限定」はなくなったものの、女性限定はまかり通っている。何で男だけが……とは思うものの、そんなことに腹を立ててもしょうがない、次を探そう、と完全に諦めているので特に問題はないんです。

ただ、三つ目の選択肢を選ばざるをえない人たちのことを考えるとはらわたが煮えくり返るのです。

「どちらでもない」「答えたくない」という三つ目の選択肢というのは、LGBTQの人への差別を助長しかねないと思うんですよね。というか、差別するために新しい選択肢を増やしたとしか思えない。だって、「どちらでもない」「答えたくない」という選択肢を増やすくらいなら性別の項目自体を削除したらいいんですから。そのほうが簡単でしょ。

三つ目の選択肢にチェックが入っていたら、それだけで落とす企業も世の中には結構な数あると思う。

マイノリティへ配慮しているふうを装ってマイノリティを排除している。

だから最近は性別の項目に「男性」とチェックを入れるたびに憤りを感じるんです。この項目自体を削除しろよ、と。


蛇足
冒頭に書いた「ごく普通の男」問題。
BSプレミアム『ヒューマニエンス 40億年のたくらみ』によると、100%の男も100%の女もいないとか。性というのは、常に男と女の間を揺れ動くグラデーションなんだそうです。つまり、はっきり「男」「女」「どちらでもない人」の三種類いるわけではなく、すべては「濃淡」の問題とか。

履歴書の性別問題も、「男性」「女性」「どちらでもない」or「答えたくない」の三種類しかいないと仮定して議論が進んでいますが、そうです。性別というのは「仮定の話」でしかないのです。いまこの人は90%ほど男だとか、いまあの犬は80%ほどメスだとか。でも次の瞬間、この人は85%男だというふうに揺れ動く。これは推測ですが、「どちらでもない人」というのは、50%あたりで揺れ動いている人なのかな、と。

我々男にはショッキングな話ですが、将来、男はいなくなるそうです。ハリネズミはすでにY染色体をもったオスがもう一匹もいないとか。オスだけがもつY染色体は生物の長い歴史でどんどん短くなっているらしく、いつ消えてもおかしくないらしい。50万年後かもしれないし、明日かもしれない。

性別が本当に意味をなさなくなる時代は、もう目の前に来ているのかもしれません。


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