2021年06月12日

脚本:大工原正泰、監督:白鳥信一、主演:宮下順子という錚々たる名前が並んでいるのにタイトルすら知らなかった『昼下りの情事 すすり泣き』をGYAOで見ました。


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物語のあらまし
主人公の宮下順子は8年前、まだ高校生だった頃にレイプされたことが原因で普通の結婚を諦め、初老の区会議員の愛人におさまり、バーのママとして働いている。
そんなある日、店の前で濡れネズミになっていた若い男・弘を店員として雇う。宮下順子は弘がかわいくて仕方なく、肉体関係となる。その現場を区会議員に見つかり、宮下順子は愛人をやめ(当然バーのママも辞めざるをえず)弘と二人で生きていく決意をする。
しばらく蜜月関係だった二人だったが、自分の面倒をすべて見ようとする宮下順子に反発した弘は他に女を作り、別れを切り出す。宮下順子はなぜ自分が嫌われたのかわからず、泣くばかり。
その後ピンサロで働くようになり、区会議員よりももっとすけべでかつてのレイプ犯のような身勝手な男たちの餌食へと逆戻りするのだった。


姉妹の話じゃないの?
え、この映画ってまったく性格の異なる姉妹の話じゃないの? と思った方はとても多いと思います。山口美也子演じる妹は男に頼る姉に反発し、金だけを信用して生きる決意をするんですが、結局、姉と同じピンサロで働くことになるんですよね。

それは確かにそうでしょうが、私にはあまり姉妹の葛藤劇が面白くなく、宮下順子を主人公にした「一人の女が蟻地獄にはまるドラマ」として見ました。


枷は主人公の心のあり方に求めよ(笠原和夫)
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宮下順子はレイプされ、普通の結婚を諦めているところから物語は始まります。身勝手で卑劣な男たちによって彼女はダークサイドへと堕ちてしまっている。

それが弘という青年との出逢いですべてが変わる機運が高まる。しかし、そこで調子に乗ってしまった宮下順子は、弘の「バイトしたい」という言葉も撥ねつけ、「あんたの面倒はあたしが見てあげるから」と許さない。

これではかつて自分をレイプした男たちの身勝手さと同じです。自分から普通の幸せを奪った卑劣な男たちと同じように、彼女もまた弘から普通の幸せを奪おうとしている。しかもそのことに無自覚というところが哀しい。

弘との出逢いで逆境から脱出できるどころか、ますます蟻地獄の中へ落ちていってしまうわけです。

『仁義なき戦い』などの数々の名作で知られる脚本家の笠原和夫さんは、有名な骨法十箇条でこう謳っています。

「枷は主人公の心のあり方にこそ求めること」

つまり、主人公の目的を他の誰かが阻むとか、そういう安っぽいドラマではなく、主人公の性格なり考え方なりが主人公自身を縛るような作劇をしなさい、と。これは口で言うのは簡単ですが、実践するのはとても難しい。私は20年近く脚本を書いていたけど、結局、この技を少しも会得できなかった。

妹が揶揄するように、愛人として男にたかって生きるのは傍目にはだらしがないように見える。(私はそうは思わないが)

でも、最終的に行き場を失った宮下順子はピンサロで女の体をほしいままにする男たちの餌食として生きることになる。すべてはかつて自分をレイプした男たちと同様に、一人の男の人生を自分の思い通りにしようとしたからですね。

彼女はもっとレイプ犯たちを憎むべきだった。訴えられなかったのはしょうがないとしても、あの男たちへの憎悪を燃やしていたら弘への対応も変わっていたかもしれない。なのにレイプされたことを言い訳にして区会議員の愛人として悠々自適な生活をしている。レイプという過去を利用して甘い汁を吸っていたツケを払わされることになる。

自業自得といえばそれまでですが、人間という生き物のどうしようもない性を見せられたような気がします。

そういえば、サガは性と書きますね。ロマンポルノは性愛の性を当然描くけれど、それを通して性(サガ)を描いていると思います。だから好きなんですよ。ポルノというだけで毛嫌いする人間を私は心の底から軽蔑します。

いい映画でした。(GYAOは途中に何度もCMが入るからイラつく。ま、無料だからしゃーないけど)

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それにしても宮下順子の色っぽさは尋常じゃない。当時まだ27歳。いまの27歳の女優でこの色気は出せませんね。いまなら40歳くらいでぎりぎり出せる味でしょうか。和服がよく似合う。


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