2020年12月25日

2月に劇場版の公開が決まったらしいバカリズム脚本による『殺意の道程』が面白かった。

バカリズムといえば、『架空OL日記』がとても人気が高いんですってね。職場でも大好きな人がいて「あの『あるある感』がたまらない」と聞いたんですが、私にはさっぱりわからない。

やはりテレビドラマや映画などフィクションには「ないない」を求めたい。日常的によくあることではなく、死ぬまで自分の身には起こりえないであろうことを描いてもらいたいと思っているので「あるある」が面白いという感覚が少しもわからない。

でも『殺意の道程』は復讐ものですからね。最初から「ないない」です。(以下ネタバレあります。ご注意を!)


satsui_sub01

井浦新のお父さんが自殺し、鶴見辰吾が自殺へ追いやったからと、従弟(従兄?)のバカリズムと一緒に復讐することになる。

んですが、バカリズムがインタビューで言っていましたが、「普通のサスペンスドラマでは省略されるところを描いて見ると面白いのではと思った」ということで、まず復讐のプロジェクト名を決めよう、それらしいのは露見する恐れがあるから「苺フェア」に決めたりとか、第2話の「買い出し」では、ロープやバールや刃物を買うんですが、「これじゃまるで俺たちこれから人を殺しますって言ってるみたいじゃない?」となって、ぜんぜん関係ないものを買う。で、「何かエロ本買うときにマンガ雑誌ではさんでレジ持ってく見たいな感じだね」と言って盛り上がったり、確かに普通のサスペンスドラマでは省略されるところをあえて描く面白さはあった。

第5話の「占い」で、「機種変も無理なのかぁ!」と天を仰ぐ井浦新の姿に爆笑したり、ね。

が、やはりこれは『架空OL日記』と同じで「あるある」を描いているのとあまり変わらない感じがしたんですよね。復讐なんてほとんどの人生には「ないない」なことなのに、「復讐あるある」が描かれているというか、「復讐ってこんな感じだよね」とまるで復讐を日常的に経験しているかのように扱う軽さがはっきり言っていやでした。


cast-03

堀田真由演じる、このはちゃんというキャバ嬢にしても、もともとミステリ好きのうえに店に警察関係者がよく来るから殺人や捜査に関して異常に詳しいというのが主役の二人を救うのですが、このあたりは「あるある」や「ないない」とは関係ないものの、逆にこんな都合のいい人物はいないだろう! と突っ込んでしまいました。それに堀田真由って『ブラック校則』で演じた嫌味な女の子のほうが似合ってるというか、あっちのほうが素に近いのでは、と思っているだけに、最後まで二人に親身というのは少し残念だった。彼女の裏切りとかがあるとより面白かったのではないか。

そう、冒頭に記したように、私はこのドラマを最終的には「面白い」と思ったのである。

それはやっぱり最終回ですよね。いや、その手前の第6話。



photo01

鶴見辰吾を自殺に見せかけて殺す計画を立てる。そこで井浦新はふと思う。親父も同じように自殺に見せかけて殺されたのではないか、と。

何だかんだの末に、鶴見辰吾は本当に井浦新のお父さんを自殺に見せかけて殺しており、彼もまた同じ手口で殺されかかるけれどもすべては計画のうち。動かぬ証拠を手に入れて鶴見辰吾を刑務所へぶち込むことに成功する。

どこまでも軽い男二人が「俺たちは近日中に人を殺す」といくら言われても信じられなかったけれど、結局、殺しはしないが復讐は果たすというなかなかの展開に舌鼓を打ったのでありました。

結局のところ、「復讐」という「ないない」な題材をバカリズムという「紋切型をうっちゃりすぎるほどうっちゃる作家」が扱うと、軽く扱いはするけど、どうしても最後の最後では軽い扱いはできないわけで、ちょうどいい塩梅になるのかな、と思いました。

第4話の「張り込み」では、張り込み中にうっかり鶴見慎吾とぶつかってしまったバカリズムが本気で罵るシーンがありました。やっぱりこの二人は本気で復讐するつもりなのだ、とゾクゾクしてしまうんですよね。そして見事復讐を完遂する。

全話を振り返ってみると、「あるある」と「ないない」がいいバランスで組み合わさっているんじゃないでしょうか。

もう物語は完結しているのだから、劇場版は続編とかじゃなくて再編集したものになるんでしょうが、見に行こうかなと思っています。

ちなみに、私がこの世で一番好きな復讐映画は『トカレフ』です。あいつを殺すことができればこの身が破滅してもかまわない、という熱い血潮が感じられるものが好き。そういうのはバカリズムは絶対作らないでしょうが。


トカレフ [DVD]
阪本順治
パイオニアLDC
2000-10-25





  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントする

このブログにコメントするにはログインが必要です。