宮藤官九郎の『JOKE ~2022配信パニック!~』が先週放送されました。


伏線は簡単
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このドラマについて、「伏線の回収がハンパない」という絶賛の言葉があったと聞きましたが、私には「???」でした。なぜなら、伏線を張ってそれを回収するのはとても簡単なことだからです。

私が言っているのではありません。ある高名な脚本家が言っているのです。

とはいえ、私自身も何本も脚本や小説を書いていて実感として思います。伏線を張るのはとても簡単だと。


その高名な脚本家の弁をそのまま引用すると、

「映画を見る側にとっては伏線を張る、伏線を回収するのはとても難しいもののように感じられる。でも作る側からするとめちゃくちゃ簡単なんだよね。だって、ひとつの情報を前と後ろに分けて置くだけだから」

ということになります。

例えば、『太陽を盗んだ男』でいうと、中盤、すべて菅原文太刑事に見ぬかれたかもしれないと思った沢田研二が、学校で授業していてもどこで何をしていても菅原文太の影におびえ、走って走って走って逃げた末に、登場するのは西田敏行演じるサラ金で爆笑してしまうシーンがあります。

いきなりサラ金が登場したのでは面白くないし主人公にとって都合がいいので、前半に原爆を作るためにサラ金で金を借りるシーンがあります。これが伏線です。

だから「主人公がサラ金で金を借りる」というひとつの情報を、前半では金を借りる場面、後半はサラ金に追われる場面というふうに「ひとつの情報を前と後ろに分けて置いている」だけなのです。

それだけです。それ以上でも以下でもない。

だから脚本を評価するときに「伏線の回収がちゃんと行われているか」というのは何の材料にもなりません。


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よくない伏線の張り方・回収の仕方
ただ、「よくない伏線の張り方」というのもあるんですね。張り方というよりは「回収の仕方」でしょうか。

劇作家の平田オリザさんから直接聞いた話ですが、3つの伏線を張って回収する場合、次のような張り方・回収の仕方はダメの典型だそうです。

A-B-CーA'-B'-C'

張った順番に回収してしまう。ではどうすればいいか。



A-B-CーC'-B'-A'

というふうに、張った順番とは逆に回収していくのがセオリーだそうです。

好きな映画の物語を思い出してみてください。だいたいこういうふうになっているはずですから。


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